第十五話 桜間ヒメの絶対時間
時は放課後。
現在、蓮は体育倉庫へと一人向かっていた。
その理由は簡単だ。
「なんで俺が、体育倉庫の掃除しないといけないんだよ」
ことの経緯は、クラス担任にある。
奴がこんな事を言ってきたのだ。
『体育倉庫の掃除担当二人がさ、今日偶然にも休みだろ? そこでおまえ……暇だろ?』
暇じゃねぇよ。
と、言いたいところだったが。
(本当に暇だから、何も言い返せなかったんだよな)
などなど。
そんな事を考えて居るうちに、やってきました体育倉庫室。
蓮は盛大にため息ついたのち、その扉を開――。
「あーもうっ! なんであたしが、掃除しないといけないのよ!」
中では、桜間ヒメ様が箒を振り回して荒ぶっていた。
そんな彼女は蓮に気がついていないに違いない――一人、言葉を続ける。
「天才のあたしは忙しいの! こんなクソ面倒臭い事してる場合じゃないんだからね!」
「…………」
「あーもう! ムカつくムカつく、むぅうううかぁああああつぅううくぅうううう!」
「…………」
「掃除なんて、他のクソ共にやらせなさいよね!」
ダンっ!
と、ついに箒を床に投げつけるヒメ様。
そして、その瞬間――今日最大の事件が起きた。
「…………」
「…………」
蓮とヒメ。
二人の目があった。
するとどうなるか?
簡単だ。
「あ、あんた――あんたなんでここに居るのよ!?」
と、指をさしてくるヒメ。
蓮はそんな彼女へと言う。
「あ、あんた?」
「あ、いえ……あ、あなたは蓮くんでどうしていらっしゃるここに?」
「はっ……全然、取り繕えてねぇぞ」
「う、うるさい! このダメ男!」
つかつかと、蓮の方へと近づいて来るヒメ。
彼女は蓮の傍までやってくると、ゼロ距離で言葉を続けてくる。
「ちょっとあんた! ここで見たこと、全部忘れなさいよね!」
「は?」
「あたしの性格のことよ! 普段猫被ってて、本性はこうだってこと!」
「あ~……おまえ、やっぱり猫被ってたのな――なんだ、昔と変わったのは学力だけか。なんだかまぁ、安心したよ」
「……っ」
と、何やら顔を真っ赤にするヒメ。
彼女は蓮を突き飛ばすと、そのまま出て行ってしまうのだった。
「蓮の……バカ!」
そんな事を言いながら。
うん。
「なんだあいつ?」
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