第二十二話 蓮と狐の秘密②

「何を……買ってきたの? 寝狐はどこに、行ってたの?」


「あっ……うぅ」


 と、目を逸らしてくる寝狐。

 蓮がそんな彼女へと、声をかけようとしたまさにその時。


「っ!?」


 なんと、寝狐が目の前から突如、消え去ったのだ。

 きっと、瞬間移動能力を使ったに違いない。

 いったい、寝狐はどこに――。


 バタンっ。


 と、聞こえてくるのは、扉が閉まる様な音。

 このタイミングから考えるに。


(寝狐だ。寝狐が俺の家に帰ったに違いない!)


 街中に逃げられていたら、完全にアウトだった。

 けれど、家に帰っただけならばまだワンチャンある。


 などなど。

 そんな事を考えたのち、蓮は即座に駆けだすのだった。



      ●●●



 そうして時は数秒後。

 場所は寝狐の部屋の前。

 現在。


「寝狐! ちょっと話したいだけだから、ここを開けてって!」


 蓮は寝狐の部屋へと入ろうと、扉を押し押ししていた。

 鍵はかかっていない……にもかかわらず、扉が開かない理由。

 それは。


「だ、ダメです! 蓮さんをこの部屋に入れるわけにはいきません!」


 と、扉の向こうから聞こえてくる寝狐の声。

 きっと、彼女が扉を抑えているに違いない。


 そして、蓮は同時にふと気がつく。

 何かがおかしいと。


(寝狐の口調も行動……全然体調が悪そうじゃない!?)


 そもそも、蓮の想定している寝狐の体調。

 それを考えると、扉を抑えるなど出来るはずがないのだ。

 なんせ、喋るのもやっとだったのだから……なのに。


「入ったら後悔しますよ! 蓮さんは絶対に後悔しますとも!」


 と、過去最高ハイテンションな寝狐。

 やはりこれを捨て置くのは無理だ。


 蓮はそんな事を考えたのち、さらに扉へと体重を乗せる。

 すると。


「うぅ……くっ――も、もう限界、ですっ」


 と、聞こえてくる寝狐の声。

 瞬間、ついに扉が開け放たれるのだった。

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