第二十話 狐の異変②

「なーに一人で喋ってるのよ?」


 と、言ってくるのはヒメだ。

 彼女は持っているジュースを、蓮へと投げ渡してくる。

 そして、そんな彼女はそのまま彼へと、言葉を続けてくる。


「っていうか、なにその顔? あんた、そんなに暗い顔してたっけ?」


「色々あるんだよ……考えることが」


「ふーん。知らないけど、あたしは元気なあんたの方がす、すすす――」


「?」


 何言ってんだこいつ。

 元気な蓮が酢?


 かつては幼馴染懐っこいキャラ。

 少し前は真面目委員長タイプ。

 そして、今は不思議ちゃん。


(忙しいなこいつ)


 まぁ、この年齢は多感で難しいお年頃。

 そんな事を、父が言っていた気がする。


 要するに、今のヒメがそうというわけだ。


 などなど。

 蓮がそんな事を考えていると。


「と、とにかく! 元気出しなさいよね!」


 と、言ってくるヒメ。

 彼女は何やら閃いたのか、少し考えた様子を見せた後に言ってくる。


「あ、そうだ! あたしが面白い話をしてあげるから、しっかり聞きなさいよね!」


「面白い話? 効果的な勉強の仕方とかは、勘弁だぞ。今そういう気分じゃ――」


「あんたの中で、あたしはどういうキャラなのよ!」


 ふしゃーっと、猫のように威嚇してくるヒメ。

 彼女はその後、蓮へと言ってくる。


「安心しなさい! 普通に世間話程度の軽い話だから」


「へぇ……で、どんなん?」


「ふ、ふ~ん! これはこの前、商店街を歩いて居た時の話なんだけど……」


 と、やたらと溜めを作るヒメ。

 そして、彼女は言ってくる。


「なんと! PCショップで、狐娘のコスプレしてる人を見たのよ!」


「…………」


「アキバ原でもないのに、珍しいでしょ?」


「あのさ、この前っていつ?」


「? えっと、普通に一昨日だけど」


 それはおかしい。

 一昨日なら、寝狐が寝込んでから数日が経過している。


 寝狐は部屋からも出れない。

 そんな体調の悪さなのだ。


(それなのに、PCショップに居た?)


 いったいどういう事なのか。

 まさか、あの身体でまだ蓮のために何かしているのか。


(確かめる必要がある、な)


 蓮は一人、そんな事を決心するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る