第13話 盗賊逮捕(2)

なんやかんやで俊足の兎死団の幹部1人を仲間に勧誘(強引)することができ、ガモスの洞穴で一休みしながら予想以上に幹部が強かったことについて話し合っていた。


「ガモスの日記を見た限り、ガモスが1番弱いみたいな書き方をしていたけど実際どうなの?」

「そうですね…。力の強さで言ったら俺が1番弱いです。だけど俺は遠距離から相手を狙ったりするので、総合的な強さで言ったら5人とも同じぐらいだと思います」

「これからどうしたらいいと思う?」

「うーん。あっしは難しいことはようわかりやせんが、旦那たちの腕前だったら正面からケンカを売っても勝てると思いますがねぇ」

「俺もリュウジの旦那なら勝てると思うっす。この3年間ぐらい兄貴と冒険者続けて るっすけど、旦那たちはAランク、いやSランクも軽ーく倒せちまうぐらい強い人達だと思うっす」

「私もそう思います。実際幹部の1人を洗脳してますし、向こうにばれるのも時間の問題でしょう。試験の期限もありますし、手早く済ませてしまえば大丈夫でしょう」

「す、すごい自信だね…。まあこんなところで挫けるのもおかしいか。よし、ガモス、仲間の盗賊に侵入者が縄張りに入って来たみたいなのを伝えることってできる?」

「お安い御用です。俺の部屋に仲間と話せる通話の魔道具があります。丁度定期通信の時間なのでその時に言えばいいでしょう」

「よし、さいわい外は暗くなってきている。隠れて敵を狙うには絶好のチャンス 

 だ。今夜盗賊全員捕まえちゃおう!」

「「「おーーーー!!」」」


「こちらガモス、こちらガモス。お頭に緊急連絡だ」

「こちらピグルズ。どうしたガモス。部下が酔い潰れでもしたか?ブヒ」

「そんなことではない。侵入者だ。俺たちの縄張りに侵入者が出やがった」

「こちらサカチキ。どういうことだチキ?巡回兵にここが見つかったのかチキ?」

「こ~ち~ら~、ジンシ~プ~。ま~ずいんじゃな~いの~?」

「オレサマ、ミロモ。敵、オレサマが倒す。みんな、下がっている」

「そうはいかない。俺たちはお頭を守るのが使命ですから、お頭は黙ってドンと構えといてください」

「それで、場所はどの辺だ?ブヒ」

「俺の洞穴の近くだ。敵は全部で11人。大方依頼を受けた冒険者だろう。どうせFかEランクの弱い輩に決まっている」

「ぼ~く~がね~むらせてつ~かまえてみ~せるよ~」

「いやおいらの俊足の足で目を回らせてやるチキ」

「こんなときに個人で争っている暇はない。さっさと出撃準備をしろ!ブヒ」

「オレサマ、がんばる。みんなもがんばる。みんなヘイワ。みんな笑顔」

「はあ…。大丈夫なんだろうな…。ブヒ」


ガモスが連絡を入れているうちに僕たちは配置について話し合っていた。


「とりあえず大まかな作戦を決めておこうか。何かある人?」

「団長のミロモは頭が悪いということなので、少し複雑な罠を仕掛ければ簡単に掛かってくれるでしょう。問題は頭がいいという副団長のピグルズです。奴はどのくらい頭がいいのかわかっていないのでどんな作戦が効くのかわからないので、強引にマサオさんに捕まえてもらいます。後の幹部2人足が速いのは私が、状態異常攻撃をしてくるのはスガルとミングが捕まえます。あとの幹部以下はリュウジ様とガモスたちでお願いします。もし無力化が難しいのであればネムナール草を使ってください」

「そうだね。戦闘能力が低い僕は特にできることはないけど、みんなの応援ぐらいは出来るから、頑張ってね」


みんなだけ危険にさらすっていうのはどうなんだろうなぁ…。

いつかみんなのために戦える時が来るといいんだけどなぁ…。

何で戦闘系のスキルを望まなかったんだろうなぁ…。

こういう戦闘する場面になると途端に役に立てなくなる僕は顔には出していないけど相当落ち込んでしまうのだった。

みんなはそんな僕の気持ちに気づかず、(気づけるわけがない)それぞれの位置に向かっていった。


「来るっすよ!」


そろそろ始まるようだ。


~ミングの視点~

リュウジの旦那から初めての任務をいただいたっす。

旦那に会ってから俺と兄貴の生活は大きく変わったっす。まず、尊敬できるお人が増えたっす。マサオの兄貴、ソウイチロウ様、ゴブノスケ・ゴブキチの兄貴、ゴブリンの弟分…。そしてなんといっても1番はリュウジの旦那。あの人はすんげー強いマサオの兄貴たちを従えているとんでもないお人であり、この国の宰相をぶっ潰すというでかい夢をお持ちのすげー人なんっす。その人からいただいた初めての任務…。必ず成功させるっすよ~!


今回頂いた任務の内容は、盗賊一味の幹部の捕獲。俺たちが相手するのがジンシープとかいう眠りの状態異常攻撃をしてくる羊頭族らしいっす。


「兄貴、眠りの状態異常ですって。これは俺たちが有利じゃないっすか?」

「そうだな。俺らが今まで培ってきた知識を総動員させてこの任務を成功させる ぜ!」


兄貴の意気込みを聞いて感動していたとき、俺のスキル『散策』に生体反応が引っ掛かったっす。


「来るっすよ!」


皆さんに声掛けをして、俺も臨戦態勢になったっす。


「ガ~モ~ス~。お~えんに~来~たよ~」


白いモフモフの毛に悪魔のような角。あいつが今回の相手のジンシープっすね。

なんだかぬいぐるみが1人で動いているような感覚になるっす…。

いけないいけない。つい変なことに気が回ってしまったでやんす。

そろそろ真面目にやらやきゃだめみたいっすね。


「兄貴、行くっすよ!」

「おうよ!早く終わらせて褒めてもらおうぜ!」

「き~み~ら~がし~んにゅ~しゃ?じゃ~つ~かまえな~いとね~」


俺たちの戦いが始まったっす。

状態異常攻撃をしてくる敵には今まで何度も戦ったことがあるっす。

余程のことがなければ兄貴と俺のコンビネーションでボコボコにできるっす。


「ミング!いつものでいくぞ!」

「了解っす!兄貴!」


俺らは相手の周りに兄貴の固有スキル【コレクションルーム】の中にため込んでいた木材を使って簡易型の家を建てたっす。兄貴と俺は2人とも『土木工事』というスキルを持っているっす。だから2m×2m×2mぐらいの簡単な家なら一瞬で建てることができるって寸法っす。


「あ~れ~?う~ごけな~いよ~?」

「これで終わりだぜ!羊野郎!」

「こ~れじゃ~ま~けちゃ~う~。よ~し~。『せ~いちょ~う(成長)』」


後はネムナール草を使うだけというときに、ジンシープが突然巨大化して俺たちが建てた家をぶち壊しやがったっす。そうっすね、大体4mぐらいまで巨大化しちまったっす!


「こ~こ~で~お~まえらな~んか~にま~けられな~いんだぁ~」


ど、どうすればいいんすかぁぁぁぁぁ!

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