第十八話 蓮は料理してみた

「我ながら、これはやばい……な」


 最初に言っておく。

 蓮は普段、料理はしない。


 朝、昼、晩。

 すべてをコンビニ飯、もしくはカップ麺で過ごす猛者だ。

 だがしかーし。


 なんとなく、冷蔵庫の中身を見てみると、そこにはあったのだ。

 昨日、寝狐が補充したに違いない食品の数々が。

 そこで蓮は思った。


 寝狐は体調悪くて、晩飯を作れていない。

 だから、今までのお礼に晩飯を作ってあげようと。

 それで出来たのが。


「油揚げはともかく、ぐちゃぐちゃの豆腐が入った味噌汁……爆発した目玉焼き……ちょっと焦げてる甘みそ味の肉……あと、粉々のキャベツ」


 控えめにいってこれ。

 クソまずそうだ。


 しかも、このエキセントリック料理を作るのに払った代償でかかった。

 と、蓮は自らの両手を見る。


「めっちゃ指切った……鬱だ」


 ま、まぁ大事なのは味だ。

 味見したが、それほど悪くはなかった。

 無論、寝狐の料理には及ばないが。


「ってか、うわ……もうこんな時間かよ? 気がついたら、帰ってきてから四時間くらい経ってるじゃねぇか」


 もうすぐ寝る時間だ。

 さっさと、寝狐を呼んで晩飯しなければ。


(っと、寝狐は体調が悪いんだ。持って行ってやった方がいいよな)


 考えたのち、蓮は料理をトレイへと載せる。

 そして、寝狐の部屋の前へと持っていき。


 コンコン。

 と、扉をノック。

 その後、蓮は寝狐へと言う。


「寝狐、起きてるか? 晩飯作ってみたんだけど……」


「う、うぅ……すみません、蓮さん。今、動けそうにありません……扉の前に、置いておいてくれれば……うぐぅ」


 と、よほどダメージを受けているに違いない。

 声色深刻そう過ぎて、どこか演技っぽい印象を受けるレベルだ。


(本当に具合が悪いんだな……やっぱり、昨日俺のために頑張ってくれたから――いや、落ち込むのは後だ)


 などなど。

 蓮は考えたのち、寝狐へと言うのだった。


「それじゃあ、料理はここに置いておく。よかったら、冷めないうちに食べてみてくれ」

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