第22話 心スポフラグ

お茶を飲んで一段落すると奥から先程の女性──篝月華さんと短髪で清潔感のある男性が来た。


「初めまして、篝家の長男 陽斗ようとと言います」


中々に堅い挨拶をしてくれた二人は法衣をきっちりと着て俺たちの向かいに正座した。

クラスメイト探しのつもりなんだがここまで堅くされるとこっちまで緊張するな。


「え、えっと初めまして。西条さんとクラスメイトの語部柊です。」

「幽霊のレイです」

ダメだ、空気ぶち壊す挨拶かましやがった。


「それで幽霊に関して色々教えてくれるのよね。私も興味がなくて聞いたこと無かったけど」

「そうだね、僕達が知ってることは話そうと思ってるよ」


西条が予め話をつけてくれていたみたいでレイが幽霊なことはすんなりと理解して貰えた。


「まずその子は大分特殊だね」

「ですよね」

「と言っても幽霊自体が特殊なんだけどね。ほとんどの人間は死んでも幽霊にならない」


早速衝撃の事実だ。てっきりみんな幽霊は通過するもんだと思ってたよ。


「そりゃそうだよ。日本単位で見ても世界単位で見ても幸せに死ぬ人の方が多い。死者は恨みだったり突然死だったり何か本当に成し遂げたかったことがある人が成るもんだ」


穏やかな口調で陽斗さんは言う。たしかに俺のおばあちゃんもじいちゃんも家族に囲まれて亡くなった。じゃあ、きっと幽霊にはなってないな。


「ちなみに幽霊には見える者も見えない者もいる。まあ僕達には見えない者も見えるんだけどね。つまり霊感の無い人が言っている幽霊っていうのは見えない者だけだ。見える者って言うのはね意思が残ってるんだ。僕達はこの幽霊をオフモードって呼んでる」


あ〜レイが寝てる。たしかに難しい内容だけど流石に仰向けで寝るのは無いだろ。失礼すぎるだろ。


「オフモードの幽霊は自分で成仏する理由を探せる。だから普通に生活しててあまりに静かな人とか気がついたら背後にいる人なんかは意外と幽霊だったりする。でもオフモードの幽霊は大抵一日やそこらで成仏するんだ。理由はよく分からないけどきっとなんだと思う。だからすぐに解決できるんだろうね。それで見えない者反対にオンモードの幽霊って言うのは所謂悪霊だ。恨みだったり突然死してしまった人がそれを晴らすために無意識でやってる。しかし、中には恨みの対象が既にいない場合がある。それで成仏しそこなった幽霊が住みついたところが心霊スポットになってるんだ」


すげえこの人、この量の説明を一噛みもせずに言い切ったよ。何言ってんのかわからんけど。とりあえずレイには悪影響を及ぼす程の力はないってことでしょ。


「じゃあなんでレイちゃんは二週間近くここに居るのかしら」


今まで黙って聞いていた西条が口を開く。ちなみにずっと寝てるレイも口を開いてる。


「だから特殊なんだよね。私達もまだ見たことない」

「僕が思うに環境が悪いだけだと思うけどね。語部くんの家に住み込んでるみたいだし」


ん?待てよ?レイは俺の家に住み着いてるだろ?それでずっと成仏しなかったらなんで成仏したいのか忘れて俺の家心霊スポットになるんじゃねえか?無理なんだけど普通に。


「……え?なんで急に手繋いでくるのよ」

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