日常の端々に潜む怪異と少年の成長。そして、名古屋メシ。

今作は主人公の服部少年の一人称で進んでいきます。
だからこそ、彼の見たもの感じたものがダイレクトに伝わってきます。気付いたときには彼の心と「共感」してしまっているのです。それは作者・陽澄さんの技量もさることながら、服部少年自身が思わず応援したくなるような等身大の少年だからなのでしょう。

一方で物語は、読み易い短編連作の形で進んでいきます。四つの短編からなる物語ですが、すべてが繋がっていて、いつの間にやら長編の様相を呈していきますから、読み応えも抜群です。

そして名古屋メシ。各章に必ず登場する名古屋メシは、どれも絶妙なリアリティで描かれていますから、馴染みのある方には共感を呼び、食べたことのない方はきっと食べてみたいと思うこと請け合いです。

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