第144話 間話 箱庭の日常(1)

リュウジたちが商談をしていたりダンジョンを攻略している間…。

リュウジにテイムされた魔物たちが暮らしている箱庭ではどんな日常が送られているのか。

少し覗いてみましょう…。


コーケコッコー!


「ふわぁ〜」


私の1日はキングコカトリスさんの鳴き声を聞くと共に始まります。


「今日も我が主人に感謝を」


私の主人でありこの箱庭の盟主でもあるリュウジ様に祈りを捧げたら、そのリュウジ様のお屋敷をお掃除します。

私の名前はミライ。偉大なるマスター、リュウジ様にいただいた名前に感謝を捧げて日々メイドの仕事をしているメイドゴブリンです。

お屋敷の掃除が終わったら、箱庭にある各施設へきちんと動作をしているか視察に行きます。

まず最初に来たのは私と同時期に進化したブラスミゴブリンであるコテツが仕切っている施設、『作業工房』。

ここでは箱庭を防衛するための部隊で使う武器や防具などの備品を製作するための施設です。


「ん?今日も来たのか、ミライ」

「ええ、来させていただきました。調子はどうですか、コテツ」

「ボチボチだな。ムサシのために前に大将が作られたというカタナを再現しようとしているんだがどうもうまくいかねぇ」

「カタナというと…あの曲刀のことですか」

「それっぽいのはできるんだが…鑑定するとカタナじゃなくてお前のいうように曲刀って表示されちまうんだ」


あの武器はリュウジ様も大変ご興味を抱かれていたと聞きました。

量産できるのならばお喜びになられるはず!


「是非量産体制を整えられられるように!」

「お、おう。わかった」


ふう。少し興奮してしまいました。

次の場所に行くとしましょう。


次に来たのは部隊の魔物たちが訓練し、己のスキルや技術を磨く場所、『訓練場』です。


「む、お疲れ様である、ミライ殿!今日も精が出るであるな!」

「ええ、カンベエ。訓練の様子は順調ですか?」

「おお!よくぞ聞いてくれた!不詳このカンベエ!ついに対亜人の魔物に有効な作戦を思いついたのである!今はそれに関する訓練をしているところなのである!」


ここで仕切っているのは『カンベエ』。

彼も私と同時期に進化したコマンドゴブリンです。

戦術において彼の右に出るものはこの箱庭にはいないぐらい優秀な人物なのですが、私は彼の暑苦しい性格が少々苦手です…。


「ほう。どのような作戦なのですか?」

「これまでの防衛戦から推測するに、奴等は集団で攻め込むよりも個々で別々に攻め込む方法を好んでいる。この習性を利用し1体ずつ確実に敵を倒していくという訓練を始めたのである!」


確かに亜人の魔物たちは大勢でこの箱庭を攻め込んできたことは1度もありません。

少人数の精鋭たちで各々に分かれて攻め込んでくることが多いようなのです。

そこに目をつけるとは流石はコマンドゴブリン。

戦術に長けた種族というわけですか。

さて、訓練の方も順調なようですし次は『病院』の方にでも…。


「敵襲ー!敵襲だー!」


む。

今日もまた懲りずに亜人の魔物たちがやってきたようですね。

今回も同じように返り討ちにいたしましょうか。


「ムサシ部隊は右からくる3体を!ガリレオ部隊は左からくる2体を対処せよ!リーダー格には手を出すな!」

「「了解!」」

「弓矢の補給を持ってきたぞ!」

「クロスボウの射線上には入らないようにしろよ!」


今私たちがは魔獣の調教者などという我らがリュウジ様に勝負を仕掛けてきた無礼者が差し向けてきた亜人の魔物たちで構成された部隊と防衛戦をしております。

本来ならば箱庭の持ち主同士が戦う防衛戦。

しかし、私たちにはミレイ様というがいらっしゃるのでそのような常識にとらわれる必要はない。

しかし相手も同じ状態なのでリュウジ様の素晴らしさが映えないのが悔しいところです。


「1体仕留めたぞ!」

「うぉおおー!我らがリュウジ様に勝利を!」

「全てはリンカ姫のために!」

「よし!残るはリーダー格のみだ!」


亜人の魔物たちの多くはリーダー格の魔物に引き連れられて攻め込んできます。

そのリーダー格たちは装備している武器や防具も高価なのでこちらとしても得になるありがたい話です。


「よぉし!皆の者!リーダー格は小生が仕留めるのである!下がっておれ!」

「うおぉ!カンベエさんが出るぞ!」

「みんな!道を開けろ!」

「頑張ってー!」


…カンベエが最後を飾るようですね。

少しその様子を見てみましょうか。


「むぅん!」


カンベエが大剣を振りかざす度に相手のホブゴブリンでしょうか。

がよろめいていきます。これは圧倒的ですね。


「これで終いである!」


…決着がついたようですね。


「小生らの勝利である!」

「「「「うぉおぉぉ!」」」」


「今回も無事に魔物を退けたそうね、ミライ」

「もちろんですわ。リュウジ様の部隊である私たちに敗北などありえませんもの」

「その通りよ。でもね、ミライ。だからといって慢心してはダメよ」

「承知しておりますわ」


この方はミレイ様。

この箱庭が作られたときに一緒に開発された従者型魔人形でありこの箱庭の総責任者たる御方。


「それはそうとそろそろ防衛機能を一新してもいいと思うの」

「防衛機能、ですか?」

「ええ。今のままでも調教師の手勢と十分に戦えてはいるけど万が一ってこともある。リュウジ様の所有物であるこの場所を引き渡すわけにはいかない。そうでしょう?」

「そのために防衛機能の一新ですか」

「今の防衛機能は堀と柵。それと見張櫓の3つ」

「それらを一新するとなると城壁レベルですか?」

「この際大きな城を建てるというのもいいかもしれないわね」


ここに巨城を構えるとなると…建材はどこから調達すればよいのでしょうか。


「まあまずは城壁のみでいいと思うわ」

「承知いたしました。ただちに建設チームを構成致しますわ」

「あ、そうそう。必要な資料があれば資料室に自由に入出することを許可しておくわ」

「本当ですか!」

「ええ、だからよろしく頼むわよ?」

「必ず成功させてみせます!」


この屋敷の資料室には古代文明の貴重な文化や技術がつまっている!

それを自由に閲読できるだなんて!

ありがとうリュウジ様!ありがとうミレイ様!

このミライ、必ず短期間で城壁を完成させてみせますわ!

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