おそらく作者様にとって初めてのSF長編かと思います。
これまではミステリーの中に巧みに感動的なドラマを埋め込んできた作風が印象的でした。
そして今回は個人的にも好きなジャンルのSFときました。
もちろん期待して読みましたとも!
読み終えたときは満足のため息とともに、この作者さんは期待を裏切らないな、としみじみ思いました。
今回は登場人物も舞台も全く違う二つの世界が同時に描かれていきます。
一つは天才科学者の守泰の住むアカデミックな世界。
もう一つは詞音が暮らす田舎の学校生活。
この二つがどう繋がっていくのか、最初から興味津々なのですが、ここにさらりとSFの要素が紛れ込みます。
それは文字化けしたメールなのですが、ここに世界を動かすような秘密が隠されていたのです。
もうね、この感じが絶妙でくすぐるんですよ。
とにかく続きが気になるし、物語の全貌が知りたいと思うんです。
徐々に明かされていくメールの内容。
二つの世界が描かれていた秘密。
なによりもSF設定のギミックの緻密さと、大胆なアイデアに驚きました。
そんなこんなをドキドキしながら読みすすめ、二人の物語を夢中になって追いかけていった先に、作者の必殺技ともいうべき濃密なドラマがどっしり待ち構えているのです。
この作品がミステリーである以上、あまり詳しく書けないのがもどかしいのですが、とにかく面白くて読み応えのある作品です。
二つの世界を交互に書きつつも、どちらもしっかりとした物語であるのが何気にすごいのもポイント。
そして二つの世界が交わった時のカタルシスは小説ならではの醍醐味ではないでしょうか。
ぜひ読んでみてください!
読み始める前、主人公二人(語り手)がエピソードごとに交替するシステムだということで、最初は大丈夫かなと思ったのです。
頻繁な視点の交替で没入感が損なわれてしまう作品を、何度も読んだことがあるからです。
でも、何故でしょう?この作品にはそんな不満が全く起きなかった。
科学者男性とまだ学生の少女。全く違うポジションにいる二人の物語が、エピソードごとに全く違う世界で進行しているのに、交替するごとにすっと没入してしまうのです。
もしや、私にも憑依の才能が?(笑)
恐らく、どのエピソードも起承転結がきちんとされた上で、前回の流れを瞬時に思い出せるような見事な構成であることが理由でしょう。
本格的なSFでありながらわかりやすくユーモアを交えて解説してくれたり、陰キャだった少女・詞音が成功していく道筋など、見応えたっぷりに物語が進行していきます。
二人の物語が交わり始める瞬間の感動といったら…!
愛と夢がたっぷり詰まった、美しくも熱いヒューマンドラマです。
ぜひ、広大な宇宙と人々の愛に想いを馳せながらお読みください♬
宇宙物理学の研究者を目指す青年・安居院守泰(あぐいもりやす)は、あるとき「未来の自分」からのメールを受信する。
いじめられっ子の女子中学生・閘詞音(ひのくちふみね)は、演劇部のヒロイン候補に抜擢されたことがきっかけで、演技の才能に目覚めていく。
それぞれの人生を生きる二人の道が交差するとき、世界規模の大問題が発生し、大勢の人間を巻き込んでいく――。
本作の素晴らしい魅力を、レビューでどう表現するか、非常に迷いました。というのも、守泰と詞音、双方の人生が交互に描かれた物語には、胸が躍るような仕掛けがふんだんに盛り込まれていて、何を書いてもネタバレになってしまいそうだからです。
宇宙で瞬く星々のように散りばめられた点と点が、作者様の手腕で一本の線に繋げられたとき、驚きの真実が浮かび上がってきます。
その真実とは、一体何なのか。そして、その真実を知ったとき、彼らはどんな行動を起こすのか。
ぜひ、研究に打ち込む守泰の奮闘と、女優の道を突き進んでいく詞音の姿を通して、真実を確かめてみてはいかがでしょうか。ラストシーンにたどり着くとき、きっと切なくも温かな感動に包まれるはず。おすすめです。
これは愛の物語。
一見して関係なさそうに見える学生と科学者。
読み進めて行けば、ただ場所が違うのではないと気づかされる。
よくある絶望の未来を回避する展開だが、絶望排除で未来は救われるという簡単な話でもない。
物事は単純ではないと作中でも如実に表している。
愛に正しい間違いはないが、愛し方一つで未来が変わるのならば、愛する故に離れる選択を取る。
創作に定番のご都合主義なんてないのが、味のあるリアリティーを押し上げてくる。
確かにこれは創作であるが、目的、演技にしろ宇宙絡みにしろ、模索して試行錯誤して、時に失敗してと様々な試行錯誤と模索と、飽きさせない。
科学的な話も多いが、そういう流れで読めるので、なんとなく理解できる作品である。
カクヨム界において、常に異彩を放ち読む者の心を揺さぶる小説を描き続けておられる作家、銀鏡怜尚氏。
新作は『SF』であるとうかがい、思わず「ムムッ!」と唸りました。
いわゆる空想科学小説です。
怜尚氏がSFとは……ファンであれば俄然興味を持ちます。
しかしタイトル「時空を超えて 慈愛を込めて 想いよ届け」を目にしたとき、今度は「ムムッ?」と首を捻ってしまいました。
だって、怜尚氏の御作品はこれまではどれもタイトルが洒脱で秀逸でしたもの。
あっ、いえ、決してこの度のタイトルが肩透かしであるというわけではなく、違和感を覚えてしまっていたのです。なんだか違うのではないかなあと。
ところがどっこい、さすがは怜尚氏です。
やはりタイトルには深い意味があったのです。
読了された時に、「なるほど!」と思わず膝を叩くこと請け合いです。
前置きが長くなりました。
今作は舞台が異なる二つの物語が交互に展開されていきます。
このあたりのテクニックはさすがです。
ノンストレスで読み進めることができます。
音楽の転調と呼ばれる技法に重ねられます。
ひとつは宇宙物理学者を主人公とし、もう一方は演技の道を進む女子中学生を主役としています。
まるで接点のない二人がどのようにして一つの壮大な物語を歩んでいくのか、そこが
見どころです。
ファンタジーのように作者の脳内だけで創造された世界観ではありません。
実際の物理学や宇宙工学、そして舞台芸術論や演技論まで勉強なさりそれを物語のバックボーンとされていると想像できます。
リアリティがそこにはありますから。
それだからこそ読み応えがあり面白いのです。
二つの物語が交錯してくる後半は、読んでいて手に汗を感じ、自身の鼓動が耳奥で鳴ってくることがわかります。
また、キャラクターそれぞれが本当にいい仕事をしています。
二十六万文字強の超弩級の物語ですが、とにかく感動のラストにはむせび泣きます。
ハリウッド版スケールのSFとなれば、どなたにもお薦めできる銀鏡怜尚氏渾身の小説、ぜひぜひ、ご堪能ください。
本作は二人の主人公の視点が交互に進む、壮大なSFです。
理工学部に通う大学四年生・安居院守泰は、差出人と宛先が自分という奇妙なメールをもらいます。それも何十件も。
文字化けしたメールに添付されたのは、不鮮明な映像や音声が多くなってしまっている映画らしきものでした。いたずらにしては手の込んでいるメールに残された僅かな糸口も、ネットで拾い上げることはできませんでした。
一方、中学生の女の子・閘詞音は、名前がきっかけで苛められていました。苦痛に耐える詞音に、舞い降りる転機。年齢も目指したい道も違う、守泰と詞音の人生に引き込まれていきます。
それぞれの世界が交錯するとき、張り巡らされた伏線の数々に圧倒されます。
登場人物の名前が難しすぎてついていけないかも……という方もおられるかもしれませんが、読み切った先の満足感がきっと癒しになります。あきらめずに読了されてください!
是非お読みいただきたい、わたしのイチオシ作品です!
銀鏡怜尚さんらしい、読者を飽きさせないストーリー展開で、長編ですがきっとあっという間に読めてしまいます。
文章は読みやすく、登場人物も混乱なく分かりやすいです。
そしてなにより、今回は2つのストーリーが交互に展開して進んでいくというカットバック形式が本当にとても上手く使われており、これが最後の感動を大きくするという効果に繋がっていると私は感じました。本当に素晴らしい作品だと思います!
このお話は、科学者の安居院守泰(あぐいもりやす)と演劇に打ち込む閘詞音(ひのくちふみね)がそれぞれ主人公として交互にそれぞれの世界で物語を展開していきます。
守泰の方は、宇宙物理学の研究者を目指している理科大学生で、ある日差出人が自分という不思議な文字化けメールを受信するところからはじまり、それがきっかけで始めた研究が注目を浴びていくという流れでストーリが進んでいきます。
そして詞音の方は、中学校でいじめられていましたが、ある日いきなり演劇の主役をして欲しい頼まれるところからはじまり、逆境の中、演技の才能を開花させ、どんどん周りに認められていくというような流れでストーリが展開します。
このふたりが展開する物語、最初は全然絡みの無い物語として展開するのですが……
ラストは感動してうるうるきました!
一体どういう内容なのかは、是非銀鏡さん文章を直接読んで頂きたいです!
魔法や超能力なんて一切必要ない。そんなものが無くても十分読者を満足させてくれる、これはそういう壮大なSF物語です。
この物語は二人の人物の視点から、それぞれの境遇が語られ、やがて壮大な一つの物語へと変化していく複雑な過程を経る。しかし、作者様の筆力と構成力によって、複雑な印象はなく、分かりやすく読みやすい一作となっている。
主人公の大学生は、友人に小説を書くように勧める。この友人はこの小説で作家としてデヴューし、主人公は大学院へ進む。そんな主人公の下に、文字化けしたメールが届く。それは送られてくるはずのない所から送られていた。主人公は作家となった友人に、このメールの読解を依頼する。そこには人類存亡の危機と、主人公の大切な人たちの悲惨な末路が示されていた。主人公はこの危機を回避するため、奔走することになる。
もう一人の主人公は苛めを受ける女子高校生だ。主人公はある日、演劇部の部長からスカウトを受けて劇のヒロインに抜擢される。そこにはプロ級の腕を持つメイク担当の少女や、主人公のライバル的存在の少女が在籍していた。しかし主人公が役を「憑依」させるという才能を開花させることにより、主人公は俳優への道を志すことになる。しかし、主人公の母親は頑なに俳優への道を閉ざそうとする。一体何故?
この一見、何の接点もない二人の主人公。
しかしこの二人が邂逅する時、世界はピタリと繋がり、全貌が明らかになる。
作者様ならではの構成と筆力。そして圧巻の知識量と物語。
この作品の魅力は、小生の筆致では書ききることは到底できません。
是非、是非、御一読下さい!
将来有望な宇宙科学者・安居院と、いじめられっ子の女子中学生・詞音。
全く接点のない二人のストーリーが交互に展開していく、カットバック形式のお話です。
「未来の自分」から衝撃的なメールを受け取った安居院は、地球に危機が訪れる未来を変えるために奔走を始めます。
一方、ひょんなことから演劇部に入った詞音は、演技の才能に目覚め、女優への道を志します。
科学、宇宙、映画、演劇……と、少しずつ共通点が見え始め、二つの話の繋がりが判明するころには、この物語にすっかり引き込まれていました。
横浜、熊本、ワシントンD.C.にバルセロナ。
実在の都市を舞台に、地球の——愛する人たちの暮らす星の運命を左右する分岐点を探す、壮大なストーリー。
キーとなるのは、宇宙をテーマとした一本の映画でした。
大胆かつ緻密な、システマティックかつエモーショナルな人間ドラマが描き出すのは、血の通った登場人物たちの信念と生き様、そして愛です。
彼らの取った選択肢が、どんな未来へ繋がっているのか。
作者さまの知識と構成力に唸りつつ、祈るような気持ちで連載を追っています。
ぜひあなたも一緒に、この世界の命運を見届けましょう!