第六話 堕天の兆し③

 カチカチ。

 カチカチカチ。


「なるほど、これがゲーム」


 と、何やらふむふむ言っている寝狐。

 蓮はそんな彼女へと言う。


「まだ序盤で話も盛り上がってないけど、何かわかったの?」


「もちろんです。ゲームとは、人生を勉強するものなのですね?」


「……は?」


「ゲームが人生……今ならその言葉の意味がわかります。他人の人生を見ることが出来るものがゲーム――それならば、ゲームを沢山することすなわち人生!」


「…………」


 なんだか、よくわからない納得の仕方をされてしまった。

 などなど、蓮がそんな事を考えていると。


「ですが! これはあくまでシュミュレーションです! 蓮さん、このままでは人生間違えてしまいます!」


 と、至近距離から蓮へと言ってくる寝狐。

 なんでもいいけど、鼻と鼻がくっつきそうな距離なの勘弁して欲しい。

 けれど、寝狐は気にしていないに違いない――彼女はそのまま蓮へと続けてくる。


「よそはよそ! うちはうち! とも昔から言いますように、人生とは蓮さんだけのものです!」


「は、はぁ……」


「ゲームを参考にするのはいいです! けれど実際に動かなければ、参考にしたものを実践する場が――機会がやってきません!」


「うぐっ!?」


 さすがは神様。

 ものすごく心に突き刺さることを言ってくる。

 なるほど、たしかにそれは真理だ。


 けれど、リアルで頑張ってもどうにもならんこともある。

 と、蓮がそんな事を考えた。

 まさにその時。


「こ、これは――!?」


 と、驚いた様子の寝狐の声。

 なんだか、猛烈に嫌な予感がする。


 チラリ。

 と、蓮はゲーム画面を見る。

 すると、そこに映っていたのは。


 エロシーンだった。


 そういえば、このエロゲ。

 序盤にもエロシーン入っているのを忘れてい――。


「れ、蓮さん!」


 と、蓮の思考を断ち切るように聞こえてくる寝狐の声。

 なんにせよこれでゲームセット。


 寝狐はきっとドン引き。

 家から出て行ってくれるにちがいな――。


「な、なんですかこれは!? どういうつもりですか!?」


 と、怒っているのか顔を真っ赤にしている寝狐。

 彼女はそのまま、蓮へと言葉を続けてくる。


「こ、これは蓮さんにとって悪影響です! こんなものをやってはだめです!」


「あ、ちょ――っ」


 と、蓮はパソコンの前から追い出されてしまう。

 そして、次の瞬間。

 蓮にとって、想定外の出来事が起きた。


「まさかゲームがこんなものだとは……っ! 私がチェックする必要があります!」


 カチカチ。

 カチカチカチ。


 と、蓮を見て操作を覚えたに違いない寝狐。

 なんと彼女、エロゲを一人でプレイし始めてしまったのだ。


「あの、寝狐……さま?」


「こ、こんなシーンまで!? あ、あぁ……こんなっ――ふんふん、ふんふんふんっ……あ、ダメですこれは!」


 と、蓮を完全無視している様子の寝狐。

 うん。


「どういう状況だ、これ?」

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