第21話 本音で話そう


 僕はこれまでの経緯を話した。

 もちろん死に戻りのことなどは伝えていない。

 だが、クロウヘッドとの戦いを聞かせれば、僕にそれなりの戦闘能力があることは伝わるはずだ。


「なるほど……君はその歳で、しかも単独で、魔族を討ち取ったということか……! さすがは魔王の力だな……」


 魔王の力か……そのせいで、僕は数奇な運命に……。

 いや、この力を呪うのはよそう。

 この力のおかげで助かった場面も多い。


「正直に言おう。我々は力を欲している。君のその力が欲しい」


「え……!?」


 ガウェイールさんの口からでた言葉は、意外なものだった。

 僕の予想でも、ガウェイールさんたちの目的は僕のこの力にあるものだと思ってはいた。

 だけどそれを、こうもはっきりと口に出されるなんて……!


「君は村の中の世界しか知らないから、ピンとこないかもしれないが、今この世界はさまざまな思惑によって、さまざまな組織が活動しているんだ。だから、我々は君のその力が欲しい。君を殺そうとしていたのも、それを手に入れるためだ。もし他の組織に魔王の力が渡ったら、大変なことになるからな……」


「つまり、僕に仲間になれ……と?」


「そう言うことだ」


 なるほど、ガウェイールさんの口ぶりから察するに、僕のこの力は、なんらかの方法によって、僕から切り離すことができるようだ。

 クロウヘッドが僕を殺そうとしていたことから考えても、たぶん……僕の考えではこうだ。

 まず僕を殺すと、魔王の力の源のようなものを身体から取り出すことが出来る……。

 あとはそれをどうにかすれば、強力な武器として活用できるのだろう……。

 だけど、僕は死に戻りの能力を持っているから、実質死なない。


 ガウェイールさんは最初、僕を殺すことで僕の力を取り出そうとした。

 だけど、僕がその力をコントロールできると知って、やめたんだ。

 つまり、力さえ利用できればそれでいいということか……?


「僕としては、ガウェイールさんたち……聖エルメスタ王国に協力するのは、別にかまいません。でも、それで僕になにかメリットとかはないんですか? それに、僕はまだ、あなたたちがどういう人たちなのかもよくわかっていない……」


「メリット……そうだな……まずは、我々から提示できるものとしては……だ」


「情報……?」


「君はまだ気づいていないかもしれないが……君の力は完ぺきではない。まだ魔王の力を完ぺきにコントロールしたとは言えない状態にある」


「僕の力が完ぺきじゃない……?」


 たしかに、僕はまだ5パーセントまでしか、魔王の力を引き出せない。

 それ以上魔王の力を発現させてしまうと、自我がなくなってしまう。


「魔王の力は、だんだん強くなっているはずだ。内側からあふれるようにして……。君がまだ幼い頃は、もっと微量なものだったはず」


「あ……たしかに……」


 が聞こえるようになったのは、僕が物心ついてからだった……。

 僕の中になにかがいると感じ始めたのも、そのもっと後だ。


「それはまだまだ成長する。そして、君は今はまだコントロールできているが、これ以上魔王の力が大きくなったとき……どうなるかわかるか?」


「コントロールを失う……」


「そうだ」


 そうなれば、僕は完全に自我を失ってしまうことになる。

 今は5パーセントまでなら抑えられるけど、これがだんだん4、3、と少なくなっていくわけだ……。


「君は施錠のスキルで魔王の力を抑えていると言っていたな?」


「はい、そうです。レベルと連動して、鍵のレベルも上がります」


「なら、魔王の力をさらにコントロールするために、どうすればいいのか……わかるな?」


 なるほど……ようやく話が見えてきたぞ……。


「レベルを…………上げる」


「その通り」


 理論上は、僕のレベルが上がれば、さらに魔王の力をコントロールできることになる。

 それはだんだんと、6、7と増えていって……最後には完全に魔王の力を制御できるようになるかもしれない。


「だが魔王の力がだんだんと大きくなるのもわすれてはならない」


「…………」


「魔王が力を増幅させ、君を乗っ取るのが先か……それとも、君がレベルを上げ、魔王の力を完全に制御できるようになるのが先か……」


「つまり……」


 僕はごくりと唾を飲み込む。


「そう、これは――一種のレースだ……命がけの、な」


 どうやら僕は、とんでもない運命を背負わされてしまったのかもしれない……。

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