部族の長の娘シグディーズは、四歳上の優しい姉フリムリーズとともに、使用人たちにかしずかれて育っていた。同盟を結んでいた部族の裏ぎりによって、目の前で姉を凌辱され、両親と弟を殺されたシグディーズは復讐を誓うが、彼女はまだ十四歳だった。
男装して復讐の相手ロスティヴォロドを狙うシグディーズだが、見破られ、目前で姉を殺された上、憎きロスティヴォロドの妻にさせられてしまう。大公妃となっても夫の命を狙いつづけるシグディーズの心には、やがてある感情が芽生えていた――。
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第一部はシグディーズの、第二部はロスティヴォロド側の視点から語られる心理劇です。作者さまの流麗な筆致でえがかれる殺戮や凌辱、暴力の描写はすさまじく、苦手な方は注意が必要です。中心となる男女の気持ちのすれちがいっぷりも壮絶です。安易な和解などはなく、決して理解しあえない二人のどこに真実があったのか、最後まで固唾をのんで読ませていただきました。
一筋縄ではいかない烈しく濃厚な心理劇をご堪能ください。