本作は、作者さまの『なごや幻影奇想シリーズ』の短編です。ご存知の皆さまは、お馴染みの面々と嬉しい再会を果たせます。シリーズを未読の皆さまも、ご安心ください。本作からシリーズに足を踏み入れる方でも、物語を存分に楽しめます。
主人公・服部朔くんのアルバイト先は、非現実の世界で起きる現象を専門に扱っている探偵事務所。今回の事件の依頼人は、服部くんと同じ部活に所属している女子の先輩です。
先輩の愛犬が亡くなってから、今まで知らなかったはずの童謡が、繰り返し聞こえるようになる――先輩の日常生活を蝕んでいく怪奇現象という謎は、やがて服部くんたちの調査によって、徐々に繙かれていきます。そして、彼らの目で謎の答えを模索していた読者たちを、思いもよらない真実が眠っている場所まで、鮮やかな文章で導いていきます。
この短編で描かれた「死」に触れたとき、表裏一体の「生」を強く意識しました。酷薄なテーマを真っ向から見据えているにもかかわらず、筆致はとても柔らかで、登場人物たちの言葉からも、真摯な慈愛が伝わってきます。
そんな優しさの中に通った一本の芯が、「死者を弔う」ということ、そして残された者が「今を生きている」ということを、強く、しなやかに、誠実に、読み手へ語りかけているように感じました。作中に出てくる名古屋めしも、今回もすごく美味しそうでした。「食べる」ということもまた、生きているからこその行為なのだと、日常を成り立たせている営みにも、温かい愛おしさを覚えました。私も、今という瞬間の連続である毎日を、もっと大切にしたいと切に思いました。
服部くんたちの日々や、謎の答えが気になった方は、ぜひ探偵事務所にいらしてください。出会いと別れの季節のように、ほろ苦さと爽やかさが同居した読後感が、物語の扉を開けた先で待っています。おすすめです!
寝不足に悩まされる大学生・香奈実。疲労が原因なのかと思いきや、その原因は怪異が関係していたのです。香奈実先輩を救うために朔が案内したのは、あまたの事件を解決してきた樹神探偵事務所でした。
気障で大人の色気たっぷりな樹神先生と、大学生になってもピュアさが消えない朔の掛け合いは、何度読んでも飽きることを知りません。
読み応え充分、しかも飯テロで心も満たされる短篇となっております。
前作「共鳴糸エンゲージメント」から数ヶ月経過した時系列になっていますが、シリーズ未読の方も楽しめること間違いなしです。互いの足りないところを補い合う、師匠と助手のバディは最高ですから!
樹神探偵事務所のシリーズの短篇です。いつものメンバーが活躍するいつも通りの安定した面白さ。今回の依頼者は、服部少年の部活の先輩女子。
なんと、夢の中で聞いたこともない歌が聞こえてくるというのです。
たしかに、「歌」って、いつまでもいつまでも耳の中で回り続けて終わらないことありますね。
ですが、彼女の夢の中で聞こえてくる歌は、いままで聞いたことのない童歌なのです。
この謎に挑む樹神探偵と服部助手。
彼女の愛犬の死がことの発端なのですが、それがどうして聞いたこともない童歌に繋がるのか。こんな不思議な事件の謎を解けるのは、やはり樹神探偵事務所しかない。
今回も驚愕の事実と悲しい過去の真実が解き明かされます。
毎回、どこから読んでも安定の面白さです。
本作は、なごや幻影奇想シリーズ(https://kakuyomu.jp/users/cool_apple_moon/collections/16816927861474704117)の短編作品。
異能探偵の助手として、主人公が怪奇事件に挑む現代ファンタジーです。
このシリーズ小説は、日本人形や鏡の逸話など、怖い話や都市伝説にまつわる怪事件に主人公たちが挑みます。
本作では『尾張地方の古い童歌』が絡んだ事件の解決に、主人公たちが奮闘します。
このシリーズの見どころである、名古屋らしい文化を感じつつ、美味しそうな名古屋メシのお話も読めるお得感は、もちろん本作でも健在!
不思議なお話にドキドキ、ハラハラしつつ、名古屋のディープな情報に「へえ!」と驚く。一度で二度おいしいお話です☆
(作者様も概要でおっしゃってますが)シリーズものではありますが、この作品から読み始めても問題ないと思います。
まずは短編を読んでみて、気に入れば長編にも挑戦してみるのも良いかも。
現時点で長編2作、短編がもう2作ある(違ってたらゴメン)ので、かなり読み応えがありますよ☆
主人公は弓道部に所属していた。主人公には他人の感覚や想いを受信してしまう能力があり、怪異を扱う探偵事務所でアルバイトをしている。
ある日、同じ弓道部の先輩が悪夢で悩んでいることを知る。主人公は探偵事務所に先輩と共に訪れ、悪夢の中で流れる謎の歌について話す。知らない歌が、先輩の夢だけではなく、現実にも影響を及ぼしていた。
先輩は愛犬の遺骨をある場所に埋めたことを気に病んでいた。しかしそこは、仄暗い過去と繋がる場所だった。そこに、邪気払いの香を調香できる女性が加わり、主人公と探偵、女性の三人で謎の歌の正体を探ることに。
そこにあったのは——。
現在の自分が生きている世界が、大切に思える一作です。
是非、御一読下さい。
——つぼどん つぼどん
——お彼岸みゃぁりに 行こみゃぁか
——去年の春も めぇたけど……
この歌が中毒性がある、まさにホラー作品の傑作です。
作品は名古屋を舞台にした『なごや幻影奇想』のシリーズ。
『共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜』という長編を読まれた方もいらっしゃると思いますが、このシーリズから発生した、短編集です。読み応えがあります。
主人公は高校男子。
(闇を抱えた他人の感情を受信する特異体質の)服部 朔は、探偵・樹神 皓志郎の手伝いで怪異事件の調査をします。
霊の感情を読み取り、その思いを遂げることで、霊を昇天させる。その過程に感動すること請け合い。
読みやすい文章ですから、すらすらと読み進むうちに、陽澄すずめさんワールドに、いつの間にか引き込まれてしまいます。
おすすめです。