ここにある想いが強ければ、人は捩れた願いさえ正していける。

 この物語は、他人の想いに翻弄される異能を持った主人公が、自分の中の強さに気付くまでの物語。主人公は名古屋の有名進学校に通いながら、探偵(先生)の助手として働いている。先生には他人に干渉する声の異能があった。そんな探偵事務所に舞い込んでくるのは、ちょっと怪しい事件ばかりだ。
 行方不明の予備校生は、かくれんぼの声を聞いた。ある神社では、犬の日に妊婦さんばかりが階段で転ぶ。その前兆には「かごめ、かごめ」の歌が聞こえていた。そして童謡「あめふり」では女子高校生が……。次々に起こる事件を、主人公と先生、そして調香師の女性が、解決していくが、そこには昔の名古屋の遊郭が関わっているようだった。そして明かされたのは、調香師の女性に関する秘密だった。
 そして主人公はかつて、守られなかった約束を思い出す。主人公は病院で、少女と指切りげんまんしていたのだが、その記憶を消されていて⁉

 この世とあの世の隙間は、今日も開かれ、迷える魂は声に導かれてあるべき場所へ帰っていく。そこに寄り添うのは、強い共鳴をもつ少年と、気高き香りの女性。

 名古屋という場所の歴史、その土地ならではの神社など、知らないことが沢山伏線として張り巡らされており、とても読み応えのある作品でした。また、思い返せば誰でも知っている歌やおまじないが、こうして作品に取り込まれているものを初めて拝読し、オリジナリティの高さをうかがえます。また、誰にでもある人間の弱さと強さを同時に扱っており、霊にまで感情移入させるような設定で、最後に希望を見出だせる仕掛けも脱帽ものでした。

 是非、御一読下さい!
 

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