第12話 くりこし


「《Lv2サンダーボルト》!」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。


僕が唱えると、空から落雷が、空中の僕らを襲った。

周囲には遮るものはなにもない。


「グギョギョギョギョギョギョギョギョギョギョギョギョ!!!!????」


クロウヘッドはさすがに感電し、痙攣する。

もちろん僕も死にかける。

だけど、意識だけは辛うじて残ってる。

こいつを殺すまで、僕は死ねない。


「グキョーーーーーー!!!」


クロウヘッドはそのまま地面に落ち、きつく叩きつけられる。

これは大ダメージ間違いなしだ!

ただ、そのまま僕も全身を強く打ち付けてしまう――当然だ。


「……っぐ、う、ああああああああああああ!」


そのせいで体中の骨という骨が折れる。

痛い。

痛い。

尋常じゃなく痛い――。

これなら死んだほうがいっそましだ。


でも、そのとき。

システムメッセージから朗報が告げられる。


《クロウヘッドの部位破壊達成。ボーナスとして、追加経験値を会得》


追加経験値――?

なんのことだ?

気にはなるけど、今ここでステータス画面を開いている余裕はない。


クロウヘッドは、それでも起き上がり、再び舞い上がる。

僕の腹に刺さっていたくちばしは、落下の衝撃で折れてしまっていた。


「……………………ックケケッ! やりますねぇ……。ですが、こんなもので私を倒せたとでも? それに、あなたが死んでは意味がないじゃないですか! バカですかぁ!? クキョキョォ!」


たしかに、僕はバカかもしれない。

無謀かもしれない。

こんな痛い思いはしたくない。

僕がもっと賢ければ、強ければ、こんな痛い思い、せずにすんだかもね。


でも、それでも……僕はリコを護る。

足掻き続けるしかないんだ――!


「うおおおおおおおおおおお!」


僕は最後の力を振り絞り、這ってでもクロウヘッドへ、一ミリでも近づこうとする。


「ゲハハ! なんですかその間抜けな匍匐前進は! 芋虫ですか、あなたァ! ちょうどいいです。今晩のおかずにしましょう。死になさぁああああい!!!!」


今度こそクロウヘッドは、僕の頭を貫いた。

僕はそこで、意識を失った――。




《システムメッセージ――》






《――パッシブスキル『聖母の加護』により、前回のセーブ地点から復活》







「…………っつー……」


僕は強烈な脳の痺れと共に目を覚ます。

一度死んで戻ってくるというのは、どうも慣れない。


「僕は、また負けたのか……?」


でも、生きてる。生き返った。

なら、何度でも挑み続けるまでだ!


またもや目覚めた場所は、牢屋がある洞窟の中だった。

スキルを振ったあとに寝たから、またスキルツリーを見直さなくちゃいけない。

極振り作戦は一応、成功だった。

少なくとも、まんべんなくやるよりは……。

だから、今度も極振りにしてみるつもりだ。


「…………って、アレ……? どういうことだ……コレ!?」


僕はステータス画面を見て、言葉を失う。

だって……え?

なにがあったって言うんだ……!?



――――――――――――――――――――――――


基本情報

【名前】トン・デモンズ

【レベル】10


ステータス

【体力】    51544

【力】     2152

【防御】    2798

【アジリティ】 966

【運】     1279

【魔力】    3530

【生命力】   5027


スキル

【固有スキル】《万能鍵マスターキー

【固有スキルレベル】10(レベルと連動)

【所有スキルツリー】3

【スキルポイント余り】3028

【所有パッシブスキル】

・ステータス可視化

・アイテムボックス

・基礎能力増強

・聖母の加護

・ナビゲーションシステムオンライン

・第六感


――――――――――――――――――――――――



「れ、レベル10に…………」


そう、僕は知らない間にレベルアップしていたらしい。

だが、もっと驚くべき数字は……。


「すすすすすすスキルポイント余り……3028ぃいいいいいいい!?」


いったいどうなったらそんなポイントになるんだ……!?

これだけあれば……どれほど強力なスキルが手に入るだろう……。


《説明が必要ですか? マスター》


システムメッセージがまた、僕を助けてくれる。


「う、うん……お願いするよ」


《前回クロウヘッドとの戦闘時、クロウヘッドの『くちばし』の部位破壊に成功。よって、ボーナス経験値を会得》


「な、なるほど……?」


つまり、僕は負けて死んだけど――聖母の加護のおかげで、そのということか……!?


《クロウヘッドのくちばし破壊によるボーナス経験値は89,766でした。トン・デモンズの装備品【挑み続ける者】の効果により、その会得経験値は常に五倍です》


「えーっと……つまり89,766の五倍ということは…………448,830!?」


《そうなります。正解です、マスター》


自分で計算して驚いた。

そりゃあ、一気にレベル10にもなるはずだ。

でも、ただの部位破壊でそんなに経験値をもらえるなんて……。

クロウヘッド――どれだけ強力な魔族なんだ……。


「でも、とにかく、僕の戦いは無駄じゃなかったってことだ!」


これなら、いつか超えれる!

あの強大なクロウヘッドの力を、超えることができる!



【スキルポイント余り】3028――――――。



まずはこれの使い道を、じっくり考える必要があるな――。

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