第8話 はぐれ者

「よ、妖狐族?なんだな」

「妖狐族といえば山奥に住んでいる亜人の一種ですが…こんな街にはいないような滅多に住居から出てこない種族だと聞きますよ?」

「ご、ゴブヤスは物知りなんだな。そ、それはそうとリュウジ。その子はただの人間ではないのか?だな」

「そ、そうですよ!何を言ってるんですか?ぼ、僕は人間ですよ?」

「あー、ごめんね?僕は鑑定10を持っているから君の持っている隠ぺいのお札?っていうやつも見破ってしまったんだ。悪気があってやったわけではないから勘違いしないでね?」

「よ、妖狐族代々に作り方が受けつながるお札をいとも簡単に無効化するなんて…。何者なんですか?あなた達は」

「僕たちはただのGランク冒険者ですけど?」

「そんなわけないでしょう!Gランク冒険者はそんな簡単に我らの隠ぺいのお札は無効化できません!」


そう言われてもできたものはどうもしようがない。


「でもなんで自分の姿を隠すような真似をしたんだい?」

「そ、それは…。話せば長くなるのですがそれでもいいですか?」

「全然いいよ」

「私は先ほどおっしゃっていた通り、”妖狐族”です。普段は山の奥の隠れ里に外部からの干渉を避けるために閉じこもって生活しています。しかし、それでも生活で必要なものは町で買わなければならない場合が来てしまいます。そんなときは村の長が決めた者が外の世界で物を買って来るのです。ただ、私はそんな生活に嫌になったんです。自分でいうのもあれですが、私は妖狐族の中でも頭が良いほうでした。なので長に自分は外の世界で暮らしていきたいと言ってしまったのです。それを聞いた長は私を小屋の中に閉じ込めました。それでも私は外の世界に出たかったので、小屋から抜け出して里から最低限の荷物を持って出ていきました。さっきかつ上げされそうになったお金は、自分で魔物を倒して売って得たお金です。そうしていろいろ彷徨っていたところであなた方に出会ったのです」

「へー。それは大変だったねー。変な人達に捕まらなくてよかったよかった」

「今度はこちらから質問させてください。あなたたちは私に危害を加える気はありますか?」

「ないないないない。そんなことをしても何も意味がないし、僕もそんなことをしたくないから。そこで1つ提案なんだけどさ。君さっき頭いいって言ってたよね?僕たちの仲間になってくれないかい?」

「はい?あなた何を言っているのかわかっているのですか?亜人を仲間にするということは他の人間たちから疎まれるということですよ?」

「え?でもそれって隠ぺいのお札があれば大丈夫だよね?」

「それでも亜人を仲間に入れるなんて…。正気の沙汰とは思えません…」

「りゅ、リュウジはとても優しいんだな。安心して仲間になるといいんだな」

「ふ、ふふふ…。あははははは!や、優しいですか!そんな言葉久しぶりに聞きましたよ!すみません。私はまだあなたのことをほかの人間たちと同じように見ていた。しかしどうやら違うようだ。そちらのゴブリンさんが嘘を言えるとは思えません。わかりました。私をあなた方の仲間にしていただいてよろしいでしょうか?」


どうやら相当ひどい目にあってきたらしいな。

人間不信になっていてもおかしくはないぐらいにいじめられていたりしたのだろう。

これから仲間になってくれるんだし、僕たちでその人間不信を直してあげられたらいいなぁ。


「もちろんだよ!歓迎するよ。えーっと、君名前は?コボ君でいいの?」

「本当の私にはまだ名前がありません。コボは偽名です。仲間になった証として私に名前を付けてくれませんか?」


マサオ達もそうだったけど魔物や亜人たちには名前がついていないのか?

まあいいや。今度聞いてみよ!


「うーん。そうだねぇ…。あっ!颯太郎!ソウタロウなんていいんじゃない?」

「ソウタロウ。ソウタロウ。ソウタロウ…。素晴らしい!とてもいい名前です!ありがとうございます!あっ、仲間になったのでもう隠ぺいのお札はいりません

ね。では、リュウジ様方には私の本当の姿が見えるようにしておきます」


そう言ったソウタロウは次の瞬間『ドロン!』という音と共に姿が変わった。

今までは元気いっぱいという感じの身長の低い5歳児の体だったのだが、今では街中を歩いたら女の人がキャーキャー言いそうぐらいの高身長イケメンになっていた。

頭には獣耳と呼ばれる狐の耳が生えていて、尻尾も出てきている。服は日本の着物の

ようなもので、The和という感じだ。


「これは今あなたたち以外の人が見るとコボの姿になっています」

「へー。すごいじゃないか!そんなことができるんだねぇ…」

「今まで1回も使ってこなかった技なのでもう一生使うこともないと思っていましたが、信頼できる仲間ができたのでよかったです」

「信頼できる仲間だなんて…。ありがとう!今まで僕そんなこと言われたこともなかった。そうだよね…。信頼できなければ仲間とは呼べないよね…。やっぱり仲間がいるといろいろなことに気づけるね!それじゃあ宿を取りに行こうか」

「その前にこれから一緒に行動していくためにも私が何をできるのか見てもらってもよろしいですか?」


鑑定でちらっとは見たけど実際に何ができるかは聞いてなかったな。じゃあ見せてもらおうかな。


「お願いしていい?」

「わかりました。まず私の固有スキルについてですが、【ブレーンコントロール】というもので、簡単に言うと自分よりレベルが低いものや瀕死の者、すでに死んでいるものを洗脳して自分の思うがままに動かせるという物です」


それから続いた説明を要約すると、相手の脳に魔素を使用して干渉し、主要な部分を破壊して自分が言うことを聞かせる器官?のようなものを作り出すという、妖狐族の中でも稀に発現するスキルらしい。


「次に風魔法。我々妖狐族は全員風魔法が得意という特徴を持ちます。なので生まれ たての子供でも最低2は持っています。続いて交渉術。私が長と大喧嘩をしたことは先ほど話しましたよね?その時に少しでも勝率を上げるために身に着けたスキルです。続いて速読について。これはその名の通り文章を早く読むことができます。私は本を読むのが好きだったのでこのスキルを上げていました。最後に算術。これはかじった程度なので 今は人より少し得意ぐらいですが、いつかはもっとレベルを上げていきたいですね。そうですね…。では1番最初に説明した【ブレーンコントロール】を私に絡んでき たごろつき2人に実践してみしょう」


そういったソウタロウはごろつき2人の方を向くと手を合わせて集中し始めた。


「【ブレーンコントロール】!」


ソウタロウがスキルを放った瞬間、倒れていたごろつきの体がビクンと跳ねて、立ち上がっていた。


「「ご主人様何なりとお申し付けください」」


わぁ!最初に見たときは感じ悪そうだったのに今は敬語を使ってお辞儀をしている!

すごいスキルじゃない?これは。


「今からあなたたちのご主人様はこのリュウジ様です。この人の指示を最優先させなさい」

「「承知いたしました。リュウジ様、何なりとご命令を」」

「あー、ソウタロウもそうだけど僕に敬語を使うのはやめてほしいな。だって僕はそんなたいそうな人ではないから」

「すみません。私はこれが素なもので…。直すことはできないんです。どうしてもというんでしたら挑戦しますが…」

「無理だったらそれでもいいよ。そっちの2人はどう?」

「旦那がいいっていうんならな?」

「ええ。俺たちは旦那に従うまでっすよ」


よかった。あの柄の男たちに敬語を使えわせると変な気分になって来るんだよ…。

じゃあ宿を取りに行こうかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る