第20話 夏の山はやばいっしょ
「あっち〜。普通に気抜いたら死ぬぞこれ」
「お兄ちゃん私もう無理。遺言だけ聞いてくれる?」
「大丈夫だ、お前はもう死んだんだ」
「あんたら元気ね、私ほんとに限界よ」
なんでこんなに暑い中木の少ない岩山を登っているかと言うとそれは先週の出来事まで遡る。
「あとは私の兄と従兄弟達はどうかしら?」
ファミレスでそう言ってくれた西条。絶賛クラスメイト探し中の俺にはすごく有難い提案だったのだが。
「夏の山はさすがにやべえよ、しかもこれ人類未開の地だろ絶対。道ねえぞ」
そう、その従兄弟の家ってのが山の上のさらに上の方に位置する人類お断りの家だったのだ。
「確かにちょっとやばいわね。いつもは秋とか冬に行くから平気だけど夏はやばいわ。」
「お兄ちゃん私限界」
何故か幽霊のレイが一番へばっているのだが。
「俺も限界だよ。限界突破して金髪になりそうだ、ワクワクすっぞ」
「ボケる体力があるなら平気ね。さあ、行きますよザーボンさんドドリアさん」
なんだかんだノリいいよなこいつ。なんで教室だと一匹狼感醸し出してるんだろう。
「水は無いのかしら?」
「ああ、まじで無い。びっくりするだろ?」
「なんでそんな準備してないのよがっくりするわよ」
俺があまりに水を飲まないもんだから西条が聞いてきた。ちなみに山に登ると言われたのはファミレスの時で一週間経った今日には完全に忘れていた。てか、疲れてたんだよ色々あって。
「え、お兄ちゃん水持ってきてないの?」
「え、なんでお前ちゃっかり持ってんの?同じ家なのになんで教えてくれないの?」
黙るなよ。絶対わざとだろ。普通にダメだろこんなことしちゃ。お兄ちゃん死んじゃうよ。
「仕方ないわね。口つけちゃったけど飲む?」
「ありがとう、ただまだ大丈夫だ。周りには言ってないんだけど俺水タイプだから」
「早速やられちゃってる様だけど途中で倒れられても助けれないわよ」
「そしたら私と視ちゃんで行ってくるから待っててねお兄ちゃん」
「多分死んでるよお前らが迎えに来た時な、カラカラになって」
山の中腹くらいまで登ってきた。
「ちょっと視ちゃん、休憩しようよ」
先頭を行っていた西条にレイが声をかける。
「そうね。明らかに語部の口数も減ってるし、限界でしょ」
「まじで無理っす山怖えっす」
「そこの木陰で少し座るわ」
すげえ、完全無視だ。有り得るんだこんなこと。
木陰に足を伸ばして座った西条の太ももにレイの頭が乗っかる。
「私ちょっと横になる〜」
「汗かいてるわよ」
うん、仲良くなっててよかった。俺も行けるかな。
「俺も〜」
しかし、俺の頭が西条の太ももに辿り着くことは無く、西条の手に叩き落とされた。
まあ、そうか。
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