第139話 オーアタルダンジョン(11)
「それにしてもよく氷属性の魔物なんかを連れていたな。水属性のスキルを使える魔物は多々いるが、氷属性のような上位魔法のスキルを使える魔物はある程度強い個体だっていう証拠なんだぜ?」
「ワイファーは濃霧の森のエリアボスだった子なんですよ」
「エリアボス!?どうりで強いはずだ…」
今でもワイファーをテイムすることができたのは奇跡だと思っているんだよね。
「グルワァ…(あの時はアリスとやらを庇いながら戦っておったしな、その上エリアボスをやるのにも疲れてきたからな、この際人間にテイムされるのも悪くないと考えたから簡単にテイムできたのじゃ。本来ならば我もっと強いんじゃ)」
「へー、そうだったんだね」
「こいつは何て言ってんだ?」
「自分の力はもっとすごいんだぞーって自慢?してます」
「ガハハハハ!そいつはすげぇな!とんだ自信家じゃねぇか!」
ワイファーが何やら言いたげな視線でこっちを見てくるけど気にしない気にしない!
「ひいぃぃい!や、やっぱり無理っすー!リュウジ様!助けてくれっすー!」
「グルワァ?(そんなことよりいいのか?彼奴らを助けなくとも)」
ワイファーの爪が指す方向を見ると、ミングたちが緑色のゴーレムちゃんから逃げ回っているのが見えた。
「あぁ!早く助けないと!」
◆
「グルワァア!(喰らうがいい!)」
ガツン!
ワイファーの鋭い爪と緑色のゴーレムの固い拳が何度もぶつかり合う!
「た、助かったっす!」
「ありがてぇ!」
「何故か攻撃が全然通らず苦労していたところでしたブヒ!」
もう大丈夫!ワイファーがやっつけてくれるから!
「グルワァアァァ!!(【白熊の吐息】!)」
「おぉ!ゴーレムが丸ごと氷漬けに!」
「やったすか!?」
あっ!その言葉を言っちゃったら!
ゴゴゴゴゴゴ…バキンッ!
「グ、グルワァ?(わ、我の固有スキルをゴーレム如きが打ち破っただと?)」
「やれてなかったっすー!」
あーあ。こういう時に『やったか!?』なんて言うと絶対に復活してくるんだよ…。
お決まりでしょ?
「そんな当たり前のことみたいに言われてもわからないっすよ…」
「き、来ますブヒ!」
ワイファーの固有スキルを破った緑色のゴーレムちゃんは、自分を攻撃してきたワイファーに向かって拳を振り始めた。
「グルワァ!(力比べならば負けん!)」
さっきまでは拳をぶつけ合っていたけど、今度は拳と拳を一点に集中させて力比べみたいなのをやってる!
漫画でしかみたことなかったんだけど実際にやるもんなんだ!
「い、今のうちに攻撃していくブヒ!」
「っしぁおらぁ!」
「行くぜ!」
「喰らえっす!」
ワイファーが緑色のゴーレムちゃんを抑えている間、みんなで総攻撃をかける作戦『ワイファー矢面大作戦』を開始した。
『『前から気になっていたのですが、マスターのその絶妙に外れているネーミングセンスはどこから生まれてくるのですか?』』
…知らないよそんなこと!
ネーミングセンスは鍛えられないんだからしょうがないじゃない!
「リュウジの旦那も攻撃してくだせぇよ!」
「俺たちだけじゃ倒せねぇっす!」
わ、わかってるよ!
えーっと、誰を呼び出そうか?
『『…1つ試したいことがあります』』
ん?何を試したいの?
『『セメント親方を呼び出すことをお勧めします。ワイファーの氷で凍ったということはセメント親方でのセメント攻撃でも固まると思うのです。そこをワイファーで攻撃すればテイムできると考えます』』
確かに!
ワイファーの固有スキルで凍ったってことはセメントで固めることもできるはず!
「出てきて!セメント親方!」
「ブルオォ!!」
メテリオダンジョンのボスモンスターであるセメント親方は背中にあるノズルからすぐに固まるセメントを発射できるのだ!
「やっちゃえ、セメント親方!」
「ブルモオォ!!」
「おぉ!ゴーレムの足元が固まったっす!」
セメント親方のおかげでゴーレムちゃんの動きを封じることができた!
「グルワァ!!(リベンジじゃ!【白熊の吐息】!)」
「これでテイムできるな!」
「よし!【テイム】!」
『『オーアタルダンジョン・サブモンスターの討伐、捕獲を確認しました。そのため、[目標“サブモンスターを9回討伐する”・報酬:???のレシピの切れ端(2)]を獲得しました』』
よし!テイムできた!
◆
〜パーティの中で地位の低い ワニュウドウの視点〜
ガギィン!
「そんな!攻撃が効いてねぇ!」
「白色に攻撃しようとすると紫色が、紫色に攻撃しようとすると白色が攻撃を止めているようですな」
「つ、つまり?」
「ガッハッハッハ!なんと!このゴーレムは連携しておるのですかな!」
「なんて厄介な!ゴーレムが知能を持っているなんて聞いたこともねぇ!」
今、俺はゴブノスケの兄貴と一緒にオーアタルダンジョンのサブモンスターである紫色と白色のゴーレム2体に挑んでいる。
なんとこのゴーレムたちはお互いにお互いを守り合って戦っているのだ!
「これは何か手を打たねば永遠に続いてしまいますな!」
「ますな!じゃないですって!どうするんですか!」
「ここは1つ、合わせ技を放つとしましょうぞ!」
合わせ技?
「確かワニュウドウ殿は車輪のような姿になれましたな?」
「ええ、できますけど…」
「では、とりあえずその姿で白い方のゴーレムに突っ込んでもらえますかな?」
「は、はあ…」
ど、とうするつもりなんだ?
「ま、まあやるしかないか。
「とうっ!」
俺が覚醒して車輪の姿になり、白色のゴーレムに向かっていく。
それに合わせて、ゴブノスケの兄貴が玉乗りの要領で上に乗った。
白色のゴーレムを守るためなのか、紫色のゴーレムが前に出る。
「喰らうといい!【魔人流奥義・大車輪斬り】!」
「うおぉおぉ!!」
ピ、ピ、ピ、ズガァアン!
2体のゴーレムを巻き込んで大爆発を起こす!
爆風の後に見えたのは煙を立てて倒れ込んでいる2体のゴーレムの姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます