第14話 間に合ってよかったぜ

ベッドの形が崩れ通路が絶たれるほんの前俺はベランダに着いた。

下には自転車置き場があり幸い屋根が着いている。これを使えばきっと降りれる。


「その屋根を伝って降りましょう!」

「すいません、私のせいで」

少年の母は震える声で答える。

ベッドが燃えて道を絶たれたがベッドからベランダまではすぐ燃えそうなものは無い。しかし、あの屋根木製だよな?急がないとまずそうだな。


「俺が支えるんで先におりてください」

「ほんとにありがとうございます……」

女性がベランダのフェンスを乗り越える。幸いフェンスの間は腕が通るくらいの余裕があったからそこから手を通して支える。彼女の足が屋根に着く。

あとは下にいた人たちが女性を助けてくれた。


「お兄ちゃん!早く降りないと屋根が!」

燃えてるんだろ、知ってるよ。見えてた。あの屋根はもう持たない。支えてる柱が細すぎる。

「……っ、崩れるわ!」

西条がレイと少年を連れて離れてくれる。


飛び降りるにしても下にある花壇を囲う作が刺さる位置にある。それに手前の屋根が燃えてる。それに大きく前に飛んだところで体勢を崩したらお陀仏だ。

え、どうしよ。だいたいドラマとかで見るこういったシーンは助けに入った側は助かるくね?おかしくね?思ってたよりやばいな。初めにお茶をかけておいて良かった。またちょっとちびった。最近尿のキレが悪いんだよな。


消防隊の音は聞こえる。しかしまだ遠い。きっと間に合わない。


無理だ、そんな考えが頭をよぎる。

大丈夫だ、そんな声がどこかから聞こえる。

頑張って、少年の声だ。

早くしない、西条の声だ。

ひゃっほー、……誰だよ!


「ひゃっほー、語部キャッチしてやるから降りてこーい」

「……佐々木先生!?」

「火事って聞いて野次馬しに来たんだけど燃えてんのお前だったか」

「いやまだ燃えてないっすけど」

「とりあえず間に合ってよかったぜ。早く降りてこい」

なんかこの人なら大丈夫な気がする。俺は大きく飛んだ。前のめりに飛んだ。


「……オーライオーライ、よしゃ」

「まじかっこいいっすね」


佐々木先生はしっかりと俺をキャッチした。まじでかっこいい。被害者はゼロ。この火事は声を上げた少年と我が身を顧みず飛び込んだ青年とカッコよすぎる女性教師によって終わった。


お疲れ様、レイの声だ。

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