第18話 保護
あれから2度ほど野宿をした。
僕たちはもうずいぶん遠くまで来た気がする。
徒歩だから、実際はそれほどではないかもしれない。
だけれども、村という小さな小さな世界しか知らなかった僕らにとっては、これでも十分な大冒険だった。
「そこの子供たち、止まりなさい!」
突然、道を行く馬車からそんな命令を受ける。
僕たちがなにかしたのだろうか?
田舎者だから、知らない礼儀作法とかがあったのだろうか。
「な、なんですか……?」
その馬車から降りてきたのは、とても綺麗な女性だった。
いや、綺麗といっても、ドレス姿などではなく、騎士の姿をしていた。
白い鎧に、ところどころ金色の装飾がしてある、豪奢な騎士姿。
場所も同様に、大げさな飾りつけがしてある。
しかも白馬二頭。
「突然呼び止めてすまないな。私は聖エルメスタ王国の騎士――ガウェイール」
僕はそのとき、女性としては珍しい名前だと思った。
そのことが顔に出ていたのだろうか。
「この名は父がつけた名でな。うちには男児が産まれなかった。だから私がこうして、騎士団を率いている訳だが……まあ、そんな話はどうでもいいな」
声も低く、男勝りという言葉が良く似合う人だった。
赤い髪をひとつに束ねていて……。
目つきも鋭く、とにかくカッコいい人だった。
そのあふれ出るカリスマ性もあって、僕はすぐに彼女を信頼に足る人物だと判断した。
「僕はトン・デモンズです。こっちはリコ」
「君たちを呼び止めたのは、理由があってだな。私たちはずっと君たちを探していた」
「え!? 僕たちをですか?」
「まあ、詳しい話はあとにしよう。とりあえず、馬車に乗ってくれ」
「は、はぁ……」
僕たちは言われるがまま、馬車に乗りこむ。
とりあえず危険はなさそうだし、もし抵抗しても、勝てそうにない。
相手は王国を代表する騎士団の長だ。
「大丈夫なのかな……?」
リコが心配そうに僕に小声でささやく。
大丈夫だ。
なにかあっても、僕が守るから。
そう誓って、僕はリコの頭をそっと撫でた。
◇
「トンくん……突然の話で驚くかもしれないが……。君の中には、魔王デモン・ヘルズゲートの魂が封印されている」
馬車に揺られながら、僕はガウェイールさんの話を聞く。
正直驚きはあまりない。
もともと、僕の中に
まあ、その名前を知れたのはよかったかな。
「ずいぶんと落ち着いているんだな……」
逆に、僕の反応にガウェイールさんが驚いているようだ。
「ええまあ、おおよその見当はついていましたから」
「それなら話が早い。私たちは君を保護しにきたんだ。君の中から発せられている、魔王の魔力を探知して、君を見つけたんだよ」
なるほど、一応は納得のいく説明になっているね……。
だけど、なぜ今更?
「あの村はね、一種の結界になっていたんだよ。そのせいで、君を見つけることができなかった。これは我々の力不足だ。すまない……」
「あの村を……知ってるんですか?」
「ああ、君を見つける前、あの村の状態を見てきたよ。嫌な事件だったね……。子供たちだけで、よく生き残れたものだ」
「あの村は……いったいなんなんですか?」
僕は、長年の疑問をついに解決する糸口をつかんだと、心が浮き立つ。
あの村には、絶対に秘密があった。
今はそう確信している。
あそこは、
「あれは君を隠しておくための結界だ。あそこの村人たちは、君を閉じ込めて、魔王の復活の機会をうかがっていたのさ。カルト教団だよ」
まさか……そんな……。
あの村の人たちは、僕を囲ったカルトだっていうのか????
そんなところで僕たちは育てられたと……?
なんでだろうか……なぜか納得がいかない。
「それはおかしいです! だってトンは、みんなにひどい目にあわされてきました!」
リコが口を開いた。
初対面の人に、リコがここまで強い口調で話すところを見たのは初めてだ。
「いや、おかしなことはないさ。トンくんの事情を知っている者は、トンくんを気味悪がるだろうし、知らない者も、やはりなにか感じるものがあったのだろう……。魔王の魔力というのは、それほど強力なものなんだよ。彼らがトンくんを恐れていじわるするのも、不思議ではない」
「うーん……?」
やはり、ガウェイールさんの説明はどうもおかしな部分がある。
部分的には正しいことを言っているのだろうが、なにかまだ隠していることがあるに違いない。
「私からも、質問していいかな……?」
ガウェイールさんが、不気味な笑顔でそう問いかける。
とたんに、雰囲気が変わったような気がする。
「はい……」
「君たちは、
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