第10話 商人ギルド
翌日、僕たちは宿の前で二手に分かれた。
僕たちリュウジ班は商人ギルドの方へ、マサオ班は冒険者ギルドの方へ歩き出していった。
まあ建物隣同士だから進む方向は同じだけどね…。
さ、張り切って行ってみよー!
◆
今度こそマサオたちと別れた僕たちは冒険者ギルドの隣にある商人ギルドの扉を開いた。
扉を開いた瞬間、僕たちに鋭い視線がいくつか感じたがすぐにその気配は消えた。
「今のはなんだろう?」
「今のは商人たちがこちらを探っていたようですね。なに、すぐに慣れますよ」
これを毎回やられるのは身体共にきついな…。
お、何やらお姉さんが立っている場所があるな。あっちが受け付けかな?
「すみませーん」
「はい、何か御用…。坊や、何か用かな?」
はあ…。やっぱりこの姿だとまだ子供だと思われるのかな…。
「えっと、お店を開きたいのですが…」
「えっ?お店?君が?」
「おいおいおいおい。冗談じゃないぜ!こんなところに餓鬼がいるじゃねぇか!おい餓鬼。ここはな、お前みたいな奴は一生お目にかかれないような大金が動いている場所なんだよ。だからな、こんなところに餓鬼がいるということが当たり前になったら取引先が機嫌を損ねちまうだろうが!さっさと出て行け!」
え?
僕がいることでそんなことが起きてしまうの?
「す、すみません。すぐに出て「その必要はありませんよ」え?」
「はあ?何言ってんだよ、兄ちゃん。ん?ちょっと頭がよさそうな雰囲気だしやがって。俺のやり方に文句でもあるのか?」
「大いにあります。まず、この方がいるだけで失敗に終わる取引など、あなたの腕が足りないだけでこの方のせいになることはありません。次に、この方はここへきちんとした要件があって来たのです。それを追い返すような真似をしたらそれは今後のあなたの信用に関わりますがよろしいんですか?」
「へっ!何を言うかと思いきやそんなことか!よく聞けお前ら。いいか、店舗を開く にはな、10万G必要なんだよ!お前らみたいなただの能無しに用意できるほど世の中甘くないんだ!まあどうしてもっていうんだったらこのザピー様が貸してやって もいいけどな!まあそれ相応の利息は頂く。ハーッハッハー!」
じゅ、10万G!?今持ってるのが0Gだから……10万倍!?
いや0は何倍しても0か…。でもとてつもない金額だな。本当にこんなに掛かるのか?とにかくこれは出直すしかないな…。
「わかりました。出ていき「いいでしょう。ではこれでいかがですか?」え?」
ソウタロウがそういって後ろに担いでいた革袋から何やら豚のような入れ物を取り出した。そして白くてキラキラしている硬貨を10枚机の上に出した。
「ここに丁度10万Gあります。これで認めてもらえますね?」
「は、は、白金貨!?き、貴族たちの大きな取引で使われるといわれる我々庶民には所持するのが奇跡といわれるものを何でお前らのような餓鬼が持ってるんだ??」
「私の里…いや村といったほうがいいですか。村で製造されていたので拝借…いや貰ってきました」
「う、嘘だ!偽物に決まっている!」
「疑いたければご勝手に。それでは受付の方。商会設立の手続きをお願いします」
受付の人は話しかけられるまで口を開けてこの出来事をポカンと見ていた。
ちなみに僕もポカンとしていたモブの1人だ。
「は、はい。わかりました…」
「ちょ、ちょっと待て!よぉし。よ、よくぞ第1の試験を突破したな!これは将来が期待できそうだ。では、次の試験をお前たちに授けよう」
「は?試験?何の話ですか?」
「い、言い忘れていたが商会を設立するにはいくつかの試験を合格しなければならないのだ。なので1番最初の試験は『ギルドにお金を献上する』だったということだ」
「あなたも往生際が悪いですねぇ…。まあいいでしょう。それで?全部で何個の試験(笑)があるんですか?」
「グヌヌヌヌヌ…。し、試験は今のを入れて3つある。なので第2の試験の内容をお前らに説明する。第2の試験は『一緒に仕事をする仲間を集める』だ。そうだな、ざっと100人くらいは集めてこい」
「ひゃ、100人!?い、いくら何でも多すぎじゃあないですか?」
「お、多すぎではない!このぐらい商人には簡単なことだ。期限は1週間。文句を言うならやめてもいいぞ?その代わり違約金5万Gを貰うがな!ハーッハッハー!」
な、なんて理不尽なんだ…。
1週間で100人なんてとても集まらないよ…。
「いいでしょう。その試験、受けて立ちます」
えーーーーーーっ‼
「まじかよあいつら」
「1週間で100人とか終わってるだろ…」
ソウタロウ君、思いっきり喧嘩打ってしまったぁーーー!
周りも思いっ切り引いてるぅ―!
どうしよう…。1回マサオたちと相談してみるか…。
◆
宿に戻ったら、偶然マサオたちが戻ってきていた。
「おっ、いたいた。よかったーまだ出発してなくて。これからどんな依頼を受けるの?」
「初めての依頼は、『獣人だけをさらう盗賊団を討伐せよ』に決めたんだな」
「この盗賊たちは他の町への街道の途中にある森林に現れるらしいのです。旅人を襲い、男だったら荷物を奪って命を奪い、女だったらアジトまで連れていく悪質な行為を何度も繰り返しており、近くの住民がギルドに依頼を出したみたいですね」
「っ!捕まった人の人数ってわかる?」
「確か…。ざっと65名ぐらいって聞きましたけど…」
「それだ!仲間集めは不幸の人々を助けて、その人たちに働いてもらおう」
ひょんなことからいい方向へ事態が動きそうな予感!
明日も頑張るぞぉ!
「僕も付いて行っていいよね?明日の事件は僕が助けに行くよ」
「えっ?ま、まあいいんだな。一緒に行こう、だな」
そういって僕はベッドに滑り込んだ。
はあ……。これから大丈夫かね…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます