第8話 スキルツリー


「スキルポイントの余りが36ってことは……? えーっと、このスキルツリーっていうのはなんだろう?」


僕のステータス上では、保有スキルツリー0ってなっている。

戦闘用の固有スキルがあれば、スキルツリーも存在するはずなんだけどな……。

あいにく、僕の固有スキルは《万能鍵マスターキー》だ。

万能鍵マスターキー》のスキルレベルは自分のレベルと同じになるらしく、とくにスキルツリーのようなものはないらしい。


「え、じゃあ僕の場合、このスキルポイントってのは無駄じゃないか!」


36ポイントも余っているのだから、何かに使いたいんだけど……。

そう思って、ステータス画面を眺めていると――。


《ナビゲーションシステム起動。システムよりメッセージです》


どこからともなく声がした。

まるで人間の声じゃないみたいに、カタコトで冷たい声色。


「うわ! びっくりした! 誰!?」


《トン・デモンズの保有するパッシブスキルの一つ、『ナビゲーションシステムオンライン』のシステム音声です》


「ど、どういうこと……!?」


ナビゲーションシステムオンライン――っていうと、あれか……。

僕が祠の報酬としてもらったスキルのうちの一つか。

それが、僕に話しかけてきてるってこと!?


《もしわかりにくいようでしたら、私を『sisuシス』とお呼びください》


「わ、わかったよシス。それで……僕になんのよう?」


《お困りのようでしたので、お声をかけさせていただきました》


たしかに、僕はスキルポイントの扱いで困っていたけど……。

まさかこのパッシブスキルはそんなことまで助けてくれるのか!?

だとしたら、こんなに便利な相棒はいないぞ!


「このスキルポイントの使い道がわからないんだ。僕にはスキルツリーがないみたいだし……」


《スキルツリーでしたら、ステータス画面から確認できます。今表示しますね》


「う、うん……お願いするよ……」


なんだか虚空に向かって話しかけていると、妙な気分になるな。

幸いここは誰もいない牢獄の中。

怪しまれることはないけれど……。


《スキルツリーオープン》


すると、僕の目の前にスキルツリーが現れた。



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―――――――スキルツリー一覧――――――――

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炎のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル3

雷のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル3

氷のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル3

風のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル5

土のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル5

毒のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル7

霧のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル9

雫のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル12

癒のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル15

灰のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル20

      ・

      ・

      ・

    ~間省略~

      ・

      ・

      ・

光のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル99

闇のスキルツリー【ロックされています】施錠レベル99


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「うわぁ! すごい数だな……ん? 待てよ……この施錠レベルってまさか……!?」


普通スキルツリーなんてのは、後天的に入手できるようなものじゃない。

成人の儀式で与えられたスキルに、スキルツリーがなければ、僕みたいにスキルポイントを持て余す羽目になる。

でもこれは……?

もしかしてこれこそが《万能鍵マスターキー》の真価なのか!?


《お察しの通りです、マスター。マスターの持つ固有スキルの特殊効果、それにより、レベルに応じたスキルツリーのロックを開錠できます》


「まさに万能の鍵というわけか……。レベルさえ上がってしまえば、なんでも開けられるわけだ」


《その通りです》


えーっと、今の僕はレベル3だから、施錠レベル3のスキルツリーまで開けられるっていうわけか。

だったら、さっそくこの3つのスキルツリーを開けてみよう。



「《万能鍵マスターキー》! なんでも開けれる鍵!」



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炎のスキルツリー【ロック解除済】

雷のスキルツリー【ロック解除済】

氷のスキルツリー【ロック解除済】


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すぐにそんなメッセージが現れた。

これでこのスキルツリーを使用できるようになったはずだ!


「やったぁ! スキルツリーが3つも!」


だけど問題は、このスキルポイントをどう使うかだ……。

僕のスキルポイントは36。

そしてスキルツリーは3種類。


どれか一つに極振りすることもできるけど……。

3つとも均等に割り振ることもできる。

これはワクワクするけど……非常に悩ましいね。


幸い、ここは僕だけの独房だ。

邪魔するものは、洞窟にはびこるコウモリくらいなものだ。

数日間ここで反省させられることになっているし、時間はたっぷりある。

いろいろ吟味して、じっくり考えよう。


僕は自分の活躍を夢想し、楽しみながら、頭を悩ませるのであった――。

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