童謡に導かれ、怪異の赤い世界の扉が開く……

物語の導入は誰もが耳にしたことのある童謡。
そのメロディーに導かれるように不思議な事件が発生します。

それを解決するのは怪異を専門に扱う探偵の樹神先生。
ハンサムなんだけれど、かなり残念な性格という変わり者。
そんな樹神をサポートするのが、主人公、しっかり者の高校生の朔(はじめ)君。

もうこの二人のコンビネーションが抜群に楽しませてくれます。
さらに朔くんは他人の感情をそっくりわが身に受けてしまう特殊能力の持ち主。
もちろん樹神先生もただものではありません。
さらにさらに妖艶な和服美人のモカさんも登場し、大変にぎやかな顔ぶれとなっています。

物語はそれぞれが独立した短編が連作としてつながっています。
どのエピソードにも人の感情がまざまざと描かれ、読み応えがあります。
基本的にはホラーなのでしょうが、それ以上に人間ドラマがしっかりと描かれているのが本当に素晴らしいと思いました。

読みやすい文章と雰囲気のいい語り口、物語を盛り上げていく抜群の構成力はこの作者様の持ち味で、今回もいかんなく発揮されていました。
そしてなんといっても読後感の良さ! エンディングを読み終えた時の満足感みたいなものが本当にいいんです。

そうそう、この物語のもう一つの魅力は名古屋グルメですね。
名古屋グルメにはあまり縁がなかったのですが、名古屋に移住したくなりました。

ホラーの雰囲気たっぷりに、個性的な師弟コンビが活躍する、とにかく読んで楽しい物語です。
ぜひとも読んでみてください!

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