1-10

 12月に入って、響先輩にお買い物に付き合ってと誘われていた。


「プチ 今日は 私が、助けてって、言うまで手を出さないでね お願い」


「なんで すずりちゃんに、ちょっかい出してくる変な奴は許せないじゃん」


「うん 有難いんだけど、今日は響先輩と一緒だし、この前のこと、なんか、おかしいって、まだ、疑っているんだよ だから、私が、助けてって言うまで・・お ね が い」


「わかったよ おとなしく、見守っているから」


 私達は、先に、ビァレストランで食事兼ねて、少し飲むことにしていた。


「すずりちゃん 下の階のリッコ(Ricco)って知っているでしょ あそこの社長の早坂さん、まだ、若いんだけど・・見たことあるでしょう?」


「ああ 多分 でも、良く、知らないですけどー」


「そう すずりちゃんって、ぜんぜん、男の人を無視しているものね 目に入んないんだ 私ね、朝、ちょくちょく一緒になるんだ。2回ほど、ランチもごちそうになったわ 30近いけど、独身よ、とっても紳士だし、面白い人よ」


「そうなんですか 先輩 彼氏 婚約者居るのに―」


「あらっ ぜんぜん、変な関係じゃぁないわよ 普通 まぁ、それは良いとしてね この前、早坂さんから、すずりちゃんの話が出てね 一度、話したいんだって 会っても、頭下げるだけで、話し掛けられない雰囲気なんだって 前はね、どこか影があるって思っていたんだけど、最近、表情も明るくなったって それは、私も感じていた。 可愛いから、なんとか、知り合いになりたいってよー どうする?」


「そんなこと、言われても 突然だし」


「じゃぁなくて あなたが、あの人のことどう感じているかよー」


「ええ 丁寧で、優しそうな人だと思います」


「そう じゃぁ 一度、お話してみればー ランチでも」


「でも よく、知らない方ですしー」


「そんなこと言ってるから 彼氏できないのよー そのままじゃぁ、一生、独身のままょ そんなに可愛いのにもったいないわよ」


 私達は、お店を出て、三宮の商店街を歩いていた。響先輩の目的は、ランジェリーのお店だった。彼と一緒に暮らし始めるから、最初の夜にドキドキするものを着て見せるから、買いに来たんだと言っていた。勇気を出して、少し派手なのを買うので、付いてきてほしかったのって言うことらしい。


 お店に入って、先輩は白くて胸元がレースで全体がふわっとしたものを選んでいた。


「すずりちゃんにも買ってあげる。可愛いの選んであげるから」


「先輩 私 そんなの いいです」


「いいわよ 必要になるから あなた、自分じゃぁこんなの買わないでしょ デートの時は、見せるんじゃぁ無くても、自分が可愛くなるんだからね」


 と、サイドが大きなリボンになっていて、レースで飾られているブラセットを買ってくれた。可愛いけど、こんなすごいの、身に着けたことが無い。


 別れて、帰りの電車で、プチが


「一度 会ってみれば良いじゃあないか 知り合うだけでも、身になるよ」


「そうねぇ 悪い人じゃぁ無いと思うから」


 私は、駅を降りると、自然とあの店の前を通って、帰って行った。正直、もう一度、あの人のやさしそうな微笑みを見たいと思っていたのかも知れない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る