第十話 狐指導

「それでは連さん、そろそろ宿題に取り掛かりましょう!」


 と、言ってくる寝狐。

 彼女は蓮の傍に座って来ると、そのまま言葉を続けてくる。


「蓮さん、宿題が出ていますよね? 眠くなる前に、一緒にやってしまいましょう! 大丈夫です――私、お勉強つよつよ狐なので!」


「シュクダイ、デテナイヨ」


「嘘です! 神様はなんでもお見通しです! 数学の問題集をやる宿題と、古文の口語訳をする宿題も出ているはずです!」


「う……っ」


 さすが神。

 ただの家事勉強お得意狐でないのは、これでもう間違いない。


 だがしかし。

 宿題やるなど死んでもごめんだ。


(あんなもん、やるだけ無駄なんだよ。やるにしても答え写すだけだし、口語訳にしてもネットから引っ張って来るだけだ)


 完全に時間の無駄。

 部屋の掃除した方が、まだ有意義まである。

 故に、蓮は寝狐へと言う。


「だったらさ、ゲームしない? 寝狐もさっきのゲームの続き――」


「ダメです!」


 バンっと、机を叩いて来る寝狐。

 彼女はそのまま、蓮へと言葉を続けてくる。


「なるほど、ゲームに魔力があるのはわかります! ですが、それは危険な魔力です――さっきの私は、少しおかしくなっていました! そして、それこそがゲームが危険な証拠!」


「……やりたくないのか?」


「やりたくありません! 私は自制できる狐です! 無論、蓮さんにゲームを禁止するつもりはありません! ただ、やることやって欲しいだけです!」


「いや、それ……俺にメリットある!?」


「何を言っているんですか!? 宿題は将来のため――一つ一つ、噛みしめるように問題を解き、己の糧にできるものですよ!」


 ん、あれ?

 ちょっと待った。


「宿題やるって、答え写すんじゃないの!?」


「蓮さん……やはり私の未来視は間違っていなかったようですね」


 と、ジトっとした様子の寝狐。

 彼女はそのまま蓮へと言ってくるのだった。


「蓮さんの未来のため……私は蓮さんを全力で正して見せます!」

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