黄昏時、なごや、少年の心に響くのは

 他者の心の感情をまるで自分の身に起きたかのように受信してしまう主人公の服部 朔。
 彼は知る人ぞ知る、ちょっと通常の依頼とは異なった事件を解決するという『樹神探偵事務所』で助手をしていて——。

 ひと癖もふた癖もありそうな、先生・樹神探偵に、謎の雰囲気を醸し出す和服の美人。
 巡り歩くは怪異奇譚と名古屋の美味しいグルメ。

 もうこの緩急が堪らないのです。
 夕刻に読めば、物語の雰囲気、柔らかな名古屋の方言、夕焼け空と名古屋グルメの匂いに読者が誘い込まれそうな物語の数々。
 人々を薄明かりの向こうへ引き込むのは、誰もが知っている童謡でもあって……。

 現世と幽世、誰そ彼とわからぬその狭間の世界。
 怪異に関わりつつ、十七歳の少年らしい心の揺らぎや葛藤を抱えながらも服部少年が前に進んでいく姿には、読んでいるこちらが心の底から応援し、また共感して共に歩みたくなります。

 彼の心に、怪異事件に、"彼は誰時"は訪れるのか。

 それはあなたのその眼で……しかと見届ける事をオススメします。
 まだまだ続きを見たくなるような、とても素敵な物語です。

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