第十三話 蓮は登校してみた
事件は数学の時間に起きた。
その事件とは――。
「じゃあ、この問題を……黒来、前でてやってみろ」
と、言ってくるのは教師だ。
蓮は時々思う。
教師は鬼だ。
みんなの前に出て、黒板を使って問題を解く。
そんな公開処刑を、どうして成績不良者にやらせるのか。
(授業の進行的にも、成績優秀者にやらせろよな……ちっ)
と、蓮はそんな事を考える。
しかし、それでどうこうなるわけではない。
蓮は教師に届くように、全力でため息ひとつ。
その後、クソ怠いアピール全開で黒板の前まで歩いて行く。
「わからなかったら、みんなに聞きながら解くように」
と、アドバイスにもならないアドバイスを言ってくる教師。
どうやら、蓮は覚悟を決めるしかないに違いない。
「…………」
こうして、蓮は黒板に描かれた問題。
それを解き始めた……のだが。
(……あれ、なんだこれ?)
いつもは象形文字にしか見えない黒板の文字。
それが意味のある数式に見える。
要するに。
問題がわかる。
どういう答えに持って行って欲しいのか、理解することが出来る。
(なんだ、これ?)
蓮は戸惑いつつも、チョークをはしらせていく。
…………。
………………。
……………………。
そうしてしばらく。
最後に問題の答を書き込む。
すると。
「黒来、正解だ! なんだおまえ、やれば出来るじゃないか!」
と、機嫌よさそうな教師の声。
同時、教室から聞こえてくるどよどよとした声。
そんな中、教師は再び蓮へと言ってくる。
「席にもどっていいぞ、黒来。あと、やれば出来るなら、今後もちゃんと勉強してくれ――先生、応援してるからな!」
「は、はぁ……」
言って、蓮は自らの席へと帰還。
そして思う。
(今の問題……クソ簡単だったよな?)
けれど、普段の蓮なら解けたとは思えない。
思い当たる理由は一つ。
(……寝狐のお土産、ちょっと奮発してやるか)
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