第8話 私の決意1

「え、今なんて?」

「だから、その子。妹さんだっけ?死んでるわよね」

勿体ぶることも無く、呆気なく、レイが幽霊だとバレた。しかし、レイと西条は放課後まで一切合わなかったはずだ。

「いつわかったんだ?」

「ついさっきよ」

ついさっき、帰ろうとレイを教室に呼んだほんの数分間でわかっていたという。この呆気なさに俺は逆に冷静になっていた。

「ならなんで、今日は俺を見てたんだ?」

いつも彼女は読書するでもなく、友人と話すでもなくそれに机につっ伏すでもなく、

「あなたの守護霊が傷ついていたからよ。この土日で急にね」

「は?言ってることがよく分からないんだが」

「そうよね、まず守護霊の話でもしましょうか。人には全員漏れなく守護霊が着いているわ。守護霊はその名の通り私たちを霊から守ってくれるの」


西条の話によると、

どうやらレイは無意識のうちに俺の事を呪っていたらしい。それが睡眠中なのか食事中なのか買い物だったりを共にしてる時なのかは分からない。幽霊が無意識の内に人を呪うというのは珍しいことでは無いらしい。幽霊になったばかりの幽霊は成仏することに必死で方法を模索している内に呪ってしまうのだそうだ。人間が意味も無く長生きしたがるのと同じように。幽霊は意味も分からず死にたがるようだ。まったく、レイに対して死にたくないよな、とか思っていた俺が馬鹿らしい。


「最近どこか不調はなかった?だるいとか頭が痛いとか」

「……あった。昨日だ。俺もレイも頭痛でやる気が起きなかった」

「じゃあそれね。あなたの守護霊もレイさんものお互いに呪い合って疲弊してるわ」

西条は私から話せることは終わったとでも伝えるようにお茶を口に含んだ。

「……ごめんね、お兄ちゃん」


無音に耐えられなかったのかレイが謝罪を入れる。お互いにとって辛いこの事実は日の浅い俺たちの絆をいとも簡単に引きちぎった。そんな気がした。それは嫌だ。理由は無い、しかし強く嫌だ。


「なあ、何か共に暮らせる方法は無いのか?」

「私は幽霊が見えるってだけよ。それにここまで人間に近い幽霊なんて初めてだわ」

幽霊が身近な人間にとってもレイは異例だった。

「最後にひとつ聞いていいか?もし守護霊が居なくなったらどうなるんだ?」

「私が知っている中では漏れなく死んでいるわ。直接の死因にはならないと私は考えているけど、事故死、病死、不可解な死。まるで死ぬのが決まったかのようにどんな人でもどんな状況でも死んでいるわ」

「……そうか」

「あら、意外とビビらないのね。さっきは腰抜かしてたのに」

あ、むかつく。ちょっとレイにこいつ呪ってもらうか。

「レイこいつをの──レイ!?どこだ!?」

初めて会った時と同じようにレイは闇に消えた。

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