第138話 オーアタルダンジョン(10)

「魔属石の階層で魔物が現れない原因としては、今のところは魔属石を生み出すときに使用される魔素が大きすぎて魔物を生み出すための余裕がないからだって言われてるな」

「ダンジョンが魔物を生み出すためには魔素が必要だということですブヒか!?」

「そういうこった。いくらダンジョンとはいえ何もないところから生物を生み出すなんて、そんな芸当到底できはしねぇだろうからな」

「たしかにブヒ…」


ピグルズとガドウさんが頭の良さそうな会話をしている間、その隣ではゴブノスケと信綱お爺ちゃんとワニュウドウ君がこんな話をしていた。


「このようなゴーレムがたくさん増えれば日々の鍛錬にもっと張り合いが出ますな!」

「確かに。今までで1番切るのに苦労した敵であったな」

「まあリュウジ様のテイムスキルは前例の無いものですからね。そもそもテイムしたサブモンスターが復活するのかもわからないんで、なんとも言えないですぜ」

「流石はリュウジ様というわけですな!」

「ワシから見てもあの小童の力はとてつもなく強大な物を秘めておると踏んでおるぞ?」

「確かにあの人の御力は規則外ですよね」


な、なんだか恥ずかしいな…。

は、早く先に進むよ!あんまり時間もないんだから!


「さ、ここがボスのいる部屋だな」

「この階層のボスはどんなのなんすか?」

「この階層に君臨するサブモンスターはさっきゴブノスケの兄貴がが褒めていたゴーレムの上位種ですぜ」

「おぉ!それは期待できそうですな!」

「どのような敵なのか…誠に楽しみじゃ」

「行くとしましょうブヒ!」


あれから特に新たな魔物ちゃんが出てくるわけでもなく、魔属石の階層のサブモンスターのいる部屋に辿り着いた。

部屋の中に入ると体育館ぐらいの広さの六角形になっていて、壁は赤、青、緑、黄色、紫、白に光っている鉱石でできていた。


「おぉ…。中々煌びやかな空間ですな」

「こ、これ、壁一面魔属石か…?火属性に水属性…風属性と土属性の塊…こりゃあ珍しい!闇属性に光属性の魔属石の塊まであるじゃねえか…」

「ですが、サブモンスターの姿が見当たらないですブヒ」


そうなんだよね。

部屋に入ったはいいものの、サブモンスターの姿が見えないのだ。


「特殊演出みたいなやつなのかな?」

「トクシュエンシュツ?なんですブヒか?それは」

「えーっと…なんか、特別感を出すための演出みたいな」

「おぉ!なんともロマンを感じる響きですブヒね!」


ゲームでも特殊演出があるかないかでいったら、ものすごい変わってくるもんね。


「こ、これは!」

「地震か!?」

「ゆ、揺れているっす!」

「とうとうお出ましですかな?」


ピグルズと特殊演出について語ろうとしたら、突然地面が揺れ始めた。六角形の6色の壁が光り出すと、壁が真っ二つに割れて中から合計6体の大きいゴーレムちゃんたちが出てきた。


「ろ、6体も!」

「色とりどりっすねー」

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃねえよ!」

「何とも粋な計らいでありますな!」

「ワシは2体じゃっ!2体受け持つ!」


ゴーレムちゃんが出てくると、1番最初に信綱お爺ちゃんが青と黄色のゴーレムちゃんに向かって走り出した。

あの剣聖元気ありすぎだろ!


「先を越されましたな!だが、吾輩たちも負けてはおられませんぞ!」

「いや、待ってくださいよ!」


ゴブノスケとワニュウドウ君は紫色と白色のゴーレムちゃんに挑みに行ったみたいだ。


「え、俺たちはどうするっすか?」

「どうするったって…」

「挑みに行くしかないのではブヒ?」

「じゃ、じゃあ行くっすか…」

「え?僕は?」

「俺もどうすればいいんだよ!」

「リュウジの旦那とガドウさんなら大丈夫っすよ!」


そう言って残った3人は僕をおいて緑色のゴーレムに挑みに行った。

つまり、残った赤のゴーレムちゃんは僕とガドウさんが相手しないといけないってことかな?

うん、無理でしょ。

僕自身に戦闘能力は全然ないんだから。

開始5秒以内にリタイアする自信しかないよ?


『『…じゃあ箱庭から魔物を召喚すればいいのでは?』』


……確かに。

忘れてたわ箱庭の存在を。


「ちなみに言うと、見たところ相手は火属性のゴーレムだな」


『『この情報から考えるに、ワイファーの召喚をお勧めします』』


火には氷や水ってこと?

そういう相性なんかがあるなんて本当にゲームみたいだね。

まあ自然の摂理ってやつかな?


『『まあそんなもんです』』


返答も適当になってるよね?

…まあいいけどさ。


「出てきて!ワイファー!」

「グルワァァァ…!!!(我久々に登場…!)」


僕がそう呼びかけると、ワイファーはもう口から白いブレスを吐きながら登場した。

久々の出番だから張り切ってるのかな?


「グルゥウワアアァァ!!!(最初から飛ばしていくぞ!【白熊の吐息】!)」

「おぉ!氷属性持ちか!こりゃあまた珍しい魔物を引き連れてきたもんだ!」


ワイファーの放った白いブレスはこっちに向かって走ってきていた赤いゴーレムちゃんの全身を包み込み、ブレスの後には氷漬けになった赤いゴーレムちゃんの姿しか残っていなかった。

こんな状態でテイムなんかできるの?


『『氷の中に魔素の流れを確認しました。高確率でテイムすることが可能だと考えます』』


え?いけんの?

そういうことなら…。


「【テイム】!」


『『オーアタルダンジョン・サブモンスターの討伐、捕獲を確認しました。そのため、[目標“サブモンスターを8回討伐する”・報酬:???のレシピの切れ端(1)]を獲得しました』』


「グルワァ?(もう終わりなのか?つまらん…)」


ワ、ワイファーがあまりにも強いからなんだかあっさり終わっちゃったな…。

この???のレシピの切れ端っていうのは何なんだろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る