第6話 冒険者試験(2)
「な、なんだと!?あの力自慢が取り柄のブルーノがあんな一瞬で…」
「え?え?どうするの?どうするの?ブルーノがいなきゃ作戦が成り立たないよ?」
「と、とにかく、私たちが今できることをしましょう。相手はテイマーなのですから、飼い主を倒せばいいのですわ!」
上から、シーフ、魔法使い、神官のセリフである。
いやー、マサオの力ってすごいね!何も武器ないのに巨体のブルーノだっけ?の体を吹き飛ばしっちゃったんだもん。
「お、おで、リュウジが冒険者になるためのお、お手伝いをするんだな!」
「きゃー!き、来たわよ!」
「む、迎え撃て!」
ボッカーーーーン。
「し、勝者、チャレンジャー!」
その後はマサオが手を振り回して生まれた極小竜巻が『ストロンガーズ』の残りの3人を吹き飛ばして第一試験は終わった。
「こ、今回はストロンガーズの調子が悪かったみたいだな!悪運のいい奴め!つ、次はこうはいかないからな!なぜかというと、俺様直々に相手をしてやるからだ!」
こいつ、往生際が悪いな。明らかにマサオが実力で倒していたじゃないか。
まああれを見てまだ向かって来るその度胸だけはすごいと思うよ。
「そ、それと次からそのゴブリンを使うのは禁止だ。すべての試験の中でテイムしている魔物は1回きりしか使えない決まりだからな!」
うーわ。それはずるいだろ。マサオの実力に怖気つくのは仕方ないとしてそれを禁じてくるなんて大人げなさ過ぎて笑えてきちゃうわ。
「はぁ。まあいいですよ。その代わり、次はこちらは2人テイムした魔物を使います がよろしいですね?」
「 ふんっ!どうせさっきのゴブリンが1番強かったんだろう。いいさ。俺様は強くて心が広いから3対1でも文句は言わない!さあ、どこからでもかかって来い!」
「ゴブノスケ!ゴブキチ!頼んだ!」
「合点承知の助太郎ですわい!」
「おまかせください!リュウジ様」
マサオが参加できないのだったらこの2人に任せるしかないわな。
「そりゃあ!」
「見え見えなんだよ!」
まずゴブノスケが切りかかって行った!でもレッドの大剣に防がれた!
「〈土移動〉」
「っ!アブねぇ!」
隙ができた瞬間!ゴブキチが土魔法でレッドの足を固定しようとして失敗。でも、レッドを混乱させることができているので効果は抜群だ!
「〈フォースウォール〉!」
「な、何ぃ!?」
そこへすかさずゴブキチが独自に編み出した土魔法〈フォースウォール〉でレッドの周りを完全に壁で囲んでしまった!
「【小鬼流・大岩潰し】‼」
「ぐわああああぁぁぁ!」
何も身動きが取れないレッドに向かってゴブノスケが必殺【小鬼流・大岩潰し】を放ったああぁぁぁぁ!!!レッド地面に倒れてゆくぅぅぅ!
「し、勝者、チャレンジャー!よって、チャレンジャーを本日今現在から特別にEランク冒険者と認める!」
僕、何にもしてないのに勝っちゃった。
◆
「お、おめでとうございます。きょ、今日からあなたはGランク…いや、Eランク冒険者として大きな一歩を踏み出しました…。えーっと、ようこそ冒険者ギルドへ…」
あれから冒険者としての決まりごとがあるらしく、その説明を受けるために受付に戻ってきた。
「まず冒険者ランクについて説明します…。冒険者はランク上げるために日々頑張っています。ランクは、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの10段階に区切られているので今あなたは初日から下から3番目のEランクだという大変特殊なケースですね」
「どうすればランクを上げることができるんですか?」
「基本的には魔物の討伐数、クエストの達成量、ギルドへの貢献度で上がれるかどうか決まります。次に、クエストの受け方についてです。クエストとは、ギルドや町の人の困っていることを手助けすることです。それをクリアすると、報酬が貰えます。報酬はゴールドで支払われたり、特別な装備が貰えたりなど、様々な形があります。クエストは大きく分けて3種類あります。1つ目は人探しや草むしりなどの生活系クエスト、2つ目は魔物討伐などの戦闘系クエスト、3つ目は薬草採集などの採集系クエストになります。」
「期限とかはあるんですか?」
「少なくて1週間、多くて1ヵ月程でしょうか。それもクエストを受ける際に発行される、このような紙に掲載されますのでご確認ください。ちなみに、忠告程度ですが、もしクエストに失敗してしまうと、違約金が発生してしまうので注意しておいてくださいね。まぁ、この業界で失敗してしまうということは"死"を意味するので違約金の発生は極稀なんですけどね。そしてこちらにあるのが『冒険者カード』と呼ばれるアイテムで、様々な場面で必ずあなたの役に立つのですが、役に立つ場面がありすぎて1度に言うことが出来ないので省かせていただきます」
受付の人はこちらの質問に丁寧に答えながらも、手元にあった書類を次々と片付けていっていた。あまりにも滑らかな動きだったので、つい見とれてしまった。
「以上で大体このギルドの仕組みについて説明し終わったんですけど…。ちゃんと聞いてました?」
「も、もちろん聞いていましたよ!いやだなぁ、聞かないわけないじゃないですか!あはははは!」
「それならいいのですがね…。まぁ、SSSを目指して頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
受付の人に見送られながら、これでしばらくはこの町にいることができるなと安心しながらマサオたちと冒険者ギルドをあとにしたのだった。
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