SF×ミステリー×ヒューマンドラマが渾然一体に流れる!

おそらく作者様にとって初めてのSF長編かと思います。
これまではミステリーの中に巧みに感動的なドラマを埋め込んできた作風が印象的でした。
そして今回は個人的にも好きなジャンルのSFときました。
もちろん期待して読みましたとも!
読み終えたときは満足のため息とともに、この作者さんは期待を裏切らないな、としみじみ思いました。

今回は登場人物も舞台も全く違う二つの世界が同時に描かれていきます。
一つは天才科学者の守泰の住むアカデミックな世界。
もう一つは詞音が暮らす田舎の学校生活。

この二つがどう繋がっていくのか、最初から興味津々なのですが、ここにさらりとSFの要素が紛れ込みます。
それは文字化けしたメールなのですが、ここに世界を動かすような秘密が隠されていたのです。

もうね、この感じが絶妙でくすぐるんですよ。
とにかく続きが気になるし、物語の全貌が知りたいと思うんです。

徐々に明かされていくメールの内容。
二つの世界が描かれていた秘密。
なによりもSF設定のギミックの緻密さと、大胆なアイデアに驚きました。

そんなこんなをドキドキしながら読みすすめ、二人の物語を夢中になって追いかけていった先に、作者の必殺技ともいうべき濃密なドラマがどっしり待ち構えているのです。

この作品がミステリーである以上、あまり詳しく書けないのがもどかしいのですが、とにかく面白くて読み応えのある作品です。
二つの世界を交互に書きつつも、どちらもしっかりとした物語であるのが何気にすごいのもポイント。
そして二つの世界が交わった時のカタルシスは小説ならではの醍醐味ではないでしょうか。

ぜひ読んでみてください!

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