第4話 ならば人間的生活を1
「あ、お兄ちゃんこれとか可愛いじゃん」
「そうだな。こっちの落ち着いた色も似合いそうだな」
試着なさいますか?と定員が聞いてきたのでやはりレイは見えているのだろう。試着をした彼女はもう普通の女の子だった。
傍から見たらカップルにしか見えないこの会話は本当は幽霊の少女としている。まあ、だいぶ慣れたけどな。
生活できるくらいの服を揃えようと思ってきたのだがレイが思ったよりもノリノリで財布が軽くなった。結構軽くなった……。
「お兄ちゃん!これ美味しいよ!一口食べる?」
「ああ、ありがとう。貰うよ」
当たり前のようにレイ自身で注文し同じテーブル席でファストフードを食べていることに彼女が幽霊だということを忘れそうになる。ポテトをもしゃもしゃと食べている彼女は一体なぜ成仏出来なかったのか、そんなことは分からない。
「なあレイ、お前は成仏したいか?」
気づけば俺はこんな質問をしていた。
「え、えーっとどうなんだろ」
そうだよな。俺は死んだことがないから分からないがレイを見ていると幽霊ってのは第二の人生なんじゃないかと思う。
そりゃあ死にたくないもんな。
「いや、変な事聞いて悪かった」
「大丈夫だよ。それよりこのシェイク美味しいよ!」
彼女が両手でシェイクを持ち上げる姿を見て俺は考えるのは後回しにすると決めた。
「ねぇねぇ!私この映画見たい!」
「ペット映画か。見るか」
Fの中盤の番号─中々いい席を取れた。ちょうど真ん中あたりだ。そんな絶好の席でレイは爆睡していた。──おい。
映画開始30分、主人公(犬)の家族構成が明らかとなりこれからと言うところで『面白そうだね』と耳打ちで言ってきた言葉を最後に彼女は返事をしなくなった。
「おい起きろ」
最大限のヒソヒソ声と共に肩を揺らす。
「……」
「頼む起きろ」
「……」
「チョコ買ってあげるから」
「っ……」
一瞬目開けたな。あと一押しか。
「起きないならやーめーた」
「起きた」
てかなんでここまでしないと起きないんだよ。お前が見たかったんだろこの映画。
「今どうなってるのこれ?」
「今主人公の親父が実は宇宙人で犬界のトップオブザペットを決めてるところだ。ちなみに今のシーンは恋人との食事な」全部嘘だ。
「え〜面白そうだったのに…」
ここまで疑われないとこっちが居づらいんだが。
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