第2話 お化けって重労働2

実家が田舎にある俺は通学に2時間もかけるのがバカバカしくなり高二の秋から一人暮らしを始めた。親が心配ということでそこそこセキュリティのしっかりした中堅マンションに住んでいる。バイトと月イチで仕送りをしてくれるので生活には困っていない。


「─ただいま」

誰もいない部屋に挨拶をする。基本だからな。

しかし、挨拶が返ってきてしまったのだ。

「おかえり」


極限の驚きで声も出せない俺の背中から先程の女の子が出てくる。


「ここがお兄ちゃんのおうち?」

「……そ、そうです」

「広いんだね〜。今日ここで寝ていい?」

「え、嫌です」

「じゃあ私このベットで寝るね〜」

「え、嫌です」

なんだこいつ。こんな簡単にお化けが人間姿を見せていいのか気になり俺は尋ねた。


「本当はダメだけどもう見られちゃったし疲れてるし」

「疲れるとかあるんですねお化けにも」

「お化けじゃなくて幽霊!」

「は、はあ。お化けさんは何をしてたんですか?」

「お化けじゃなくて幽霊!」

「は、はあ。お化けさんにその、の、呪われたりはしないですよね」

「お化けって言うと呪っちゃうかも」

「幽霊さま、今明らかに肩を触られましたけど俺助かりますよね?」

「うん」

俺たちが思ってるよりお化けは、じゃなくて幽霊は怖くないのかもしれない。というか触れるのか?


少し気になって彼女の頭を撫でてみる。確かに触れた。

「なに?」少し不機嫌そうに聞く。

「い、いや触れるのかなって」

「触れるって言ってるじゃん。水も飲めるし食べ物も食べるよ。ほんとはお風呂だって入りたいし」

え、触れるって言ってたか?とりあえず人間とあまり変わらないのか。

「なんか食べるか?」

すると目を輝かせた彼女は食いつく。

「え!いいの!?チョコ食べたいチョコ!」

「板チョコしかないけどいいか?」

「うん!板チョコ好き!」


割らずに小さい口でチョコを頬張る彼女に俺は質問を投げかける。

「幽霊さんはなんて呼べばいいんだ?」

「レイ!私の名前だよ!」

生前の名前とかだろうか?

「そもそもなんで幽霊になったんだ?未練とかか?」

「ん〜わかんない!幽霊になったばっかだもん」チョコを頬張っているレイは頗る機嫌が良さそうで声量も上がっている。

夜だから少し静かにな、とまるで人間かのように注意しお風呂を沸かしてくる。


「なあレイ、俺の服とかって着れるのか?」

「ん?なんで?」

「いや、風呂入りたいって言ってたろ」

「え!いいの!?入りたい!」

さっきも言っていたが疲れてるらしく食いついてきた。どうやら俺の服も触れるようで問題は無さそうだ。


「そんなに疲れてたんだな」

「うん!今日一日中動き回ってたから」

「なんでだ?」

「ん〜なんでだろわかんないや」

さっきから少し思っていたのだが彼女─レイは見た目に対して少し言動が幼く感じる。見た目は可愛らしい高校生くらいだが中身がそれにそぐわない。

「沸いた!入ってくるね!」

「あ、わかった着替えは置いとくな」

おっ風呂おっ風呂と楽しそうに脱衣所に向かっていった。



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