その声に、こたえてはならない……。

ある日の夕暮れ、受験生・都築(つづき)務夢(つとむ)は《声》を聞いた。

ーーもういいかい。
ーーまあだだよ。

模擬試験の結果にむしゃくしゃしていた彼は、ついそれに応えてしまう。

数日後、『樹神(こだま)探偵事務所』に、務夢の姉・翼沙(つばさ)が現れる。失踪した弟を、警察とは別の方向から探して欲しいという依頼だ。
樹神皓志郎(こうしろう)探偵と高校生助手の服部朔(はじめ)少年は、捜査を開始するがーー

    ◇

現世と幽世と狭間の世界をめぐる、伝奇ミステリーです。
名古屋に土地勘はないのですが、街並みの描写や土地の言葉に親しみがわきます。各章で童謡や土地に関する信仰に触れられるのも、民俗好きとしては楽しい。
《声》の主が抱える悲しみや、それに応じてしまう人間側の葛藤、個性的な登場人物達が魅力的です。

あやかしミステリー好きな方にお勧めです。




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