第11話 初めてのクエスト

朝起きて朝食を食べ終わった後、早速みんなを集めた。


「えー、みんなも聞いてると思いますが今日は盗賊討伐の依頼に行きます。詳しい

 ことはマサオ、説明よろしく!」

「わ、わかったんだな。被害が出始めたのは2週間前ぐらいかららしいんだな」


その後の説明を要約すると、ファイドの町の南東にある『シーフズヘルド』という町にある、ある商会がファイドの町に来る際に通る『洞穴の森』という岩場が多い森で盗賊に襲われたというのが事の始まりらしい。その盗賊たちはシーフズヘルドの巡回兵が到着した時にはもういなくなっていたが、空になった馬車に”俊足の兎死団 参上!”と書かれた紙が貼られていたので盗賊の仕業だとわかったのだとか。その後被害はだんだん大きくなり、たった2週間で10もの商会が襲われたらしい。巡回兵は巡回の回数を増やしているのに捕まらないということは、森の中に隠れ家を持っているだろうということなので気を付けてほしいと忠告されたということだ。


「僕はそんな盗賊について初めて知ったけど、他の盗賊もこんなことするの?」

「私はそんなこと聞いてことがないので珍しいのではないのですか?」

「旦那たちに知らねぇものならあっしらにもわかりません」


だとしたら相当痛い集団じゃないか?恥ずかしくないのかな…。


「ま、まあとにかく、油断せずにできれば生け捕りにしてその盗賊を懲らしめようか」

「「了解!(しました!)」」


みんなやる気があるみたいでよかったよかった。


「ところで少し聞きたいんすけど、俊足の兎死団って名前ダサくないすか?」


僕の他にもそう思った人がいたようだ。


ファイドの町を出てから30分程かけて洞穴の森に到着した。

ちなみにゴブリン勢は新たに名付けたゴブエモンとゴブヤンとゴブスケとゴブナリの4人を連れてきた。僕とヤムザとミングはマサオとゴブノスケに担がれてここまで来た。いつか馬車が欲しくなるな…。


「ここに盗賊が潜んでいるんすね…。なんか緊張してきたっす」

「早くその盗賊どもをギッタンギッタンのボコボコにして盗賊の宝をガッポリいただくんですよね?旦那」

「うーん。あるかどうかはわからないけどな…」


盗賊の宝かぁ…。ロマンを感じるなぁ…。


「それじゃあ出発しようか」

「「はい!」」


森の中はうっすらと太陽の光が差し込んできてとても幻想的だった。そして所々穴が開いている岩場があり、その中で生活したら原始人みたいだな…。と馬鹿なことを考えていたその時!何かが見えてきた。


「旦那!でけぇ洞穴がありますぜ!」


スガルが何か見つけたようだ。大きな洞穴?中に何かいるのだろうか。

中に入ると廊下のようなものが奥まで伸びていて、両脇には部屋のようなものがいくつも掘られていた。

中は鉄格子が埋め込まれている倉庫のようなものになっていて、食料やこれまで狩ってきたのであろう魔物の素材が貯めこんであった。


「なんだここ?」

「ただの洞穴だとは思えませんが…」

「もしかしてここが盗賊のアジトだったりしないっすかね?そしたら手間が省けて楽 なんすけどね~」

「あっ!向こうの部屋は倉庫ではないみたいですぜ。お宝部屋じゃないですかい?」


スガルがさした方向には鉄格子ではない壁に扉が埋め込まれていた。確かにあれは部屋の入口のようにも見える。


「とりあえず入ってみようか」


中に入ると少し埃っぽいがまあまあきれいにされている部屋があった。木製のベッドや飾られている武器や防具から男物の部屋だということがわかった。この洞穴を管理している人物の部屋だろうか。するとミングが何かを見つけた。


「リュウジの旦那!ここに日記がありますっす!」


石製のテーブルの上に『俺の日記』と書かれた1冊の本のようなものが置いてあった。おそらく冒険者ギルドのクエスト受理で使われていた特殊な紙を束ねたものだろう。何か手掛かりになることが書かれているかもしれない。少し読んでみよう。


------------------------------

4月15日 月曜日


今日から俺は日記をつけようと思う。何故かって?それは俺たち仲良死5人組で新たに盗賊団を結成した素晴らしい記念日が今日だからだ!その名も『俊足の兎死団』!由来は俺たちの育った村に牛がたくさんいて、5人の幹部全員が兎好きだからだ!いや~これを決めるのにまる1日かかっちまったぜ~。カッケー名前はすぐにはできないもんだな~。この盗賊団団長は5人組のリーダー担当!牛頭族の『ミロモ』。あいつは頭は5人の中で1番悪いが戦闘能力は断トツで1番だ。あいつは1回も負けたことのないツワモノってわけだな。そして盗賊団副団長は5人組の頭脳派担当!豚頭族の『ピグルズ』。あいつはもうとにかく頭がいい。近接攻撃は弱えが魔法攻撃に特化してるからまず近づけねぇ。あいつに狙われたらもうおしまいだな。次に幹部3人。まずは5人組の筋肉担当!鶏頭族の『サカチキ』。あいつはガタイが良いくせに動きがとても速ぇ。一度獲物を補足したらそいつを仕留めるまでどこまでも追いかけていく。次に5人組のマイペース担当!羊頭族の『ジンシープ』。あいつの得意技は相手を眠らせて戦闘継続不可能にしてしまう状態異常攻撃だ。その代わり自分も一緒に寝ちまうのが痛いところだな。最後に5人組のムードメーカー且つ黒幕(嘘)担当!鴨頭族の『ガモス』。つまり俺だ。俺は…そうだな。文章を書くのが好きで戦闘面で言ったら弓が少し得意ってぐらいだな。

まあ1日目はこんなもんでいいだろ。明日も忙しいし、今日はこれぐらいでやめておく。いつか俺たち『俊足の兎死団』がこの大陸一の大盗賊団になってやるぜ!

------------------------------


これは当たりだったようだな。ここは俊足の兎死団のアジトで、この部屋はガモスという幹部の1人の物なのだろう。最初の方にアジトを見つけられたのはラッキーだったな。

そのあとに書かれていたことはあまりに長すぎたので省略すると、自分たちの生まれた村で結成されたこの盗賊団は、アジトになる場所を探しながら各地を旅していたらしい。その道中で仲間も増やしていき、今では合計50人いるらしい。そしてこの洞穴の森を見つけると、この洞穴を含め合計6つの洞穴をアジトとして住み始めたという。幹部が1人1つの洞穴を治め、残りの1つは共有の作戦会議場のようなものにしているようだ。今は丁度いい新しい洞穴を見つけるためと近くの村を襲って奴隷を獲得するために遠征をしているみたいだ。


「みんな。あいつらが遠征でいない間がチャンスだ。今のうちにあいつらを捕まえる作戦を考えておこう」

「この日記には幹部が1人1つの洞穴を治めていると書かれていましたよね?でしたら幹部を1人ずつ倒して1つずつ洞穴を制圧していくというのはいかがでしょう?」

「その作戦いいな。よし!その作戦でいこう!まずガモスって奴を捕まえようか」


何も起きずにすぐに捕まってくれるといいけど…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る