第14話 盗賊逮捕(3)

~ミングの視点~


「こ~こ~で~お~まえらな~んか~にま~けられな~いんだぁ~」

「ど~なってるんすかああああぁぁぁぁ!!」


羊野郎が巨大化してしまったっす!

兄貴と俺が一生懸命に作り上げた家が一瞬にして壊されたっす。

あんなのにどうやって勝てばいいんすか!公爵貴族の豪邸ぐらい巨大な建物じゃないと収まりきらないんじゃないかってぐらい大きくなっちゃったじゃないっすか!


「兄貴!これからどうするんっすか!?」

「と、と、と、とりあえず落ち着け馬鹿野郎!」

「兄貴こそ落ち着いてくださいっす!」

「こ、こういう時はな、深呼吸が一番だ。ほら一緒にスー、ハー。スー、ハー」

「スー、ハー、。スー、ハー」

「あれれ~?こ~ないの~?そ~れじゃ~こっちから~行~くよ~?」

「わああぁぁぁ!転がってきたっすぅぅぅ!」

「安心している暇じゃなかったぁぁぁ!」


なんと羊野郎はその巨体でこっちに転がってきたっす!

石や雑草を巻き込んで、地面を抉りながら転がってくる姿はまるで1台の装甲車が突進してきた感じっす。

なにが言いたいかっていうと、生身の人間が勝てるような相手じゃないってことっ

すぅぅぅぅぅ!!!


「ミング!こうなったら最後の手段だ!『亜魔威粒背五群あまいりゅうせいぐん』を使うぞ!」

「い、いいんすか!?あれはこの世に111個しかないといわれる落下聖岩を5つも使う技っすよ!?俺らはあれ8個しか持ってないんすけど…」

「背に腹は代えられねぇ!いくぞ!」

「えーーい!わかったっす!兄貴!お先に失礼するっす!」


兄貴は自分のコレクションを惜しみなく使う気っす。なのに俺だけが弱腰なのは兄貴にも旦那たちにも迷惑をかけてしまうっす。

だったら死ぬ時までこの人生をとことん歩んで行くっすよ!


「羊野郎!こっちだ!」

「あれれ~~?ど~こに~い~るの~?」


兄貴の準備が終わるまで俺が時間を稼ぐためにファイドの町で買った便利アイテム『お周り真っ白君』を使って羊野郎を中心に煙幕を発生させたっす。


「あっ!ど、どうしよう兄貴!ま、間違えて10個全部使っちゃったっす!」

「馬鹿野郎!何してんだよ!絶対後で旦那たちに怒られるじゃないかよ!」

「す、すみませんっす!」


いやー、1個で十分煙幕が発生するお周り真っ白君を10個も使っちゃったらこの森一帯が煙幕に包まれるのも時間の問題っすよねー。


「ま~わ~り~が白~くなった~。な~んだかね~むくな~っちゃったな~」


ドスンッ!


なんでかはわからないっすけどあの羊野郎戦闘中なのに寝てしまったっす。

ま、結果オーライってやつっすね!


「兄貴!なんだかパッとしないっすけど勝ったっすよ!」

「え?あんなに勝てなそうな雰囲気出してたのに?よ、ようし。よくやったぜ!ミング!全部俺の作戦通りだな!」

「えぇぇぇーーーっ!なにちゃっかり俺の手柄を横取りしようとしてるんすか!」

「違う違う違う!俺たちの、だろ?」

「俺1人のっすよ~~~!」


兎にも角にも、幹部1人を兄貴と2人で倒せたのはよかったっすよね…。

これでリュウジの旦那にも褒めてもらえること間違いないっすね!


~~スガル&ミングペア 俊足の兎死団 幹部 ジンシープ 撃破!~~


~ソウタロウの視点~


リュウジ様と別れてすぐにこちらに向かって来る白い人影を発見しました。

おそらく幹部の中で1番あしがはやいサカチキとかいう鶏頭でしょう。

長期戦になるとほかの人達のフォローに行けません。手っ取り早く済ませてしまい

ましょう。


「止まりなさい。ここから先は通しません」

「チキ―!?なんだお前は。お前が侵入者チキか?」

「だとしたらどうするのですか?」

「おいらの相手をしたこと、後悔させてやるチキ!」

「やれるものならやってみなさい!」


口喧嘩はこれぐらいにして早速捕まえてしまいましょうか。


「先手必勝チキ!くらえ!『子鶏の円舞曲(ヒヨコのワルツ)』!」


先手を打とうとした私よりも前に相手が攻撃を仕掛けてきました。

後ろから追いかけてきていたのであろう何人かの相手の部下らしき鶏頭族の男たちが

前に出てきて私の周りをグルグル回り始めました。どうやら私の取り囲んで全方向から攻撃を仕掛けるつもりのようですね。

やはり意外と強いようです。警戒を怠らないようにしなければ。


「今だチキ!一斉に攻撃しろだチキ!」

「「うおぉぉぉぉ!!!」」

「無駄です。『エアーウォール』」


全方向といっても必ず隙があります。逃げ場所がないのならば自分で作ればいいのです。私は風魔法を使って自分の体を浮かせて上に逃げました。


「な、何ぃ!何年もの修行を経た熟練の魔法使いでしか使えないような高度な技術を使うなんて!サカチキさん、こいつは手ごわいですよ!」

「少し魔法が使えるぐらいで怯えているんじゃないチキ!魔法なんて当たらなければ何も怖くないのチキ!そんなこともわからないのかチキ?」

「すみません!」

「おやおや。仲間割れですか?」

「ふん!日常茶飯事だチキ!」


試しに煽ってみましたが、そう簡単には乗ってくれないようです。

しかし、お互いににらめあっている緊迫した状況は、突然発生した煙幕によって終わりを迎えました。


「この煙幕は何だチキ?ピグルズの新しい作戦かチキ?」

「違いますよ、サカチキさん!相手の作戦に決まっているでしょう!」


はて。

私たちはそんなこと決めてませんがねぇ…。まぁいいでしょう。この際もう終わらせてしましましょうか。


「ここをどこだと思っているチキ!自分たちの庭で迷子になる馬鹿がどこにいるチキ!さっさとあいつをぶっ倒すチキよ!」

「そんな暇はありませんよ」

「ふんっ!出鱈目を言うんでじゃないチキよ!魔法使いごときに何ができるっていうんだチキ!」

「食らいなさい。『かまいたち』、『送風』」

「ぐわあぁぁぁ!」


風の刃、『ウインドカッター』をいくつも発生させ、相手の足を切り込みました。

相手は倒れて起き上がろうとしても『送風』で上から押さえつけます。

なんやかんや言ってこれが1番獲物を釣りやすいんですよね。


「ひ、卑怯な、チ、キ……」

「なんとでもおっしゃってください。勝てればいいのですから」


~~ソウタロウ 俊足の兎死団 幹部 サカチキ・その何人かの部下 撃破! ~~

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