第七話 狐娘の帰還

 あれから数時間が経った。 

 現在、寝狐は――。


「ふーむ、なるほど。この選択肢を選ぶと、このルートに入ってしまうわけですが……なら、ちょっと前のセーブポイントに戻れば……」


 未だにエロゲをプレイしていた。

 そんな彼女はなおも一人、言葉を続ける。


「やはり! これでこの子のハートは私のものです! さぁさぁ、来ましたよ――エロシーンです! さぁ、あなたの秘密を私に見せてください!」


 カチカチ。

 カチカチカチ。


「ふんふんっ! ふんふんふん……な、なんてハレンチな!」


 と、どうみても楽しそうな寝狐さま。

 蓮がそんな事を考えた。

 まさにその時。


 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ。


 と、聞こえてくる目覚ましの音。

 同時。


「ひぁあああああああああああああああああああああああっ!?」


 と、飛び跳ねる寝狐。

 彼女は蓮の方へ振り返って来ると、そのまま言葉続けてくる。


「な、なんですか!? 何の音ですか!」


「あぁ、ごめん。目覚ましかけてたの忘れてた――時々この時間まで寝ちゃうからさ、俺」


「め、目覚まし……はっ!」


 と、狐尻尾をピコンと立てる寝狐。

 彼女は慌てた様子で、蓮へと言ってくる。


「窓の外が暗い!? もう夜じゃないですか!」


「あぁ、大分やってたからね……ゲーム」


「こ、こうしては居られません! 蓮さんに晩御飯を作りませんと!」


 いや、それより帰ってくれませんかね。

 と、蓮が言いかけていると。


「う、うぅ……で、でも今ゲームが良い所で……し、しかし私の役目は……うっ」


 何やら苦しんでいる様子の寝狐。

 彼女はゲームをチラリ、台所をチラリ見ながら言ってくる。


「わ、私は蓮さんための狐娘……で、ですが……ですが、ゲームの世界ではあの子が私を待って……っ」


「えっと、寝狐……さま?」


「はっ! な、なんでもありません! なんでもありませんよ! さ、さぁ、作りましょう! あの子に会うためにさっさと――ではなく、愛を込めて蓮さんのために!」


 言って、袖をまくる寝狐。

 彼女は蓮が止める間もなく、台所へと歩いて行くのだった。

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