第二話 お狐様襲来

「はじめまして、黒来蓮さん。私の名前は天宮寝狐。あなたの生活をよりよいものとするため、天界よりやってきた狐の神です」


 と、言ってくる少女。

 なるほど。


 バタン。


 と、蓮は扉を閉める。

 見た瞬間に理解した――あれはやばい奴だ。


 こんこん。

 こんこんこん。


 と、再び聞こえてくる音。

 蓮がそれでも全力でスルーしていると。


「蓮さん、こちらです」


 と、背後から聞こえてくる少女の声。

 いったい何が起きたのか。


「!?」


 蓮は即座に振り返る。

 するとそこに居たのは、やはり声の持ち主。


「任せてください、黒来蓮さん。勉学や日常生活……全て私がサポートし、あなたを人間界の頂点へ導きます」


 ニッコリ笑顔の少女。

 蓮は全力で後ずさり――背中を扉にぶつけながら、彼女へと言う。


「だ、誰だあんた! どうやって俺の部屋の入った!?」


「驚かせてしまって、申し訳ありません。もう一度自己紹介を――私は天宮寝狐。かつて、あなたの前世のお方に命を助けられた狐です」


「は、はぁ?」


「信じられないのも無理がありません。ですが、害意はありません――ようやく神になれたので、天宮の人間――あなたに恩を返しにきたのです」


 正直、意味が分からない。

 けれど、彼女――天宮寝狐はどうやってか、部屋に侵入してきた。

 それが神の御業だというなら、まだ納得できる。


 などなど。

 蓮がそんな事を考えていると。


「それにしても……いけませんね、これは!」


 ぴこぴこ。

 と、狐耳を動かしながら言ってくる寝狐。

 彼女は袖をまくりあげると、そのまま蓮へと言葉を続けてくる。


「周囲の汚れは心の汚れ! 蓮さん、このままでは駄目人間になってしまいます! 今回は私が掃除してあげますけど、次回から一緒に掃除をしましょう!」


「へ?」


「私、お掃除得意お狐なので、任せてください!」


 言って、ぱっぱか掃除を始めてしまう寝狐。

 まだ、彼女のことはよくわからないが。


(とりあえず、危険人物ではない……のか?)


 蓮は一人、そんな事を考えるのだった。

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