第23話 襲撃
「よっと……」
僕しかいないと思っていた風呂だったが、突然誰かの声がした。
そっちの方を見てみると……。
「が、ガウェイールさん!?」
「やあ、トンくん」
そこには湯船に浸かるガウェイールさんがいた。
ガウェイールさんは身体の所々に傷があり、さすが戦士といった体つきだ。
でも、出るところは出ていて……なんだか普段とのギャップがすごい。
「す、すみません! ガウェイールさんが入っているとは知らずに! すぐに出ます!」
僕は慌てて湯船から出ようとするが……。
腕をガウェイールさんに掴まれて、制止される。
「いいんだ。私はわかっていて混浴をしているんだ」
「……え?」
僕は一瞬耳を疑った。
ガウェイールさんはいったい何を考えているんだ!?
「トンくん。君はすでに我々にとっては超重要な存在なんだよ。この世界の命運を握っていると言ってもいい……。君をどの勢力が手にするかで、今後の様々なことが決まる」
「は、はぁ……。それとこれがどう関係が……?」
僕はいまいち状況を飲み込めない。
「大ありだ。上からは、
「そ、そんなことに……」
「だから私は君と仲良くなろうと思ったのだよ」
「な、仲良く……ですか……!?」
まさかそんな!
ガウェイールさんがこんなことをしてくるなんて……。
僕はこれに、どう応えればいいんだ!?
「で、でも……僕にはリコがいます」
「それはわかっている。もちろん、君たちの間を引き裂こうなんてつもりはないよ。ただ、君の村ではどうかは知らないが……これはごく一般的な関係だ。なにも私と婚約しろなどといっているわけではない。ただ、絶対的な信頼関係という繋がりが欲しいだけだよ……」
「が、ガウェイールさん……困ります……」
「ま、すぐにとは言わんがね……。さ、長風呂は身体に毒だ。もう上がろう。どれ、私が身体を拭いてやろうか」
「じ、自分でやります……!」
僕はガウェイールさんから逃げるようにして、浴場を出た。
村の外は、こんなにも恐ろしい世界なのか……!?
◇
「……と、いうことがあったんだけど……」
「ふーん、それで? トンは……どう、したいの……?」
僕は風呂場であったことを、ベッドの上でリコに話した。
なんだかそうしないと、リコに不義理を働いたみたいで、後ろめたい気がしたからだ。
「僕は……わからない。僕には、リコがいれば十分だよ。リコだけがすべてさ」
「トン……うれしい。でも、トンがしたいようにすればいいんだからね? 私は、トンの一番でありさえすれば、それでいいの」
「うん。ありがとうリコ」
リコは僕のことをすべて受け入れてくれる。
だからこそ、僕は安心していられるんだ。
事が終わると、リコはそのまま寝てしまった。
僕も眠たかったけど、まだやりたいことがあった。
「そういえば……5レベルほど上がったんだっけ……」
そう、スキルポイントの割り振りだ。
「今度は雷のスキルツリーに極振りしてみるか……。なんだか風と相性がよさそうだし」
―――――――――――――――――――――――
・Lv1サンダー
・Lv1サンダーショット
・Lv2サンダーボルト
・Lv2ライトサンダ
・Lv3テラサンダー
・Lv3メガボルト
・Lv4ボルトショック
・Lv4ライトニング
・Lv5エクストラサンダー
・Lv5テラライトニング
―――――――――――――――――――――――
僕はそれらのスキルを獲得した。
これで、雷と風の魔法はマスターした。
たぶん、この世にこんなことができる人間はいないだろう。
普通、スキルツリーなんて一人一個がせいぜいだ。
「はは……! 自分でも信じられないや……」
あとは剣さえ磨けば、世界最強も夢じゃない。
というか……すでに最強かもしれないな。
なんて……僕は夢見心地で……。
そしていつのまにか、リコの横で寝息をたてていた。
――ズドン!
とてつもなく大きな音が、ガルガンデ砦全体に響いた。
思わず僕も目を覚ます。
「なんだ今の音は……!?」
窓から外を見ると、砦の真ん中にある演習場に、人影があった。
そしてその人影を中心に、大きなクレーターができていた。
「あれは……」
「どうやら、お出ましのようだな」
「ガウェイールさん……!」
いつの間にか、寝室にガウェイールさんが入ってきていた。
ガウェイールさんは既に鎧を着こんで、戦闘モードに入っている。
「思ったよりも早かったが……。君を狙う敵の、第一弾だ」
「いったい……何者なんでしょう」
「分からん……だが。ここにいてはリコちゃんが危険だ。どっちみち戦うしかないんだ。いくぞ」
「……ッ! はい――!」
僕は急いで支度をし、ガウェイールさんとともに、窓から外へ飛び出した。
敵は、すぐ目の前にいる――!
「僕はここだ……! 来るならこい!」
「…………マオウ……コロス!」
「……え!?」
そう言って向かってきた敵の正体は――!
ピンク色の髪をした、可愛らしい少女だった。
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