3-9
「プチ 私 舜と旅行行ってくるね お泊りだけど」
「おお 覚悟決めたのか」
「そんなんじゃぁないけど 場合によっては、もう、いいかなって思ってる」
「可愛いの 身に着けて行けよ もちろん、俺は行けないけどな 幸せにしてもらいな」
車で行くので、近くの公園まで来てもらうことにした。家の者に会わすのは、まだ、抵抗があったのだ。
「チッチの体力が無いので、坂の上からしか見送れないよ」と言うプチに見守られて、坂道を降りて行った。天気も良く、暖かい日だった。瀬戸内海の牛窓のオリーブ園に行くという予定だ。舜の会社では、取引が無いんだけれども、うまく行けば、挨拶程度はするつもりだと言って居た。待ち合わせの時間通りに舜は来てくれて、乗り込んだ。
「家の人には、泊まるのなんて言ってきたの?」
「会社の人と遊びに行くって 私、そんなこと、今まで無かったから・・ お母さんが、しくこく聞いてきてね、あんまり、賛成じゃぁなかったみたい でも、初めて、うそついちゃった」
「それは、申し訳なかったね それより、泊まりなんて、君がよく承知してくれたと思ってさ でも、後悔させないようにするから」
「いいのよ それより、楽しみ 行ってみたかったんだ 日本の地中海でしょ」
「うん 今日は天気が良いし、海もきれいだと思うよ」
有料道路とかを走って、お昼前に一本松の展望園という所に着いていた。
「昼ごはんでも、食べようか 景色もいいところだからね」と、言って、車を停めた。遠くに海が見えるけど、展望園と言うわりにはなぁと、私は、少し、不満だった。と言うのも、もっと車から走る景色に海を期待していたんだけど、これまで、山ん中が多くって少し、うんざりしていたからだ。と、言うより、私、車ってあんまり好きじゃぁ無いみたいって初めて感じた。お昼もあんまり、食べたいものもなかったし、夜のご飯に期待していたので、ハンバーグとコーヒーだけにした。
それでも、オリーブ園に着いた時には、素敵って思っていた。瀬戸内海の島もはっきり見えるし、海も光っていた。たくさんのオリーブの樹が植わっていて、実はもう収穫が終わったのか数個しか付いていなかったが・・それでも、下草もちやんと管理されているので、歩きやすくって、私は走りまわっていたのだ。写真も撮りまくっていた。
「すずり そんなに、走ると転ぶよ 時間はあるんだから、ゆっくりね」
「うん でも 開放的で、素晴らしいわ ひとつひとつの樹の表情も違うのよ 楽しくって」
「なんか 猫が野っぱらで遊んでいるみたいだよ」
私が、散々楽しんだ後、ヨットが並んでいる港の側にある白壁のホテルに入った。そろそろ夕陽になろうかという時間で、何だか、本当に外国の港町に来たような風景だった。
部屋に入って、二人きりになると、私は少し緊張したけど、窓の景色に見とれてしまって、窓際に駆け寄っていた。後ろから、抱きしめられて
「すずりはきれいだよ 食事まで、散歩に行こう」と、ささやかれて、口を塞がれた。私は、もう、ぼゃーっとしていたのだ。
「今日はね 夕陽が綺麗だよね こんなとこでヨットに乗る人ってどんな人達だろうね」と、外に出た歩き始めた時、、私は腕を組んでいった。
「金と時間に余裕がある人だろうな でも、僕には、すずりという宝物がある」
「舜は本当に上手ね そういう言い方」
夕食は、テラス席で簡単なバーベキューと地中海風の料理ということだった。最初に数切れのお肉、牡蠣、海老と野菜がバーベキュー用に用意してあった。じゃぁワインにしようかと言って乾杯したけど、口当たりが良くって、この時は、私は、気をつけなくっちゃと思ったんだけど・・。そのうち、鯛の香草ソテー、小さな牡蠣のココットが出てきて、もう、お腹がいっぱいだったけど、最後にパエリァが出てきたのだった。それまでも、私、ワインをお代わりして飲み過ぎていたみたい。
「舜 もう、お腹満足だし、おいしかったから、飲み過ぎたみたい」
「うん いっぱい食べたね コーヒーでも飲むか?」
「ううん もう、満足 お腹、苦しいくらい」
「そうか じゃぁ 部屋に行って 休憩するか」
部屋に行くとき、舜は私の肩を抱くようにしてくれて、ふらふらと帰った。
「お風呂に入るかい?」
「ううん しばらく、ベランダに居る 動けない 先に、入ってー」
「そうか、じゃぁ 先に行くよ 寝ちゃわないようにね 風引くから」
「うん 気持ち良いの」
舜は、冷たい缶コーヒーを持ってきてくれて、先にお風呂に行った。だけど、私は、頭の中では、いよいよなんかー どうしょうと、考えていた。風が心地よくて、少しうとうとした頃、舜があがってきた、バスローブ姿だった。それだけで、私、ドキドキしてしまって・・。
「大丈夫? 寝て居ない? サッパリしたよ」と、言って、冷蔵庫からビールを取り出していた。
「ちょうどいい感じ 風が気持ちいいわー たまに、遠くに船が通るのね」 舜は横に椅子を並べて、私の肩を抱き寄せてきた。私は、されるがまま、舜の肩に顔を傾けたていた。
しばらくして、私は、決心して「お風呂入ります」と、言って舜のホッペにチュッとして向かった。用意してきた下着を持って。湯舟に浸かると、又、酔いがまわってきたみたい。でも、念入りに洗って、髪の毛も洗った。
酔いに任せてという訳では無かったが、私は、思い切って、腰の部分が大きなリボンになっていて、胸元もリボンになっている下着を着けて、バスローブを着て舜の前に出て行った。ちょっと、恥ずかしかったので、誤魔化すために髪の毛を乾かしていた。舜は知らんぷりをして、外を眺めているふりをしていた。仕方ないので、私は乾かし終えると、舜の膝に乗るようにして、抱き着いて行ったのだ。
「ごめんね 長かった?」
「いいや いい香りがする 石鹸の 今夜は、二人の特別な夜にしてもいいのかな」
私が、答えるかわりに、小さくうなずくと、唇を合わせられて、抱いてベッドに連れていかれた。その夜、私は、舜のものになったのだ。でも、終わった後、何となく幸せを感じていて、朝まで舜に抱き着いていたのだった。
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