わらべ歌に誘われて開くは狭間の門。共感覚のシンクロの先に見たモノとは?

 ―—怪異を専門に扱う『樹神探偵事務所』。

 その所長で特殊な能力を持つ樹神皓志郎。「共感応」という能力を持ち、助手をしている服部朔。異能調香師という妖艶な和服美女・百花。
 彼等三人を軸に物語は進んで行く——。

 日々持ち込まれる難解で、怪異を伴った不思議な事件。それらは、わらべ歌にリンクしているという。「かくれんぼ」「かごめかごめ」「あめふり」「指切り」に因んだ各怪異事件。
 謎を追っていると、日常から非日常へと突然転移する。その場所は夕焼け空に似た赤い不思議な世界。そしてその場所は、行き場のない、悲しみや苦しみが念となって襲い掛かってくる幽世と現世の狭間の世界だという。
  
 各話に隠された謎を紐解いていくと、それは決して憎しみだけでは無い。悲しさや苦しみの感情が混在している。それらを解き放つ為に、彼らは特殊な能力を駆使して奮闘している。

 独特の語り口調と、丁寧な文章表現。練り込まれた怪しげで、どこか儚く感じる世界観。登場人物の描写が秀逸で、魅力的な各人物の息遣いまで伝わってくるようです。
 
 内容は連作短編。ホラー&ミステリーでもあり、ヒューマンドラマでも有ります。

 各冒頭では、ゾワリと来るような恐怖が存在しているが、エンディングでは、心に染み入るような感覚が待ち受けています。夕焼け小焼けの茜色の空の下。味わい深い名古屋の方言。食欲をそそる名古屋メシ。まさにノスタルジー溢れる物語に吸い込まれていきそうです。

読後、物語からくる強烈なエンパスを貴方はキッと感じ取るはずでしょう……!

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