「開け」
異能を乗せた声が響き、世界が赤く染まる。そこは現世と幽世の狭間。
容喙声音を操る探偵と共感応を持つ少年助手が、哀しき怨霊と対峙する──
” 共感応 ” とは、相手の感情を受信してしまうという能力。
その能力を持て余している服部少年は、探偵樹神の元で力のコントロールを学びつつ、探偵助手をしている。
舞い込むのは怪異絡みの案件ばかり。洒落たスーツをパリッと着こなす樹神先生は、今日も気障ったらしいお辞儀で美しき依頼人をお出迎え。
異能調香師である百花の力も借りつつ、二人は問題解決に乗り出すのだが……
童謡に関連した怪異というのがおもしろ怖い。(童謡って、怖い歌多いですよね)
過去の事件も絡み合い、徐々に謎が深まると共に少年の悩みも深まっていく構成に引き込まれる。不甲斐ない自分に苛立ち蹲っていた彼が、心を開き迷いを捨てて歩み出す姿は号泣必至。壮絶な過去と驚愕の真実を乗り越えた「彼ら」に拍手を送りたくなる。
垂涎の名古屋グルメや、樹神先生のちょっと胡散臭いカッコよさ、癒し系美女な百花さんの和装ファッションにもご注目! 見どころ、笑いどころ、泣きどころ満載の、優しさ溢れる感動作です。
あと、名古屋弁ってなんかいいですね。
実在の街を舞台にしながら、オカルトを扱うという、一瞬ミスマッチに思える取り合わせですが、名古屋をよく知っている私からすると、神社とか昔の遊郭とか病院とか、ちょっといわくつきな場所(施設名は伏せてあるがモチーフとなるものはある模様)を実際に登場させたりして、そこに潜む怪異と対峙します。
誰もが知っている童謡やおまじないをキーワードにして、隠された怖い意味を掘り下げてみたり、幽世の描写はホラーテイストも混じっていたりしますが、爽やかな探偵さん、随時登場する名古屋飯テロも出てきたりして、そこまで怖くはありません。
描写力は相変わらず丁寧で、読む側にストレスを与えない筆致で、しかしながら、これまでの陽澄ワールドとはまた違う新しい素材と完成度の高さに、驚嘆せず入られないでしょう。
名古屋を舞台とした現代ファンタジーはあまり見ないのではないでしょうか?
名古屋に縁がある人はもちろんのこと、ない方にもぜひ読んでいただきたいです!
舞台は名古屋、樹神(こだま)探偵事務所。
探偵・樹神先生の助手として働く男子高校生・服部(はっとり)くんの視点で物語は進んでいきます。
探偵事務所に舞い込んでくるのは、この世ならざるものが関わる不思議な依頼、怪異事件ばかり。
それぞれ異能の力を持つ樹神先生と服部くん、そして和装美人の百花(もか)さんも加わりながら、事件を解決に導いていくのです。
章ごとに異なる怪異事件を追う構成。が、どうやらそれぞれの事件には繋がりがあるようで――?
体質が原因で心に闇を抱えた服部くんは高校生。つまり思春期真っ只中。彼は下を向きたくなったり、逃げたくなったりしながらも、少しずつ成長していきます。
その過程は丁寧に描写されていて、ときには共感し、ときには見守るような気持ちで読み進めていくことができました。
実際に服部くんのそばで彼を見守る二人の大人、樹神先生と百花さんもとても魅力的です。
思わず吹き出してしまうような楽しいやりとりをするいっぽうで、彼らなりの悩みもあり、それがとてもリアルに感じられました。
また全体的に、怪異の存在を示すような仄暗い雰囲気と、名古屋の独特な温かみを含む地方訛りが絶妙にマッチしていて、素晴らしいです。
各話のキーワードや描写にも深みがあって素敵なのですが、そちらはぜひ本文を読んで震えてください。
怪異事件の解決、名古屋名物による飯テロ、心にぽっかり穴が空いてしまった少年の成長。
どれをとっても楽しめること間違いなし。おすすめです。
洗練された東京とも、コテコテの大阪とも違う、独自の文化を育んできた名古屋。
そんな日本のミステリーゾーン名古屋を舞台に、ちょっと(どころじゃない)感受性の強い青年「服部 朔」が、怪奇事件専門の探偵「樹神 皓志郎」と共に、現実と非現実のあわいに存在する怪異に立ち向かう!
ホームズ×ワトソン型のバディもので、超強力な助っ人美女も登場!名古屋メシもてんこ盛り!みんな大好きなやつだがや!
そして、連作短編の形で進む物語に横串を通すのは、主人公服部少年のとある思い出。果たして次々と起こる一連の怪異の裏側にある事件の真相、そして服部少年との関係とは……?
さてさて、この主人公の服部少年なんですが、感受性が強すぎるあまりに、本来知覚できないものを知覚しちゃうという特殊な体質を持ってるんですね。
それがまぁ、普通の人と距離ができる原因になっていて、孤独を感じて生きてきているんですけど、そんな服部少年が、理解ある大人たちと出会い、自身を苛む特殊な力「共感応」を使って難事件を解決することで、自分自身や過去とも向き合い成長していきます。
共感応とまでは言いませんが、人と違うってだけで疎んじられる人ってやっぱり現実にも結構います。普通とは違うから周りはそれを理解してくれなくて、自身も理解されることを諦めて、多感な思春期を鬱屈して過ごした人も少なくないはず。特に創作界隈には(←個人的なイメージ)。
ナンバーワンじゃなくてオンリーワンとは言うけれど、オンリーワンだからって幸せとは限らない。個性という単純な言葉で片付けられるほど人間は単純じゃない。そんなパーソナリティと、人は、自分はどう向き合えばいいのだろう。
服部少年の背中を追っていると、そんな気にならずにはいられませんでしたねぇ。
服部朔(はっとり・はじめ)、高校生を主軸に据えた、探偵事務所の樹神(こだま)先生、そして、なんて素敵な百花(もか)さんの深く掘り下げられた者達が立ち回り、暴れる悪戯な霊魂を鎮めようとする物語です。
中でも服部少年の成長は見事に描かれております。
それは最後に背伸びした位かなとも思えましたが、劇的に変わると言うのは、憑依でもされない位無理なことなので、難しいと思います。
先ずは、表題のカラーですが、キャラクターのカラーが出ていると言う意味のカラー、そして、作中に現世から幽世に行く際の真っ赤な世界に名前に茜が入っていたりなど、カラーを意識して構成されており、まるで、曼荼羅のようなイメージを抱く程に、美しく尊厳さえも感じました。
そして、マチエールは、服部少年は、弓と矢の素材のような凛とした感じ、先生は糊の上に砂を撒いたざらっとした感じ、百花さんは、香が焚きしめられた古い着物に可憐なブラウスとで、抱かれたら胸元で息もできない綿の感じがいたします。
所で、様々な事件を無事解決して来る大筋が面白いのですが、飯テロも忘れてはなりません。
じゃあ、服部少年、あそこへ行こうと、名古屋の美味しい所を巡ることで、グルメツアーができました。
ごちそうさまです。
おかわり。
食べ物や土地名など、名称を少しもじってあるのもユニークでした。
大分脱線いたしましたが、本作は、子ども達が口ずさむ歌を題材にしております。
詳しく知らなかったり、忘れてしまっていたりするのを思い起こせました。
そして、今日からは、怖いと思うようになると同時に、助けを呼ぶなら、あちらですねともう決めてあります。
さて、あちらとは何方でしょうか。
三人の能力は、皆別々です。
一人欠いても上手く行かないときもあります。
共感応をエンパスと呼び、これが服部少年の当たりスキルです。
服部少年は、過去に失くしていた哀しい想い出を持っております。
それを乗り越えられるかは、最終的には自分自身です。
がんばって、偉かったと思います。
スケールの大きくもありますが、情などは繊細に丁寧に書かれており、作者様のいい筆致で描けております。
少しだけ怖いですが、恐れることはありません。
力強い、彼らがいるのですから。
作品世界にダイブしてみては如何でしょうか。
他人の感情を我がことのように受信する、共感応――エンパスという能力を持つ高校生・服部朔は、名古屋の雑居ビルで探偵業を営む男・樹神皓志郎とともに、非現実の世界で起きた事件の調査を行っています。異能調香師の和装美女・百花の手も借りながら、現実世界とは階層が異なる幽世で、事件を解決していくうちに……名古屋で頻発している事件に関連性が見え始め、主人公たちを大きな事件へと導いていきます。
人に害をなす怪異の怖さ、美味しそうな名古屋めし、温かみのある方言……本作の見どころはたくさんあります。中でも私がおすすめしたいのは、他者の心が己に筒抜けになってしまう体質ゆえに、他者とも己とも適切な向き合い方に難儀している主人公・服部くんの成長です。
声に特殊な能力を持つ樹神先生や、ふんわりとした雰囲気でありながら独特の色気を持つ百花さん、それから事件を通して出会った依頼人の予備校生、服部くんの妹に、その友達……多くの人たちと関わりを持つ中で、その時々の感情を心の栄養に変えて、いつしか前を向いて進み始めた服部くんの成長には、目覚ましいものがありました。エンパスという特別な体質ではなくとも、自他との関わり合いに苦悩した経験を持つ多くの方々が、彼の葛藤に共感できるのではないかと思います。
読み終えた時、幸せな読後感に包まれました。多くの登場人物たちのさまざまな感情に共感できた、素晴らしいお話でした。
名古屋を舞台に、童謡に纏わる怪異譚の数々。
そういった事件を特殊な能力を持つ探偵と助手が解明していく、連作短編形式のお話です。
主人公の男子高校生・服部朔は、己の持つエンパスなる能力に苦しみ続けた結果、大変自己肯定感が低い子に育ってしまいました。
こうなるのも仕方ないな……と納得できるほど悲しい背景が彼にはあるのですが、その能力をコントロールする術を教えてくれた探偵、樹神皓志郎先生の側で助手として様々な怪異に触れる内に、少しずつ成長していきます。
もうね、その姿を母のような気持ちで見守ってしまいましたよ。ずっと俯き加減だった彼がゆっくりと顔を上げて前を向いていく様を、気付けば心から応援していました!
また遭遇する怪異の裏には、恐怖以上に悲しみややるせなさなどが満ちています。
それもそのはず、『相手』は我々と同じ『人間』なのですから。
たとえ朔のような能力がなくても、我々にも『共感』できる。相手の痛みを苦しみを、どうにもできなかった後悔を、自分のもののように捉え、様々な感情が揺り動かされるはずです。
読み終わった後、切なさと共に、もっと誰かに優しくなりたいという気持ちが芽生えているのがその証拠。
そして最後に一つ注意を。
このお話の飯テロ、本当にやばいです!
食後だろうと夜中だろうと、確実にお腹が空きます!!
その点だけは皆様どうかお気を付けて(笑)
名古屋駅から私鉄で二駅ほど。ちょっと離れた場所にあるその探偵事務所は、ふつうの事件は扱わない。
樹神(こだま)探偵事務所。そこは怪異な事件のみを扱う特別な探偵事務所だ。
所長の樹神探偵は、ちょっと気障な洒落者。カッコつけが空回りしている。
助手の服部少年はまだ高校生。その能力は不安定で、能力者としても半人前。いろいろと悩みも多い。
この二人が、それぞれの霊的な能力をもちい、この世とあの世の狭間の怪事件を解決してゆく。
物語は、連作短編形式。「かくれんぼ」のように人が消える失踪事件や、「あめふり」の歌とともに人が神社の階段から突き落とされる事件を追う探偵と助手。だが、やがてこれらの事件の影に、それらを繋げる一本の糸が見え始め……。
いずれの事件もこの世とあの世の狭間に謎があり、生者と死者のしがらみが怪異を呼ぶ。その生と死を分かつように、物語に挿入される名古屋飯も魅力のひとつ。
生と死を隔て、生きることの象徴である飯を腹いっぱい掻っ込み、ご当地名物のお菓子を頬が落ちるまで堪能する。生きることは食べること。生きるために食べる。
ここに描き出されるのは、生と死であり、ホラー&ミステリーである。
と同時にこれは、生と死があいまいな黄昏の世界にのめり込みつつ、それでも自分を探し、自らの居場所を得ようとあがく一人の少年の成長の物語でもある。
名古屋に実在する場所を舞台にしつつも、現実世界とは一線を画す妖の事件を追う樹神探偵と服部少年。
現世と幽世の狭間で起こる不思議な事件を解決できるのは、この探偵と助手だけである。
物語の導入は誰もが耳にしたことのある童謡。
そのメロディーに導かれるように不思議な事件が発生します。
それを解決するのは怪異を専門に扱う探偵の樹神先生。
ハンサムなんだけれど、かなり残念な性格という変わり者。
そんな樹神をサポートするのが、主人公、しっかり者の高校生の朔(はじめ)君。
もうこの二人のコンビネーションが抜群に楽しませてくれます。
さらに朔くんは他人の感情をそっくりわが身に受けてしまう特殊能力の持ち主。
もちろん樹神先生もただものではありません。
さらにさらに妖艶な和服美人のモカさんも登場し、大変にぎやかな顔ぶれとなっています。
物語はそれぞれが独立した短編が連作としてつながっています。
どのエピソードにも人の感情がまざまざと描かれ、読み応えがあります。
基本的にはホラーなのでしょうが、それ以上に人間ドラマがしっかりと描かれているのが本当に素晴らしいと思いました。
読みやすい文章と雰囲気のいい語り口、物語を盛り上げていく抜群の構成力はこの作者様の持ち味で、今回もいかんなく発揮されていました。
そしてなんといっても読後感の良さ! エンディングを読み終えた時の満足感みたいなものが本当にいいんです。
そうそう、この物語のもう一つの魅力は名古屋グルメですね。
名古屋グルメにはあまり縁がなかったのですが、名古屋に移住したくなりました。
ホラーの雰囲気たっぷりに、個性的な師弟コンビが活躍する、とにかく読んで楽しい物語です。
ぜひとも読んでみてください!
他者の心の感情をまるで自分の身に起きたかのように受信してしまう主人公の服部 朔。
彼は知る人ぞ知る、ちょっと通常の依頼とは異なった事件を解決するという『樹神探偵事務所』で助手をしていて——。
ひと癖もふた癖もありそうな、先生・樹神探偵に、謎の雰囲気を醸し出す和服の美人。
巡り歩くは怪異奇譚と名古屋の美味しいグルメ。
もうこの緩急が堪らないのです。
夕刻に読めば、物語の雰囲気、柔らかな名古屋の方言、夕焼け空と名古屋グルメの匂いに読者が誘い込まれそうな物語の数々。
人々を薄明かりの向こうへ引き込むのは、誰もが知っている童謡でもあって……。
現世と幽世、誰そ彼とわからぬその狭間の世界。
怪異に関わりつつ、十七歳の少年らしい心の揺らぎや葛藤を抱えながらも服部少年が前に進んでいく姿には、読んでいるこちらが心の底から応援し、また共感して共に歩みたくなります。
彼の心に、怪異事件に、"彼は誰時"は訪れるのか。
それはあなたのその眼で……しかと見届ける事をオススメします。
まだまだ続きを見たくなるような、とても素敵な物語です。
―—怪異を専門に扱う『樹神探偵事務所』。
その所長で特殊な能力を持つ樹神皓志郎。「共感応」という能力を持ち、助手をしている服部朔。異能調香師という妖艶な和服美女・百花。
彼等三人を軸に物語は進んで行く——。
日々持ち込まれる難解で、怪異を伴った不思議な事件。それらは、わらべ歌にリンクしているという。「かくれんぼ」「かごめかごめ」「あめふり」「指切り」に因んだ各怪異事件。
謎を追っていると、日常から非日常へと突然転移する。その場所は夕焼け空に似た赤い不思議な世界。そしてその場所は、行き場のない、悲しみや苦しみが念となって襲い掛かってくる幽世と現世の狭間の世界だという。
各話に隠された謎を紐解いていくと、それは決して憎しみだけでは無い。悲しさや苦しみの感情が混在している。それらを解き放つ為に、彼らは特殊な能力を駆使して奮闘している。
独特の語り口調と、丁寧な文章表現。練り込まれた怪しげで、どこか儚く感じる世界観。登場人物の描写が秀逸で、魅力的な各人物の息遣いまで伝わってくるようです。
内容は連作短編。ホラー&ミステリーでもあり、ヒューマンドラマでも有ります。
各冒頭では、ゾワリと来るような恐怖が存在しているが、エンディングでは、心に染み入るような感覚が待ち受けています。夕焼け小焼けの茜色の空の下。味わい深い名古屋の方言。食欲をそそる名古屋メシ。まさにノスタルジー溢れる物語に吸い込まれていきそうです。
読後、物語からくる強烈なエンパスを貴方はキッと感じ取るはずでしょう……!
タイトルでお分かりの通り、名古屋という場所を舞台にしたこちらの物語。
探偵事務所の助手を務める高校生の服部朔君が主人公となります。
その探偵事務所に持ち込まれるものは実に不可思議な依頼。
怪異によって引き起こされた事件を所長である樹神先生、そして儚く美しい魅力を湛える美女の百花さんともに服部少年は自らの持つ力『共感応』を用いて解決へと向かうことになります。
若いがゆえの葛藤。
本来は持たざる力を持ってしまった悩みを抱きつつ、彼は時に苦しみ、時に己と向きあいながら事件を通じて出会っていく人々との交わりを経て少しづつ、でも確実に前へと進んでいきます。
様々な出会いや経験を通じ彼が何を手にしていくのか?
何を知っていくのか?
こちらの作品を読み終えた後に、彼と共にその答えを知り、思いに浸る経験を是非皆さまにも体験していただきたく思います。
あらすじや本編の面白さについては、先にレビューされている皆さんの紹介が秀逸で面白さが保障されているので、別の切り口でお薦めポイントを。
とにかく読みやすい構成。大きなエピソードを章として、章の一話目に事件の当事者に起こった出来事が描かれ、主人公たちの登場は二話目からというパターン。エピソードが大きなひとつの事件の塊となっているので、事件発生から解決までを一気に読めるのですが、全ての章を通しての大きな事件のつながりもあり、一つの事件が終わったら全てスッキリとはならず、続きが気になって次々にページを繰る感じになります。
読了したときに自分が十万文字以上を読んでるという感覚がなかったです。面白い体験は時間が経つのが早いのと同じように、面白い作品は長さを感じさせないというのを実感した作品。むしろもっと読みたいとさえ。今作はわらべ歌がモチーフでしたが、別モチーフでもシリーズ化して欲しいと思いました。
怪異ホラー要素としてはなんとなく気味が悪いという感覚の系統なので、ホラーが苦手という方も読めるのではないかと思います。人間ドラマの要素がかなり強く、人の心の弱さと強さの描写も見どころです。
こちらの作者さんは読ませる物語を書くのがお上手なのですが、今作もとても面白かったです!
生者であれ死者であれ、他人の感覚を自分のように感じてしまう共感能(エンパス)を持つ男子高校生の服部 朔は、幼い頃から自身の能力に悩み、苦しんできました。
彼はひょんなことから怪異的な事件を解決する探偵事務所でバイトすることになり、樹神(こだま)先生の助手として様々な事件に遭遇します。
こちらの作品は連作短編という形で書かれていますが、全体を通してきちんと起承転結の流れになっている所が秀逸。
事件に遭遇する度に服部少年は相手に共感し、悩み、そして頼りがいのある樹神さんと百花さんという大人二人に導かれて少しずつ成長していきます。
最終章での服部少年の活躍に胸が熱くなるのは、これまでの章の積み重ねがあったからこそ。
誰もが知るわらべ歌をモチーフにした導入で読者をぐっと引き込み、事件の全容が紐解かれていくに連れて明らかになる、人間たち(怪異達)の弱さや苦しさには服部少年同様共感せずにはいられません。
怪異を扱う為、ゾワッと背筋が震えるシーンはあるものの、どの事件も最後はきちんと綺麗に落としてくれるのでとても気持ちのいい読了感を得られます。
一見胡散臭い(?)イケオジ探偵と少年のバディもの、読み応えのある作品を読みたい方におすすめの一作です!
読了後、泣き過ぎて茫然としていた自分がいました。
ああ、最高な物語……!!
この作品は、不可思議な怪奇事件を名古屋にある探偵事務所が解決していく短編構成のお話となっています。
この短編構成というのもかなり読みやすいですし、物語の面白さから次々に読み進めてたくなる本作です。その面白さから大興奮しすぎて、うっわコメントしたい!!けど続きを一刻もはやく読みたい!!!とすっごい葛藤している自分がいました。
そんな冷静さを掛けさせてくれるこちらの物語、まーーた登場人物もほんとーに魅力的で。
主人公は服部くんという高校生で、探偵事務所のオーナーな伊達男、樹神先生の助手として働いています。そして、その脇には百花さんという、これまたかっこよくて優しい和装美人な女性が控えており、この3人を主軸としてお話が進んでいきます。
様々な怨霊たちとのバトルシーンも圧巻でもうめちゃくちゃピリピリとした空気感が読者である私にも伝わって来て、ハラハラドキドキなんです!
不思議な世界のお話のようにも見えますが、令和時代ならではのすっごく納得の行く物語が練られており、めちゃくちゃリアリティがある展開、戦闘で、ファンタジーや架空の物語を普段読まれない方にもすっごくおすすめしたいです!
そして各章のラストには必ず涙、という。どの章もマジで大泣きしてましたが、特にラストの章は後半ずっと右手にティッシュ握りしめて読んでました。
敵である怨霊たちもほんとに魅力的で、その隠された真実に思わず涙。
とにかく各人物それぞれに抱え込んでいるものがあり、共感の嵐に見舞われました。泣くしかないやん……
興奮しすぎてはちゃめちゃなレビューになりましたが、これが言いたかったんです。とにかく読んでえええ!!!
今作は主人公の服部少年の一人称で進んでいきます。
だからこそ、彼の見たもの感じたものがダイレクトに伝わってきます。気付いたときには彼の心と「共感」してしまっているのです。それは作者・陽澄さんの技量もさることながら、服部少年自身が思わず応援したくなるような等身大の少年だからなのでしょう。
一方で物語は、読み易い短編連作の形で進んでいきます。四つの短編からなる物語ですが、すべてが繋がっていて、いつの間にやら長編の様相を呈していきますから、読み応えも抜群です。
そして名古屋メシ。各章に必ず登場する名古屋メシは、どれも絶妙なリアリティで描かれていますから、馴染みのある方には共感を呼び、食べたことのない方はきっと食べてみたいと思うこと請け合いです。
樹神探偵事務所で助手をしている主人公、服部朔は共感応の特殊能力を持っている。そんな彼が、雇用主である皓志郎と調香師・百花と三人で依頼のあった怪異事件の調査に乗り出し、事件を解決してゆくミステリー調現代伝奇。
現世と幽世の狭間を往復したり、生霊や死霊が出てきたりするが、薄気味悪い、後味悪いレベルなのでホラーが苦手な方でも問題なく楽しめるエンタテインメントだと思う。
死霊の怨念や生霊の思いが渦巻く世界観。
そんな中、朔は己がどうあるべきかを問い掛け、一歩一歩歩き出す。
さり気なく入ってくるB級グルメの飯テロあり。
最初から最後まで通して読むと、全て繋がっているという仕立て。
全体的に読みやすい構成で、気が付くとあっという間にすらすらと全話読めてしまう。
夢枕獏の「陰陽師シリーズ」がお好きな方にオススメ。