第九話 狐飯②

 現在、寝狐は食器を洗っている。

 そして、冷静になって思った。


(俺、女の子の手料理食べたの初めてじゃね!?)


 昔は妹がよく作ってくれたが……まぁ。

 妹は性別妹なので、女の子としてはノーカウントだ。


 それにしても、寝狐の料理は本当に惜しかった。

 けれど、問題点が一つ。


(そろそろ帰って欲しいって……なんだか、どんどんその流れに持っていくの難しくなってるよな)


 胃袋を掴まれたというわけではない。

 いやまぁ、掴まれつつあるのは確かだが。


(料理作ってもらって、後片付けもしてもらって――それで『帰れ』とか言ったら、俺が完全にクズだよな)


 蓮は自堕落方面にはクズを自覚している。

 しかし、性格クズにはなりたくない。


「うーむ」


「そんなに唸って、どうかしたんですか?」


 と、いつの間にやら近くにやってきていた寝狐。

 蓮はそんな彼女へと言う。


「お疲れ様。もう食器洗いは――」


「はい、終わりました! それに疲れていません! 蓮さんのためなら私、どんなことだってしますから!」


 ニコっととびきりスマイルを向けてくる寝狐。

 なんだか妙に恥ずかしい。


 っていうか、恥ずかしすぎてなんだか落ち着かなくなってきた。

 な、なにか言わなければ。


 などなど。

 蓮がそんな事を考えていると。


「それでは連さん、そろそろ宿題に取り掛かりましょう!」


 寝狐さま。

 そんな地獄の様な言葉を吐いて来るのだった。

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