第四話 堕天の兆し
「将来を捨てでも楽しみたいもの……俺の人生、かな」
「そ、そんなものがこの世界に……」
と、むむっとした様子の寝狐。
彼女はしばらく考えた様子を見せたのち、蓮へと言葉を続けてくる。
「蓮さん! そのゲームとやらを、私に見せてください!」
「え、なんで?」
「蓮さんはゲームを人生と言いました! なるほど、何かに人生をかけることは、とても素晴らしい事です……それは私も否定はしません」
「だろ? いやぁ、やっぱり間違ってないのか、俺の考え方は。やっぱり将来より――」
「ですが!」
ズビシ!
と、蓮の方を指さしてくる寝狐。
彼女は狐耳をぴこぴこさせながら、彼へと言葉を続けてくる。
「それが正しければです!」
「えっと、どういうことだ?」
「間違ったものに人生をかければ、人生そのものが――その人の将来もまた間違ったものになってしまいます!」
「だから、ゲームがどんなものか確かめさせろと?」
「その通りです! ゲームとやらが、正しいものならば……仕方ありません。私は引き下がりましょう――いくら恩人とはいえ、恩返しの押し売りをしたくはありませんから」
「…………」
うん。
普通に嫌だ。
その理由は簡単だ。
(たしかに俺、ゲームって言ったよ? でも、普通のゲームじゃないんだよ!)
蓮が言ったそれは、パソコンのゲームだ。
しかも、エッティなやつだ。
要するに。
エロゲだ。
(そんなん女の子に見せられるかぁあああああああああああああああ!)
っていうか。
女じゃなくても、見せたくない。
仲のいい男友達なら、ワンチャン見せてもいいくらいだ。
しかも、寝狐の見た目はかわいいと来た。
おまけに。
「?」
と、ひょこりと首を傾げている寝狐。
その瞳はものすごくキラキラしており、どうみてもピュアピュアだ。
こんな子に、エロゲを見せるわけにはいかない。
(っていうか、神様じゃねぇか! 神様にエロゲ見せるとか、背徳感やばすぎるだろ!)
こうなれば。
蓮が取るべき行動は一つだ。
「と、ところでさ――」
「話を逸らそうとしてもダメです! 私は蓮さんをより良い人生へと導くもの――言うなれば、蓮さんの守護天使狐です!」
と、狐尻尾をピコンと立てる寝狐。
彼女はそのまま、蓮へと言葉を続けてくるのだった。
「さぁ、ゲームを見せてください!」
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