3-3
約束してしまったので、ご飯を作りに行くことになった。
「本当にいくのかよー 男の部屋だよ 俺は、行かないよ 変なことになったら、耐えられないからな」
「変なことってなによー 守ってくれないんだ」
「自己責任でやってくれ」
「いいよー 舜はそんなことしないもん」
「その割には、いつもよりすごい下着つけてたじゃぁないか 期待しているのか」
「そんなことはないわよー プチ 見てたなぁ―」
ストローハットに花柄のノースリーブのワンピースで出掛けようとしたけど、陽ざしが強く、薄いカーディガンを取りにいった。神戸の駅に着くと舜が迎えに来てくれていた。
「カニ玉の天津飯と鶏団子のスープってどうかしら」
「うん いいねぇ そういうの久しぶり」
「おうちに行く前にどこかで買い物できる?」
途中で買い物をして、歩いて10分ほどで着いた。11階建ての8階だという。
「狭くて、申し訳ないが」と言っていたが、部屋ん中はひんやりしていた。確かに中は細長くて、そんなに広くない感じ。キッチンも狭くて、ここで作れるかしらと戸惑った。とりあえず、カーディガンを脱いで持ってきたエプロンを着けた。
「可愛いね すずりは、何を着ても素敵だよ そのワンピース姿も、きれいだよ」
「ありがとう 褒めてもらうと、やっぱりうれしいわ」
買って来たものを冷蔵庫に入れようとしたら、中は卵とチーズだけで後は、ビールばっかり、そして少しの調味料。
「舜 お料理しているの? ビールばっかり」と中をのぞいていたら、後ろから、抱きしめられて
「外食が多いからね とりあえず、ビールで乾杯しようよ 料理はゆっくりで良いから」
「うーん 下ごしらえだけね 舜は飲んで待ってて」と、身をかわしてたのだ。
お米を研いで、鶏団子の下ごしらえだけして、何にも突き出しが無いので、レタスとトマトにごま油だけかけて
「なんにも、おつまみ無くてごめんなさい」と、言って、長椅子のソファの隣しか座るとこ無かったので、グラスを持って舜の隣に座っていった。
「いや 僕が、悪いんだから 気を使わないでいいよ いつも、そうやって何か作るの?」
「うん お父さんが飲み始めるとね なんか、出してくれって、言うのよー お母さんもお仕事で疲れているだろうからね そんな風に躾られちゃった」
「そうか 親孝行してるんだ」
「大したこと無いよ 普段、好き勝手させてもらってるもん」
一杯だけ軽く飲んで、私は、準備にかかったが、机もせまく、食卓の上で何とかしたが、あまり、食器類もないみたい。それでも、ようやく食べられるようになったのは、3時を回っていた。
「うん うまいよ すずり 上手なんだね」
「ありがとう 安心したわ 食べてもらえて 他人に食べてもらうのって初めてなの」
「いやいや お世辞抜きでおいしいよ」
「そう でもね 舜 調理器具も食器も少なくて、苦労したわ」
「そうか それはすまない こんなこと、初めてだし 何が要るのかわからないしな そうだ 今度、買い出しに付き合ってくれよ 必要なもの」
「ねぇ それって 又、作りに来いってこと?」
「そうだよ 駄目かい? いいでしよ?」
「嫌じゃぁ無いけど・・ こういうのって、お付き合いしている状態でしょうか」
「僕は、前から、そのつもりだよ すずりのことが好きなんだから」
抱きしめられて、キスをされ、身体が動けなくなってしまった。そのまま、奥の部屋に連れられて、ベッドに倒されてしまっていた。その時、背中のジッパーを下げられるのを感じて、
「嫌 やめて― こういうの嫌です お願い」ようやく、声が出せた。
「そうか すまない」と、離してくれた。
「ごめんなさい 私 そんなつもりで、来たんじゃぁ それに、そんな関係でお付き合いするのは・・ でも、舜のことは好きです」
「わかった 僕が悪かった 君をもっと大事にするよ」と、舜は謝ってきたので、私は、なんだか、舜のホッペにチュッとして、「トイレ借りるね」といって、駆け込んだ。恥ずかしかったのだ。
私は、顔とか服装を整えてから出て行った。
「ごめんなさいね 私、まだ、融通きかなくて 嫌いになった?」
「とんでもないよ 君は、素敵な女性だよ ますます好きになった」
「ありがとう 嫌われなくて、安心した」
「これから ハーバーランドのほうに散歩に行こうか 夕焼けもきれいになるから」
「うん 行こう 行こう」
本当は、抱きしめるだけなら、ずーっと、そうしていて欲しかったんだけど・・。わざと私の胸にあたるように、舜の腕を組んで歩いていた。
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