第十一話 狐指導②

 時は勉強開始からおよそ二時間。

 現在――。


「よ、ようやく終わった……」


「はい! お疲れ様です、蓮さん!」


 と、言ってくる寝狐。

 彼女は蓮の頭をなでなで、そのまま言ってくる。


「問題集も完璧、口語訳も完璧――さすが蓮さんです! やはり蓮さんは、やれば出来る人でしたね!」


「いや……ぶっちゃけ、寝狐の教え方がよかっただけな気がする」


「そうでしょうか? でも、そうだと嬉しいです!」


「…………」


 実際、寝狐との勉強は苦ではなかった。

 むしろ。


(楽しかった……問題を頑張って解いて、わからなかったら教えてくれて――丁寧に、どんなに時間がかかっても、決して怒らないで)


 これならば、宿題をやってもいいかもしれない。

 無論、たまにならだが。


 けれどまぁ。

 それはそうとして……。


「はぁ……宿題終わったのはいいけど。明日も学校で勉強するとなると、なんだか鬱になるんだよな」


「蓮さんは、学校での勉強がお嫌いですか?」


 と、狐耳をぴこぴ寝狐。

 蓮はそんな彼女へと言う。


「学校の勉強も嫌いだけど、学校自体が嫌いかな――授業もつまらないし、友達もいないしね」


「そうですか……でも、少なくとも! これからは蓮さん、授業は楽しめるはずです!」


「なんで?」


「勉強していると、授業が理解できるようになります! そうなれば、授業によって自分の学力が増えるのもわかります! そうなれば、自然と楽しくなるものです!」


 そう、なのだろうか?

 まったくイメージできない。


 けれど、神である寝狐が言うならばそうかもしれない。

 それになにより、蓮には寝狐を信じたい気持ちがあった。


(生まれて初めて、勉強を楽しいと感じさせてくれた相手だしな)


 と、ここで蓮は気がつく。

 それは――。


(っていうか、俺ちょろすぎないか!? すっかり寝狐にいい印象もってる気がするし……まぁ、短時間でそれだけの事をしてくれたわけだけど)


 などなど。

 蓮がそんな事を考えていると。


「それに蓮さん!」


 と、尻尾をふりふりしている寝狐。

 彼女は自信ありそうな様子で、蓮へと言葉を続けてくる。


「話して確信しました。蓮さんはいい人です! とても優しくて、本当はとてもしっかりした人です!」


「……はぁ」


「だから大丈夫です、蓮さんには友達ができますよ! ……いえ、言い方を間違えました」


 と、ニッコリ微笑んでくる寝狐。

 彼女はそのまま、蓮へと言ってくるのだった。


「蓮さんと友達になりたい。そう思っている人は、きっと沢山いるはずですよ?」


「…………」


「私も蓮さんとお友達になりたいと思いました! ですから学校の皆さんにも、もうちょっと心を開いてみてください! 目指せ――友達百人です!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る