第五話 堕天の兆し②

 時はあれから数分後。

 場所はパソコンの前。


「『ドキドキ! 狐娘と一緒にこやんこやん~ラブイチャスクールライフ~』ですか……なるほど、これがゲーム」


 ふむふむ。

 と、蓮の横に座って画面を見ている寝狐。

 蓮はそんな彼女へと言う。


「ちょっと、近いんだけど……っていうか、声に出してエロ――おほん、ゲームのタイトル読まないで欲しんだけど」


「何故ですか? これは蓮さんの人生! 読まれて恥ずかしいものなのですか?」


「……うぐっ」


「それに、近寄らなければよく見えません!」


 と、ぐいぐい近寄ってくる寝狐。

 もう完全に肩と肩が触れ合っている。

 それどころか。


(うっ……顔も近い。女の子と触れあって来なかった俺には、この状況なかなかにハードル高い)


 だが落ち着け。

 寝狐は人間じゃない。

 神様だ。


 ん、あれ?


 人間の女の子より、神様の方が緊張するんじゃね?

 やめよう――この考えは無益だ。


「ささ、早くゲームとやらを見せてください! このまま『スタート、ロード、オプション、エクストラ』という文字を見つめるのが、ゲームじゃないですよね?」


 と、狐尻尾をふりふり急かしてくる寝狐。

 なんでもいいけど、尻尾がもふもふ当たるのがこそばゆい。


 もう覚悟を決めるしかない。


 この状況から逃げたいというのもあるが。

 考えて見ればもう一つ。


(さすがにエロゲ見せたら、ドン引きして帰っていくよな)


 神様にドン引きされるのは、少し嫌だが。

 蓮の日常を守るためなのだから仕方がない。


「じゃあ、今からプレイするから、見ていてね」


 と、蓮はスタートボタンをクリックするのだった。

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