第9話 老夫婦の宿

新たに妖狐族のソウタロウとごろつきのスガルとミングを仲間に迎え、『満天の星空』という宿に向かった。そこは、2階建ての趣のある古民家で、広さでいうと大型バス4台分ぐらいの家だった。


「すみませーん!」

「はいはい。いらっしゃいませ。『満天の星空』へようこそ。お泊りですか?」

「はい。9人なんですけど泊まれますか?」

「はいはい。大丈夫ですよ。大部屋がありますから。えー、9名様で料金は4500Gになります」

「旦那、あっしがお払いします」

「はいはい。4500Gぴったりいただきました。お食事時になりましたらお呼びしますのでお部屋でゆっくりおくつろぎくださいな。おーい。婆さんや。お客様を大部屋にご案内してくれぃ」

「はいはい。わかりましたよぉ。お客様、こちらへどうぞ」


お婆さんに案内された部屋は例えるならば和室の異世界アレンジ版のような感じの部屋だった。


「これはいい部屋だねー。これは穴場になるはずだよ」

「窓から町の景色も見えるんだな。とてもきれいなんだな」


みんなでそんなことを言い合いながら僕はみんなを部屋の真ん中にあったテーブルの周りに集めた。


「よし。みんな集まったね。これから第1回『今後どう行動すればいいのか会議』を始めます!拍手!」


パチパチパチパチ。


「まず、僕とマサオ達がこの町に来た目的は、この町に潜んでいるマサオたちを襲った魔法使いを見つけるためと、この国の宰相が企んでいる計画をぶっ潰すためです!これに何か質問は?」

「え?えーーーーーっ!?こ、この国の宰相ってエニエス・ジョルジのことっすか!?」

「さすが旦那だぜ!目の付け所がちげぇや!」

「ふむ。その計画とやらは何なのですか?」

「えっとね、何か魔族と手を組んでこの国を乗っ取るとか何とか…」

「えーーーーーーーーーーっ!?!?ま、ま、ま、魔族!?」

「さすが旦那!相手が魔族だったら不足はねぇや!ぶっ潰してやりましょうぜ!」

「なんで兄貴はそんな平気でいられるんすか!?」

「馬鹿野郎!ミングお前旦那が魔族や宰相なんかに負けるわけないだろう!だったら心配も何もしねぇよ!」


スガルは乗り気のようだがミングはわかりやすく驚いているな。


「僕は魔族や魔物の被害がない地域から来たんだけど魔族ってそんなに危険なの?」

「危険っていう言葉で表せないぐらい危険っすよ!紫色の皮膚!黒い角!魔法攻撃が得意!500年前の第一次魔人大陸戦争の時から俺ら人間族との因縁がある種族のことっす!子供でも知ってる話っすけどその被害がない地域何てこの世界にあるんすねぇ…(そこに住んでみたいっす)」

「ん?何か言ったか?ミング」

「いえ!なんでもないっす」


それだけ魔族が怖いっていうことかな?


「マサオさんたちは襲われたんですか?」

「そうなんだよ。マサオ、説明してくれる?」

「わ、わかったんだな」


マサオはあの時と同じ説明をした。


「マサオの兄貴を襲う不逞な野郎がいるんですか?それは許せねぇな」

「でも何のためにマサオさんを襲ったのでしょうね。マサオさんは人に恨みをかうような性格ではないと思うのですが…」

「ま、それもその魔法使いを見つければいい話だよ。で、さっきの宰相の計画に戻るんだけど、ぶっ潰すための案って何かないかな?」

「まず、実力行使で倒すのは無理でしょう。この国の王都には『王国聖教会騎士団』という騎士達の軍団があると本で読んだことがあります」

「そうっすよ。その騎士団の中でも聖堂騎士は1人で1000体もの魔物を倒せるって聞いたことがあるっす。それに匹敵する軍勢はそうそういないと思うっす」

「なので経済面から攻撃すればいいと思います」

「例えば?」

「この国の食料はいくつかの商会が様々な農家から買い取って供給しています。その商会を1つに統一してしまえば国はその商会の言いなりになるしかありません。いかがでしょうか」

「僕の能力もお店経営で強いものだから丁度いいね。よし!商会を作ってこの国裏から操れるぐらい強大に成長させよう!」

「「「おーーー!」」」

「まあとても難しい試みになりそうっすけどね…」


とはいうものの、どうやってお店を開くのかもわからないままだ。

どうしたものかなぁ…。


「お食事の用意ができましたよぉ!」


そう考えていた時、お婆さんの声がした。


「はーい。今行きますぅ!」


とりあえず、ご飯食べるか。


「はいはい。お皿、片づけておきますね」

「ありがとうございます。とても美味しかったです!」


お爺さん達の料理は本当に美味しくてびっくりした。お世辞抜きで毎日食べても絶対に飽きないと断言できる。


「お爺さん。僕たちお店を開きたくて村からこの町に来たんですけど、何か知ってませんか?」

「はいはい。お店を開きたいんでしたね?そうしたら冒険者ギルドの横にある建物『商人ギルド』に行ってみなさい。わしも若いころそこに行ってこの宿を開いたから」


これはいいことを聞いた!まさかお爺さんからこんなヒントを貰えるとは!

なんかラッキー☆


部屋の帰ってから早速みんなを集めた。


「お爺さんから商人ギルドに行くとお店を開けるということを聞いたので僕は明日商人ギルドに行ってみたいと思います。そこで、ソウタロウにはついて来て貰いたい」

「もちろん付いて行くつもりです」

「そして、マサオとゴブノスケ、ゴブキチ、ゴブタ、ゴブヤスとスガル、ミングは冒険者ギルドでお金を稼いできてもらいたい。できればそれぞれ冒険者登録もしてほしいな。可能であれば、だけどね?」

「わかったんだな」

「「任せてください!(っす!)」」

「じゃあみんな、明日からよろしく!」


そういって僕は敷いてあった布団に潜り込んだ。

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