第142話 動物の正体
「質問に答えよ!誰じゃお主はと聞いておる!」
「ケケーッケッケ!そう焦るなって!別に取って食おうとしているわけじゃねぇんだ、気楽に行こうぜ!」
急に現れた虎のような動物?は赤い猿のような顔をして、茶色い毛で覆われた体を持ち、虎みたいな足で黒い雲から降りて四足歩行で歩いていた。
うーん…どこかで見た気がするんだけど…。
「気楽だっつても俺様はお前らと戦うつもりなんだがな!この様子じゃあ魔属石ゴーレムとの戦いで結構消耗しちまってるみてえだな!ケケーッケッケ!」
「リュウジ様、ガドウ殿!ここは我々に任せてお逃げくだされ!」
「俺たちだけでどのくらい時間を稼げるかわからないっすけど、リュウジ様たちを逃すぐらいの時間は稼いでみせるっす!」
「いや、し、しかしな…」
何言ってんの!そんなことできるわけないでしょ!
「グルワァ…(見たところあやつは上位の魔族じゃ。ここにいる全員で挑んだとしても互角に持ち込めるかどうか…)」
「ふむ。見た目の割に随分と臆病なんじゃな」
「グル!?(お主、わしの言葉がわかるのか!?)」
「武人たるもの周りの状況や雰囲気を見極める力を鍛えておくのは当然のこと。たとえその相手が魔物であったとしても、じゃ」
なんかあっさりすごいことを成し遂げている気がするんだけど…。
テイムスキルを持っていなくても魔物と意思疎通ができるなんて並大抵のことじゃないよね…。
「己が勝てぬ強大な力を持つ相手に挑むときほど血の湧く瞬間はないわい」
「グルグワァ!(ふん!ならばその血の沸く瞬間とやらをワシも味わってみようかの!)」
ワ、ワイファーまで戦うの!?
「さあ早くお逃げくだされ!」
「…いいや、僕は逃げないよ!」
「何をおっしゃっているのです!?」
「みんなが戦ってくれるのに僕だけ逃げるなんて…カッコ悪いじゃない!」
「リュウジ様…」
「僕はみんなが勝ってくれるって信じてるからさ、みんなで一緒に帰ろうよ!」
僕たちは『グレイト軍隊』!
みんなで1つの冒険者パーティーなんだから!
「ケケーン!お前は魔物を従えるテイマーだったのか!しかもサブモンスター級の魔素量…ますます興味深ぇ人間族だな!」
「グルワァーー!!(今回も最初から飛ばして行くぞ!【白熊の吐息】!!)」
ワイファーの固有スキルである白熊の吐息が謎の動物に向かって放たれる!
「我らも熊公に続いて行くぞ!」
「承知!」
「行くブヒィー!!」
「「「おらぁ!」」」
その攻撃を皮切りに僕とガドウさんを除く全員が謎の動物に向かって走り出す!
「中々の攻撃だが…俺様には効かねぇな。ケケーン!」
ドンガラガッシャーン!
「ぬぉっと!」
「こ、これは…雷撃!?」
謎の動物の不思議な鳴き声があたりに響くと、丁度先頭を走っていたゴブノスケの目の前に雷が落ちてきた。
「こ、これじゃ迂闊に近づけないっす!」
「ブヒッヒッヒ…。そこは私の作品、ビーストマンにお任せあれブヒ!」
ビーストマンっていうと、ピグルズが生み出した豚印のあの大きな盾のこと?
「私の研究の成果をくらうといいブヒィ‼︎」
「学ばねぇやつらだな!ケケーン!」
ゴロゴロガッシャーン!
「ケケーン?避けた、のか?」
「いいや、確かに雷撃は私に直撃しましたブヒ。しかーぁし!このビーストマンの前に無効化されたのですブヒ!」
雷を通さないってことは…ゴムでできているのかな?
「ほーう。じゃあお前からまずは退場させないとな」
「ブヒィ?」
謎の動物は乗っていた黒い雲に飛び乗ると、上の方に旋回していった。
「こいつをくらいな!『ケケーン!!』」
「くっ!何だこの声!」
「き、気分が…」
あ、頭がズキズキする…。
『『どうやら、あの魔族が発した声に膨大な威圧感が乗せられている影響でこちらの身体に異常がみられているようです』』
鳴き声で身体に異常…。
いくつかの動物でできた身体…。
黒い雲になって雷撃で攻撃してくる…。
……あっ!あれだ!『鵺』だ!
『『……?』』
平安時代に出現した妖怪で、その不気味な鳴き声と雷風や疫病で人々を脅かしたという!
『『何でそんなに詳しいんですか?』』
爺ちゃんの家の倉庫に古代の妖怪図鑑みたいなのがあったからさ…。
「ふ、ふー。やっと頭痛が治ってきましたブヒ」
「流石は上位の魔族。ただの咆哮でもここまで威圧されるとは…」
「吾輩もまだまだ修行が足りないということですな!」
「どうした!1回の咆哮でもうお手上げなのか?」
「んなわけっ!」
威圧から解放されたワニュウドウ君がヌエに向かって斬り込んでいく!
「ケケーン?お前…俺様と同族だな?最近の魔族は人間族に手懐けられてんのか?」
「いいや、俺は自分の意思でこの方についていってんだ。余計な口出さないでもらおうか」
「ケケッ!この若造が…。言うじゃねぇか…!そこまで言うんなら自分の意思だということを強さで証明してみな!『ケケーン!!』」
「くっ!ウオォオォオ!」
やっぱり魔族同士は相手が魔族だってわかるもんなのかな。
ワニュウドウ君は咆哮と共に雷撃を放ってきたヌエに向かって大剣を構えながら走り出す!!
雷撃が当たる直前、ワニュウドウ君は構えていた大剣を投げ出して雷撃を防ぎ、咆哮の影響で頭痛がしているからか顔を苦痛に歪ませながら車輪の姿になってヌエに突っ込んで行った。
ボガァアン!
「ケケーン!?」
「しゃあおらぁ!」
よし!上手くヌエにダメージを与えた!
「イツツツツ…。どうやら大見得切れるぐらいの強さは持ち合わせているらしいな」
「どうだ!思い知ったか!」
「こりゃあ少しは本気を出しても大丈夫そうだな」
え!?さっきの攻撃はほんの小手調だったってこと!?
「俺様の速さに酔いな!【
ヌエが必殺技名みたいな言葉を叫ぶと体に紫色の雷を纏った。
こ、これはちょ、ちょっとや、やばいんじゃないの!?
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