第16話 これは合法な実験だ
「レイちゃん本人に聞いたよ。ちょっとだけ声のトーン下げてな」
あ〜脅したのかこの人。間違いなく教師としてはやっていけないだろうなこの人間性。
「まぁ、初めは疑ったけど調べてみたらいくつか体験談が出てきたぜ」
本当かは知らねえけど、と付け足して佐々木先生は言う。
「それで結局レイが幽霊って信じてるんですか?」
「今から確かめるんだが?」
「なにで?」
「……拷問?」
この目は本気だ。この人はやばい。教師として以前に人間として生まれる世界を間違えてる。
◆
「じゃあ今からレイちゃん実験会を開催する。君たちがさっき言ってた通りこの行為は人権を侵害するかもしれないが君たちがレイちゃんを幽霊だと言うなら別だろう。大丈夫だ。それに君たち自身もレイちゃんがどこまで人間ぽくどこまで幽霊ぽいのかわかってないだろ」
まあ確かによくわかってないが。
若干怪しい理論を振り回して佐々木先生と俺と西条とレイが居る理科実験室でレイの実験会が始まった。
「それじゃあレベル1、レイちゃんの指に針を刺してみよう」
「……ちょっと待て。1回そのやばいナイフみたいなのしまって下さい」
「ん、どうした語部?」
「え、どうしたじゃないでしょ?なんなんすかそのマジで拷問やってそうな器具。てか西条もレイもなんでなんも言わないんだよ」
「……ちょっと私この先生アレかも」
「じゃあ西条の指にしたらいいか?」
「私佐々木先生とずっと一緒に居たいわ」
「ずっと刺されたいってことか?」
もういいから黙ってくれ。レイが怯えてる。
「……少しなら刺してもいいよ」
ほら怖すぎて血迷ってる。
「え、ほんとにいいのか?」
「その気じゃなかったんかい。最初から言わないでくださいよなら」
「うるさい語部、黙ってろ」
え、俺主人公じゃないの?こんな扱いでいいの?
結局佐々木先生はレイの指に刺した。と言っても貫通だったのだが。どうやら熱いや痛いなどの感覚はあっても身体に傷がつくことはないらしい。
実験に使った一時間でどっと疲れた。明日が休みでよかったわ。
……明日から夏休みじゃん。
◆
帰り道、レイが俺と西条に話しかける。
「私お友達欲しい」
「俺は?」
「住まわしてくれる人」
こいつ追い出していいか?
「私はどうかしら?」
「睨んできた怖い人」
何この子、執拗いわね。
それぞれ言葉には出さないで心で思ってるのが尚マジっぽい。
「じゃあ夏休み物分り良さそうな人を数人呼んで疑似学校とかどうだ?レイ多分中学生くらいだろ?」
「私どうなんだろう?中学生かな?とりあえずそれ楽しそう!やりたい!」
俺たちの夏休みは疑似学校に決まった。しかしまあ、夏休みまで学校に行くなんて提案して早速後悔してる。
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